肺炎の基礎 9 院内肺炎(HAP)の治療方針

肺炎の基礎 9 院内肺炎(HAP)の治療方針【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2015年11月5日
最終更新日:2018年09月25日
(変更日:2018年11月15日) ※

目的

  • 院内肺炎(HAP)の治療方針について理解を深め、適切なケアを行う

院内肺炎の重症度分類(成人院内肺炎治療ガイドラインより)

  • 成人院内肺炎治療ガイドラインでは「生命予後予測因子」と「肺炎重症度規定因子」による重症度分類がある

生命予後予測因子

  • 生命予後予測因子は次の5つ
    • I(immunodeficiency【免疫不全】):悪性腫瘍または免疫不全状態
    • R(Respiration【呼吸】):SpO2>90%を維持するためにFiO2>35%を要する
    • O(Orientation【見当識】):意識レベルの低下
    • A(Age【年齢】):男性70歳以上、女性75歳以上
    • D(Dehydration【脱水】):乏尿または脱水
  • 上記項目の該当が3項目以上:重症群(C群)
  • 上記項目の該当が2項目以下の場合、下記の肺炎重症度規定因子に基づいて分類する

肺炎重症度規定因子

  • 肺炎重症度規定因子は次の2つ
    • CRP≧20mg/dl
    • 胸部X線写真で陰影の広がりが一側肺の2/3以上
  • 該当なし :軽症群(A群)
  • 1個以上該当あり:中等症群(B群)

院内肺炎の治療方針

エンピリック治療

  • 検査で、原因微生物を同定することは重要だが、判定までに数日を要するものが多い
  • 症状やこれまでの経過、頻度からある程度、原因微生物を推測する
  • 確定診断を待たずに治療を開始する必要がある(エンピリック治療)

重症度による予後の予測

  • 一般的に、高齢、意識障害、脱水や乏尿、免疫抑制、酸素化の増悪がある場合、予後不良と考えられている
    難治症例などの複雑なケースの場合、呼吸器内科や感染症のエキスパートに相談する

重症度分類に基づく抗菌薬投与

A群(軽症群)

  • 考慮するべき病原微生物
    • 肺炎球菌
    • インフルエンザ菌
    • クレブシエラなど
  • 使用する抗菌薬
    • 第三世代セフェム系(肺炎球菌に対し、活性を有する)
    • ペニシリン(β-ラクタマーゼ阻害薬配合)

B群(中等度群)

  • 考慮するべき病原微生物
    • MRSAを除く多剤耐性菌(緑膿菌など)
  • 使用する抗菌薬
    • ペニシリン(β-ラクタマーゼ阻害薬配合)
    • 第三、四世代セフェム系
    • カルバペネム系(緑膿菌に対し、活性を有する)
    • クリンダマイシンなど

C群(重症群)

  • 考慮するべき病原微生物
    • MRSAを除く多剤耐性菌(緑膿菌など)
    • レジオネラ
  • 使用する抗菌薬
    • ペニシリン(β-ラクタマーゼ阻害薬配合)、第三、四世代セフェム系、カルバペネム系(緑膿菌に対し、活性を有する)、クリンダマイシンなど
    • 上記に、以下の2剤からいずれかを併用する
      • ニューキノロン系
      • アミノグリコシド系 など

鑑別診断の重要性

  • 治療開始が遅れたために死亡するケースが非常に多いため、HAPが少しでも疑われる場合は、すぐり治療の検討を行う
  • 食物の誤嚥が明らかな場合は、化学性肺臓炎の疑いが高い

初期治療、治療中止の判断

初期治療

  • 各種の培養検査提出後、早期の段階で医師の経験に基づき、抗菌薬を投与する
  • 緑膿菌やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対しての治療も考慮する

 

βラクタム系薬を第一選択とし、頻回かつ大量に投与することが多い

治療中止

  • 抗菌剤の投与を7日間行い、回復傾向にある場合は治療を中止する
  • MRSAや緑膿菌などが原因である場合、抗菌薬を2週間以上投与することが多い

アセスメント

  • 院内肺炎とは何かを理解しているか
  • 治療方針について理解しているか
  • 重症度分類に基づく抗菌薬投与について理解しているか
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