
【読み】たらいまわし
2007年8月29日未明、奈良県橿原市の妊娠6カ月の女性が、
出血を伴う腹痛のため救急車で運ばれていたところ、
搬送を依頼した病院からことごとく断られ、
いわゆる「たらいまわし」状況になるという事案が発生しました。結果的に妊婦は無事だったものの、
胎児は死産してしまいました。
このニュースをマスコミは大きく取り上げました。同様の事件は、奈良県だけでなく他の都道府県でも発生しており、病院がバッシングの対象となったり、医療制度のあり方について世論を揺るがせました。
たらい回しという表現は、あくまでも患者側の視点に立ったもので、この言葉だけを耳にすると、医師や病院側に何らかの怠慢や不作為があったのではないかと感じてしまいます。しかし、同じ現象を医療従事者から見れば、「受け入れ不能」という状況です。救急の患者さんの情報が入り、ベッド数や人員体制に余裕があれば患者を受け入れ、治療したいと思う心はどの病院も持っています。ただ、ほとんどの病院では医師不足であることが多く、医師がいる場合でも手術中、専門外、ベッドの空きがない、患者のデータ不足などの背景があり、「受け入れてもスムーズに治療ができない、もしくはリスクが高いことが予測されるので、他の病院を当たってみて欲しい」というのが実情です。
また、金銭的な問題からかかりつけの産科医をもたずに、陣痛が始まってから飛び込み出産するというケースが増えています。母子ともに事前情報がない場合、きちんと検診を受けている場合と比べて何倍もリスクが高くなります。リスクの高い出産を受け入れ、避けられないミスや医療事故が起こり、仮に医師が逮捕されることになったら、ますます病院側は機能できなくなる・・・冒頭の事案は、こうした悪循環が招いた現象と言えるでしょう。
当時は多くのマスコミが、そういった病院側の問題を知ることなく報道していました。その報道に対して病院側からの意見が多くあがり、現在では双方でのコミュニケーションが増え、「たらい回し」という表現は少なくなってきています。また、宮崎県ではこういった問題が起こらないよう、システム化された分娩制度が整っています。各団体からの要請で、国も分娩制度に向けて少しずつ動き出してきています。行政と病院と患者が手を取り合って、安全な出産ができることは、少子化対策の観点からみても、早急に解決していきたい課題です
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