目的
- 硬膜外ブロックの介助について理解を深める
必要物品・準備
- 硬膜外チューブキット
- ホームポンプ(2.5ml/h、ダイヤル式の場合2・4・6ml/h)
- 麻酔薬 (テスト液、局所麻酔:リドカイン塩酸塩など)
- 持続投与麻酔薬(フェンタニルクエン酸塩やブピバカイン塩酸塩水和物などをホームポンプ内に注入する)
- 消毒薬(クロルヘキシジン製剤、ポビドンヨードなど)
- 生理食塩水
- ディスポーザブル注射器 (10・50ml)
- 注射針
- 穿刺針
- 摂子
- 膿盆
- 固定テープ
- 滅菌手袋
方法
- 麻酔についての説明を事前に行い、患者の承諾を得る
- 心電図モニターなどの機械類を患者に装着し、バイタルサイン測定を行う
- 問題がないことを確認し、処置を開始することを患者に伝える
- 麻酔科医の指示に基づき、清潔操作にて麻酔薬・消毒薬を準備する
- 側臥位になってもらい、背中を丸めて頭部を前屈させ、膝を抱え込んだ姿勢になってもらい、椎間が開くよう、声かけをしながら誘導する
- 看護師は患者の腹部側に回り、肩と殿部を抱えるようにして支える
- 疼痛や気分不快がある場合は、体動をせずに言葉で伝えるよう説明する
- 医師が穿刺部位の消毒やマーキングを行う際、適宜患者に声をかけ、不安感の除去に努める
- 医師が穿刺部位に局所麻酔を行った後、穿刺針が刺入されるが、看護師は患者に麻酔開始の旨を伝え、体動をしないよう説明する
- 硬膜外腔刺入が確認された後、引き続きテスト液が注入されるため、バイタルサインを測定し、気分不快の有無や熱感・動悸の有無、表情の変化などを観察する
- 薬液を持続的に注入する場合、硬膜外チューブの挿入とともに、薬液の注入が開始されるため、足先や腹部・腰部に痛みやしびれがないかを確認する
- 棘突起を避けながら、チューブを脊椎に沿わせて頚部まで固定する
- 患者に終了を伝え、足からゆっくりと静かに体を伸展させ、仰臥位に戻す
- バイタルサインの測定を行い、異常の有無の観察をすると共に、疼痛や麻痺、両下肢の自動運動の有無などを確認する
- 除痛の状況や麻薬使用による悪心・嘔吐や呼吸抑制など副作用出現の有無範囲 などを観察する
- チューブのトラブル(挟まれたり、引っ張られたりしていないか、きちんと開放されているかなど)、適切な,注入速度が保たれているかを確認する
- 患者に、チューブがつながっていることを認識してもらい無理に引っ張ったりしないよう説明する
観察項目
- バイタルサインの変動
- 患者の体位は適切か
- 除痛の程度や範囲
- 局所麻酔薬中毒症状の有無
- 麻薬の副作用症状の有無(悪心・嘔吐、呼吸抑制など)
アセスメント
- 局所麻酔薬を頚部から仙骨部までの脊椎の硬膜外腔に注入する治療方法のことを硬膜外ブロックという
- 硬膜外腔を通る脊髄神経を可逆的に遮断することが可能な麻酔法であり、各神経を遮断することにより、筋弛緩・除痛・血行障害の改善効果が期待できる
- 局所麻酔薬の注入は脊椎の同じ分節中に存在する神経の機能だけを麻痺させることが可能である
硬膜外ブロックの種類
- 単回法:ブロック針を目的の位置に刺入して薬液を1回注入する
- 持続法:カテーテルをブロック針に通して硬膜外腔に留置し、持続的に薬液を注入する
硬膜外ブロックのメリット
- 全身麻酔とは違い、硬膜外ブロックは微量の薬剤を持続的に注入することが可能であることから、
- 薬液を長時間注入することが可能なため、術後の疼痛管理ができる
- 目的とする部位の神経遮断が簡単にできる
- 知覚神経のみを遮断するため、下肢運動などの運動神経は温存される
- 血圧の変動が起こりにくい
などがメリットとして挙げられるため、手術直後からの呼吸訓練や運動訓練が可能であり、早期リハビリテーションの開始や術後合併症の予防につながる
硬膜外ブロックの合併症
- 硬膜穿刺(クモ膜下腔内への局所麻酔薬を誤注入した際、広範囲に渡る神経の遮断や神経損傷が起こるリスクが高い)
- 局所麻酔薬中毒に伴う循環器系(血圧下降、心停止など)や中枢神経系(悪心・嘔吐、血圧上昇、呼吸促進、四肢けいれん、不安・興奮など) の症状が出現する場合がある
- 注入する麻薬(ブピバカイン塩酸塩水和物や、フェンタエルクエン酸塩など)は投与方法によって発現時間や作用持続時間が変わってくる
発現時間
- 静脈内投与:投与直後
- 硬膜外投与:30分
作用持続時間
- 静脈内投与:2~ 3時間
- 硬膜外投与:6~ 24時間