静脈血栓塞栓症の予防的看護

静脈血栓塞栓症の予防的看護【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年9月20日
最終更新日:2018年08月15日
(変更日:2018年10月31日) ※

目的

  • 深部静脈血栓症を予防することで、救命困難な重度の肺血栓塞栓症を防ぐことができる

発生機序

  1. 静脈血栓は、主にフィブリンと赤血球から構成され、それに血小板や白血球成分が加わってできている
  2. 発生要因:ウィルヒョウの静脈血栓塞栓症の3要因
    1. 長期臥床などによる血流の停滞
    2. 手術・外傷・カテーテル留置などによる静脈壁損傷からくる凝固因子や血小板の活性化
    3. 妊娠や手術などによる体内の凝固能バランスの崩れ
  3. 血栓が形成されやすい部位
    1. 血流の停滞しやすい下肢
    2. 血流の乱れが生じやすい静脈弁近く
    3. 外傷部位
  4. 深部静脈血栓症は、腓腹部・膝窩部・腸骨大腿部に発生し、腓腹部は最も見逃されやすい部位である
  5. 最も重篤な合併症である肺血栓塞栓症は、下肢や骨盤腔内に形成された静脈血栓に起因する
長期臥床患者の場合、腸骨大腿部の下肢深部静脈血栓症は左下肢で右の2~3倍発生するといわれている

 

発生リスクのアセスメント

  1. 深部静脈血栓症の効果的な予防を行うためには、発生要因・機序を十分理解し、患者に合わせたリスクレベルをアセスメントすることが大切である
  2. 診療科ごとにリスクが階層化されており、疾患や手術、体型や年齢など総合的にアセスメントしリスクレベルを評価することが重要である
  3. 特に内科領域では原則的に手術を行わない患者を対象としているため、各患者が有する基本リスクと急性疾患に伴う急性リスクを組み合わせての判断となる

予防的看護の方法

  • 患者のリスクファクターの評価を行い、各リスクレベルによって予防法が推奨される

早期離床および積極的な運動

  • 離床することで静脈周辺の骨格筋に収縮が起こり、静脈が圧迫されて静脈還流が促される
  • 患者の状態によって早期離床が不可能な場合は、床上運動を行う
  • 立位が不可能でも坐位が可能な場合は、下肢の自動運動を行い、骨格筋のポンプ作用を促す
  • 脳卒中などで麻痺がある場合は、安全な範囲内で他動運動を行う
  • 下肢にできた静脈血栓は、急激な運動や抹消からの圧迫で遊離するリスクがあるので、急性期は自動・他動運動を避ける

弾性ストッキング

  • 弾性ストッキングは、血液を心臓方向へ流れやすくするために身体の中心に向かうほど圧迫圧が低くなる構造をしている
  • 効果的な圧力は、足首20㎜Hg・腓腹部15㎜Hg・大腿部10㎜Hgとされている
  • 持続的に下肢を圧迫するため、動脈血行障害・静脈還流障害・皮膚の発赤・びらん・水疱・皮膚炎・足の壊死などの合併症のリスクがある
  • 特に閉塞性動脈硬化症などの既往が有る場合は、合併症に注意する
  • 1回/日は弾性ストッキングを脱いでもらい、皮膚の観察を行う

弾性包帯

  • 弾性ストッキングが下肢の形状に合わない場合や、下肢の手術や病変のために弾性ストッキングを使用できない場合に使用する
  • できるだけ足指に近いところから巻き、抹消から中枢へと巻きあげる
    ※一般的に足首を100%とすると大腿部は40%の圧で巻くとよいといわれている
  • 時間の経過とともに緩みやすいので、適宜巻きなおしが必要である
  • 巻く際は、強さの他に、しびれ・チアノーゼ・疼痛・血流障害の有無に注意する

間欠的空気圧迫法

  • 弾性ストッキングよりも予防効果が高い
  • 直接的な圧迫により下肢のうっ血を軽減させ、静脈弁の血液うっ滞も解消する
  • 下肢に深部静脈血栓がないことを確認してから使用する

薬物的予防法

  • ヘパリンやワルファリンカリウムが投与される場合があるので、医師の指示に従って正確に投与する
  • 出血傾向などの副作用に注意する

早期発見

  • 予防対策を行っていても、発症リスクをゼロにすることはできないため、早期発見につながる十分な観察と準備が重要である
  • リスクの高い患者は、8時間毎に両下肢周囲を測定し、下肢径に3cm以上の左右差が有る場合は要注意である
  • 左右とも常に同じ位置で測定するために、皮膚に印を付けておくとよい
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