自衛隊看護師は看護師であると同時に自衛官でもあります。
普段の勤務内容は一般の病院の看護師と変わらない部分がほとんどですが、いざというときの心構えや待遇などに関しては、他の自衛官と共通する部分が大きいということになります。
今回はそんな自衛隊看護師の、最近の状況についてのお話です。
自衛隊看護師も看護師不足?
民間の病院でもそうですが、自衛隊でも慢性的な医師・看護師不足に悩まされています。
自衛隊は20万人を超える巨大な組織であり、16ヶ所の自衛隊病院を有し、基地・駐屯地は日本全国に所在していますが、それらを満たす数の医官や看護師を確保するというのは容易なことではありません。
自衛官全体としても、任務遂行に必要とされる定員に実員が追い付かない低充足率が問題となっています。医療従事者に関しては、これは看護師ではなくて医官の充足率ですが、全体では7割弱、部隊では実に約2割という厳しい状況です。
自衛隊の看護師は組織の特質上、極めて厳しい環境下でも職務を遂行することが要求されます。
そもそも自衛隊が活躍する場面というのは、外国等から日本の独立や安全が脅かされるような状況であったり、大規模災害時であったりするわけですから、そういう時に一気に多数の傷病者が殺到しても対処できるよう、普段から態勢を整えておかなければいけません。人に関しても、資質のある者を十分な人数揃えておかなければ、いざという時にどうにもなりません。
近年、自衛隊の活躍の場も徐々に広くなってきています。
先だっての東日本大震災での自衛隊の被災者救護・支援での活躍は記憶に新しいですし、国際平和維持活動等でも今後大いに役割を期待されています。
病棟での看護業務にとどまらず、厳しい環境下でも活躍できるような資質を備えた看護師の確保や育成は、自衛隊にとってまさに急務だといえるでしょう。
女性自衛官の働きやすい環境づくり
自衛隊に女性が最初に入ったのは、昭和27年。
まだ陸上自衛隊が「保安隊」であった頃の公募看護婦の婦人保安官たちでした。
その後、昭和33年に陸上自衛隊衛生学校看護課程が設けられ、更に翌34年にそれが自衛隊中央病院に移管され、以後長らく婦人自衛官育成のメッカとなっていきます。
つまり、「女性自衛官」はそもそもは自衛隊看護師がそのトップバッターだったのです。
しかし、今では戦闘に直接かかわる部署以外の殆どの分野に女性自衛官が進出しています。
陸自では俗に「普特機」と呼ばれる普通科(歩兵)・特科(砲兵)・機甲科(戦車兵)以外、海自では潜水艦以外、空自では戦闘機パイロット以外の分野に、どんどん女性自衛官が進出し、活躍しています。
そんな訳で、自衛隊としても女性が働きやすい環境をつくることに力を入れてきています。
基地駐屯地内の託児所も、平成19年(2007)に自衛隊中央病院のある三宿駐屯地で初めて設置されたのを皮切りに、海自の横須賀基地でも隊舎の一部を改装して託児所が設けられるなど、これから整備が進んでいくものと思われます。
他にも、隊舎や居住区はじめ諸施設諸設備も、女性自衛官の使用を考えての改修が進められています。
大きく変わる看護師養成システム
今後の自衛隊看護師の主な養成機関として、「防衛医科大学校看護師養成課程(自衛官コース)」が新設されます。
防衛医大病院の看護師養成機関であった防衛医科大学校高等看護学院は、防衛医科大学校看護学科に統合され、「技官コース」としてとして改編されます。
従来自衛隊看護師養成の中心となってきた自衛隊中央病院高等看護学院は、防衛医科大学校看護学科に同学科「自衛官コース」として統合される形で発展的解消を遂げることとなります。
自衛隊の看護師養成課程の大きな特徴は、国家試験合格率の非常な高さです。
自衛隊中央病院高等看護学院の平均の看護師国家試験の合格率は実に99%、平成21年と22年にはなんと全員が合格しています。防衛医大高等看護学院に至っては、平成14年度から11年連続で看護師国家試験合格率100%を達成しています。
これらの経験とノウハウを活かして、来年度から自衛隊看護師養成の教育システムが改編された後も、高合格率を維持していくことと期待されます。
おわりに
自衛隊看護師について、詳しくは防衛省自衛隊の「自衛隊病院等在り方検討委員会」の報告書をご覧ください。