術後離床時のステップ

術後離床時のステップ【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2014年10月3日
最終更新日:2020年07月25日
(変更日:2020年8月4日) ※

目的

  • 術後離床時のステップについて理解を深める

概要

  • 消化器外科手術の場合、術後出血などの重大な合併症がある場合を除き、術式に関係なく早期離床を進めていくことが術後合併症を予防する重要なケアである

看護のポイント

術後の離床時は、バイタルサインの変動に注意しながら、ベッド上における運動→頭部の挙上→端座位→立位~足踏み→歩行と段階を踏んで行う

第1段階:ベッド上における運動

  • 突然起き上がると疼痛が強く、恐怖心から離床が進まなくなる恐れがあるため、痛みを効果的に取り除いた後に足関節の伸展・屈曲運動から開始する
足関節の伸展・屈曲運動は深部静脈血栓症を予防するために麻酔から覚醒した時からはじめる

第2段階:頭部の挙上

  • チューブやドレーン類にテンションがかからないように注意し、ゆっくりと頭部を挙上する
  • 初めは30度程度の角度から開始し、バイタルサインに異常が認められなければ徐々に90度まで挙上する

第3段階:端座位

  • 両下肢を床にゆっくりとおろし、患者の背部を手でしっかりと支えた状態で端座位になってもらう
チューブやドレーン類が抜けないよう十分注意する

第4段階:立位~足踏み

  • 問題なく端座位ができるようになったら、ゆっくりと立位の介助を行い、その場で足踏みを促す
看護師が転倒しないよう、近くで見守る

第5段階:歩行

  • 初回歩行をする際は必ず見守りを行い、めまいや立ちくらみの有無、意識レベルの低下、バイタルサインの変動の有無を確認する
    →状況に応じて心電図モニターの観察・Sp02測定などをしながら行う
  • 歩行中は点滴棒にチューブやドレーン類を引っ張られないように注意しながら移し、 安全に歩行できるように配慮する
  • 起立性低血圧、胸背部痛や呼吸困難の症状が出現した際はすぐに臥床安静を促し、バイタルサインの測定を行う
  • 急激なSp02低下がある場合は医師の指示にて酸素投与を行うこともあるため、事前に医師から指示を受けておくとよい

観察項目

  • 意識レベルやバイタルサインの変動の有無
  • 離床の状況(どこまで可能であったか)
  • めまい・立ちくらみ・ふらつきの有無
  • 呼吸苦・背部痛を含む疼痛の有無と程度

アセスメント

  • 消化器外科の手術後は、開腹に伴う痛みによって浅速呼吸となる
  • 横隔膜の動きが抑制され、深呼吸ができなくなるため、肺胞の一部に空気が十分に入らず、無気肺を起こしたり、痰の喀出困難による肺炎の危険性がある
    呼吸器合併症の予防には、疼痛コントロールを行いながら、段階を踏んで早期離床を図ることが重要である
  • 胃や腸の切除術を行った場合、術後腸管麻痺(空気が腸管に触れることにより一時的に腸の蠕動運動が停止する)が起こりやすくなるが、大抵の場合、術後3日程度で回復する
    腸管麻痺の状態が続くと、経口摂取の開始が遅れ、全身状態に悪影響を及ぼす可能性があるため、腸管麻痺の早期回復のためには早期離床が重要である

離床時に起きやすい合併症

起立性低血圧

  • 安静臥床した状態から急激に起き上がると、重力により血液が下半身に集中し、静脈還流が減少するため、心拍出量や血圧が低下することがある
  • 血圧の調節機能が正常に働かずに血圧低下が持続すると、脳血流を保つことが困難になり、立ちくらみや失神が起こることがある

不整脈

  • 術後の乏尿期は、血管内の脱水が原因で循環血液量不足が起こり、頻脈になりやすく、術後利尿期は、低カリウム血症による心室性期外収縮(PVC)が起こりやすい
  • 低カリウム血症の進行が進むと、心室頻拍(VT)などの生命の危険が高い不整脈が起こる恐れがある

肺塞栓・血栓症

  • 手術後は、下半身の深部静脈血(大腿静脈、下腿静脈、総腸骨静脈など)に血栓ができ、血栓がはがれると肺動脈の閉塞によって肺塞栓・血栓症を発症するリスクがある
  • 深部静脈血栓症の7割以上に肺塞栓・血栓症を合併するといわれている
  • 肺塞栓・血栓症を発症した場合、胸背部痛や急激に起こる呼吸困難、頻脈、Sp02の低下、意識レベルの低下、ショック症状などがみられる
    データ上などにおいて、不整脈が出現しやすい状況下での活動負荷は、不整脈を引き起こす原因となるので十分に注意する
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