術後せん妄の基礎知識

術後せん妄の基礎知識【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2014年10月16日
最終更新日:2020年08月31日
(変更日:2020年9月1日) ※

目的

  • 術後せん妄の基礎知識について理解を深める

疾患の概要

  • 術後せん妄とは、手術による侵襲が原因で術前・後の相違に対して混乱を来たし、失見当識が生じることによって起こる
  • 術後、一時的な意識の混濁低下、錯覚や幻覚、興奮が見られる状態のことをいう
  • 多くの場合は一過性であるが、せん妄が生じることで場合によっては術後の回復が遅れることがある
  • 高齢者の場合、稀ではあるが術後せん妄から認知症ヘと移行することもある
  • 手術によって生じる合併症や身体的・精神的ストレスを可能な限り減らすことで予防することが可能なため、早期に対応することが必要である

観察項目

  • 病識の理解状況
  • もともとの性格
  • 既往歴
  • 入院歴の状況
  • 発症の起こり方と持続日数
  • 意識状態
  • 認知症の有無とその程度
  • 日内変動の有無
  • 感情の変動の有無と状態(不安感・多幸感・無表情など)
  • 妄想・幻覚・興奮・動作緩慢・会話量の減少など活動性の低下の有無
  • 昼夜逆転・不眠・夜間の異常言動・行動の有無

アセスメント

原因

直接的要因

  • 長時間の麻酔(麻酔方法・麻酔時間・使用薬剤など)
  • 手術時間や術式
  • 術後合併症
  • 全身状態の悪化

身体的要因

  • 高年齢(80~90歳代に多い)
  • 性格
  • 長期に渡る飲酒歴
  • 身体的基礎疾患
    • 血管障害、肝・腎臓機能障害
    • 脳器質性疾患や認知機能障害(認知症など)
  • 薬剤の常用(睡眠薬、抗不安薬、H2受容体拮抗薬、抗コリン薬、ステロイドなど)

誘発因子

  • 急激な環境の変化(ICUへの移動)や過剰刺激(アラームやモニター音など)
  • ドレーン・ルート類の留置(留置物されているものが多いほど危険性は高い)
  • 臥床安静による身体的制限
  • 感覚の遮断
  • 睡眠障害
  • 掻痒感や疼痛などの身体的・精神的ストレス

症状の特徴

  • 急激に起こるのが特徴であり、発症日時まで特定できることが多く、数時間~数日続く場合があるが比較的短期間で消失する
  • 日内変動があり、意識が一時的に清明となる場合もある
  • 指示に従うことが困難、健忘性、話のつじつまが合わない、体動が激しく、落ち着きがなくなる
  • ドレーン・ルート類を必要以上に気にしたり、嫌がる、入院・手術の経験を覚えていないなどの状況がある場合は、リスクについてのアセスメントを行い、対応策を講じる

看護のポイント

  • 転倒やルート・ドレーン類の抜去、暴力的行動などにより、術後経過不良や再手術などの危険性があるため、術前から身体的・精神状態を把握し、早期に合併症やストレス、誘発因子の減少など適切な対応を行うことが重要である
  • 患者の置かれている状況を受け止め、訴えには否定せず、傾聴につとめる
  • 患者と目線の高さを合わせ、適宜タッチングなども取り入れながら患者の反応を観察し、介入と対応について統一化を図る
  • 環境の変化によりせん妄を誘発、増強してしまうことがあるため、術後に一般病棟からICUなどの集中治療室への転室となる場合はより注意が必要

疼痛緩和

  • 効果的に鎮痛薬を使用し、疼痛緩和とストレスの軽減を図る
  • フェンタニルクエン酸塩(フェンタニル)などのオピオイド使用は、せん妄が悪化する場合があるため、ペンタゾシンやNSAIDsなどへの変更も考慮する

昼夜逆転している時

  • 覚醒と睡眠リズムを整え、日中、家族との面会時間を多くとるなどの配慮をする
  • 状況に応じて適切な薬剤の選択をし、不眠の改善に努める
  • せん妄は、夕方~夜間にかけて出現する頻度が高く、睡眠薬や向精神薬の使用により、日中の覚醒に影響が出る場合もある
  • 日中に頻回な声かけを行うようにしたり、早期離床を促すなどして生活リズムを整えていくように関わる
  • 転倒防止、暴力的行動や徘徊の対応
  • 可能な限り抑制をしなくてよい環境にするため、頻回の訪室や観察を行う
  • 状況によってはナースステーションから見えやすい部屋にするなどの調整をする
  • 転倒予防のため、周囲の環境を整える
  • 管理が困難となるほどの興奮や徘徊が見られる場合は、一時的に離床センサーの使用や抑制帯、安全ベルトなどを用いて必要最小限の身体拘束を検討する
  • 身体拘束を検討する際は医師・看護師間で抑制実施の有無を十分にアセスメントし、家族にも説明し、同意を得る

本人と家族への説明

  • 患者や家族が術後の状態をイメージしやすいよう、具体的な説明を行う
  • せん妄が出現する可能性があるが、ほとんどの場合は一過性であり、短期間で回復する場合が多いことを伝える
  • 家族のことは認識できる場合があり、家族の話には耳を傾ける場合があるため、必要に応じ、付き添いの検討を行う
  • 家族がせん妄状態にある患者に対し困惑や動揺を生じることも懸念されるが、術後のせん妄今の状態は一時的なものであり、ほとんどの場合は数日程度で回復することを説明する
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