看護師という職業は、働き方を色々と選べるという利点もありますが、今回は「扶養範囲内で働く」ということについて考えてみましょう。
「扶養」とは何か
まずは言葉の理解(整理)から。
「扶養」には、大きく2つの意味があります。「社会保険の扶養」と「所得税の扶養」です。
社会保険の扶養
「社会保険の扶養」とは簡単にいえば「被保険者(社会保険料を払っている本人)により生計を立てていること」が条件となります。
配偶者・子・孫・弟妹・直系の親族(親・祖父母)なら同居の必要はありませんが、それ以外の親族(兄弟・叔父叔母・甥姪とその配偶者)、内縁関係の配偶者および父母・子)の場合は、同居していることが条件となります。
この人物たちを「養っている」という証明の下、被保険者がこの人物の社会保険(つまり健康保険と考えれば大筋OK)を負担しますので、彼らの社会保険を使う時は、被保険者が所属する健康保険組合さんが保険負担分を支払ってね、ということです。
所得税の扶養
次の「所得税の扶養」は、内縁以外の配偶者、親族(6親等以内の血族、および3親等以内の婚姻関係にある人たち)が、納税者と生計を一緒にしているならば、彼らの所得税は納税者と一緒にしてね、つまり前述の人たちは所得税の支払いを免除してね、ということです。
「社会保険の扶養」と「所得税の扶養」との違いは何か
ここで気になるのが、この2つの違いですね。
この2つはあくまで「制度」ですから、日常生活に何が影響するのか、あまりピンと来ないかもしれません。しかしこの2つには大きな違いがあります。
それは、アナタ自身の所得の金額です。
「社会保険の扶養」の場合
まず「社会保険の扶養」の場合、被扶養者=扶養されている人の1年間の所得が、130万円未満である必要があります(60歳以上または障害者の場合は160万円未満ですが、ここでは130万円未満に限定します)。ここでいう1年かの所得とは、過去における収入のことではなく、扶養されることになった時点での年間の見込み収入額のことです。
つまり、一度仕事を辞めた時点で被扶養者となることが出来ますが、働き始める時の給与見込み額が重要となります。
「所得税の扶養」の場合
次の「所得税の扶養」の場合、年間の合計所得金額が38万円以下であること(給与で言えば直近の1月~12月の1年間の給与収入が103万円以下であること)となります。
つまり、仕事を辞めた時点ではまだ前年度を含む1年間での所得を元に計算されますので、被扶養者となることが出来ません。しかし働いていなければ、あるいは年間の給与収入が103万円以下と証明できれば、所得税が控除(=払わなくて良い)となります。
ここまでをまとめますと、社会保険の扶養は現時点での収入見込み額が対象となりますが、所得税の扶養は、過去の収入が対象となります。これが2つの大きな違いです。
扶養範囲内で働くということ
では具体的な給与を元に、扶養範囲内で働くことを考えてみましょう。
新たに働き始める場合、上でも少し触れましたが、130万円と103万円の壁を考える必要があります。
130万円の壁
まず社会保険の扶養=130万円の壁ですが、これは給与所得等の収入の場合、月額108,333円以下(ボーナスなし)に抑える必要があります。
求人広告などを見ても、月額いくらとかおおよその目安は書かれていますが、あくまで年間を通じて働くことを前提として考えた場合、おそらく看護師の給与では正職員ではこの範囲をはるかに超えてしまうことになります。つまり、月額10万円程度を目安としたパート職員が適切な働き方ですね。
時給1,500円と考えると月に66時間程度、週に直すと16時間程度ですので、1日3時間で5日間、あるいは1日4時間で4日間くらいが適当かと思います。
103万円の壁
次の所得税の扶養=103万円の壁ですが、これは給与所得等が月額85,000円くらい(ボーナスなし)に抑える必要があります。
こちらもパート職員が適切ですが、直近の1年間の所得で計算され、月額は8万5千円くらいが目安です。
時給1,500円と考えると月に56時間程度、週に直すと14時間程度ですので、1日3.5時間で4日間、あるいは1日4時間なら3日間程度が適当かと思います。
おわりに
いかがでしたか?これらを元に考えると、ご主人(それぞれでいう扶養者)の給与の金額にもよりますが、130万円を超えると自分で医療保険を支払う(=支出が増える)ことになり、103万円を超えてしまうと、世帯収入自体で数万~数十万くらい下がる(=収入が減る)ことになります。どちらが良いかはその家庭で変わってきますが、世帯収入を減らしたくないのであれば、月額85,000円に抑える方が得かもしれませんね。