かつては看護師として働いていたけれども、出産・育児や家庭の事情、自分自身の体調などにより、しばらく看護職を離れていると、復職できるかどうかがとっても気になりますよね。
しかし、看護師には復職支援という国家的なプログラムがあるのをご存じですか?
今回は、全国さまざまなところで開催されている、復職支援プログラム(看護職復職支援研修)について考えてみましたよ。
現代日本は慢性的な看護師不足!?
現在の日本は、全国的に慢性的な看護師不足という状況に陥っています。
毎年5万人規模の新人ナースが誕生しているにも関わらず、慢性的な人手不足ってどういうことなんでしょう?それには色々とカラクリがあります。
看護師は圧倒的に女性の多い仕事
まず1つ目は、元々看護師という職業が、圧倒的に女性の多い職業だったことです。
女性のライフスタイルを考えると、どうしても妊娠・出産・育児に数年間はかかりっきりになります。少子化の背景には女性の社会進出がありますが、これは看護師も一緒。
数年間のブランクを経て復職した時、前と同じポストで働けるかといえばそうでもありません。従って1人あたりの看護師が子どもを産む回数も減っていますし、中には子どもをもたない人もいます。
とはいえ、やはり大部分の看護師は、妊娠・出産・育児による数年間のブランクをもって復職するか、あるいは最初の妊娠・出産の時に、辞めてしまうかどちらかです。
こうなると、毎年5万人の新人ナースが誕生しても、辞める人が同じ数だけいればいつまで経っても看護師不足はなくなりません。
超高齢化でより多くの看護師が必要
ましてや今や超高齢化を迎えた日本では、ここ最近もそしてこれからも、より多くの看護師を必要とする時代が来ます。それなのに子どもは減る一方で、新人看護師の数もどんどん減ってくるのは目に見えています。
そもそも、復職支援プログラムって何?
そこで看護協会とか厚生労働省とか、いわゆるお国の方々が考え出したのが「潜在看護師を病院へ戻そう!」ということです。
ここでいう潜在看護師とは、看護師の資格を持っていながらも現在は看護職として働いていない人、です(よく考えれば、私も潜在看護師ですね)。
この人たちをどうにかして復職させられないか、そういった目的で始まったのが「看護師 復職支援プログラム」です。
具体的には、
- ブランクの間に進歩した医療技術を身に付ける
- 忘れていた記憶を呼び起こす
分かりやすくいえば「看護師として復職したい人の技術的な後押しをする」プログラムになります。
復職支援プログラムはどんなところで受けられるのか
復職支援プログラムは、厚生労働省直轄であるハローワークが基本ではありますが、現在これらを管轄しているのは、都道府県だと考えて良いと思います。
いずれの都道府県のホームページを見ても、「看護職復職支援研修」などで検索できると思います。政令指令都市であれば、市や区のホームページでも検索できるところもあります。
- 東京都 :「東京都看護職員地域確保 復職支援研修」
- 埼玉県 :「再就職技術講習会」
- 神奈川県 : 「地域の病院で開催する復職支援研修」
一例として東京都の看護職復職支援研修を見てみましょう。
対象
大きく4つほど条件がありますが、保健師・助産師・看護師・准看護師の資格を持ち、現在は離職中(仕事をしていない)で、東京都への復職を希望する人 となっています。都が主催する研修なので、都内への就職が必須なのですね。
期間
標準的なプログラムとして、1日間・5日間・7日間コースがあります。
これらの研修が終わってさらに希望する場合は、訪問看護ステーション・クリニック・老人保健施設などでの研修も受けられるようです。
費用
何と無料!さすが都(最終的には国)が管轄しているだけありますね。
内容
これが一番気になるところです。
これはどこの自治体でもほぼ同じようですが、実際に研修を受ける場所は、都道府県等から委託された、実在する医療機関で行うことになります。つまり、実際の病院の中の器具や医療機器を使い、実際に則した内容で勉強することが必要だからです。
ちなみに、東京都の場合は23区+23区外併せて、31の医療機関が指定されています。逆に考えれば、これらの病院での基本的な研修内容は統一されている、ということです。
では、とある病院の実際のプログラムを見てみましょう。
支援プログラムⅠ型 1日間のみ
- オリエンテーション
- 交流会、病院見学
- 講義
- 「最新の医療・看護の動向」
- 「感染対策」
- 「医療安全」
- 再就業支援相談
支援プログラムⅡ型 5日間
- 【1日目】
オリエンテーション - 交流会、病院見学
- 講義
- 「最新の医療・看護の動向」
- 「感染対策」
- 「医療安全」
【2日~4日目】
- 演習
- 「採血・輸液・静脈注射」
- 「輸液ポンプの取り扱い」
- 「体位変換・移乗・摂食嚥下」
- 「薬剤の知識」
- 「心電図」
- 「救急蘇生」 等
- 4日目午後から病棟実習
【5日目】
- 午前:病棟実習 午後:交流会
- 再就業支援相談
支援プログラムⅢ型 7日間
【1日目】
- オリエンテーション
- 交流会、病院見学
- 講義
- 「最新の医療・看護の動向」
- 「感染対策」
- 「医療安全」
【2日~4日目】
- 演習
- 「採血・輸液・静脈注射」
- 「輸液ポンプの取り扱い」
- 「体位変換・移乗・摂食嚥下」
- 「薬剤の知識」
- 「心電図」
- 「救急蘇生」 等
- 4日目午後から病棟実習
【5日~7日目】
- 病棟実習※外来実習を含む
- 7日目午後:交流会、再就業支援相談
こうしてみると、復職する勇気が湧いてきそうな内容もありますね!
これらは、お住まいの地域のハローワークや看護協会などでも情報を集めることが出来ますし、都道府県や市区町村のホームページなどでも検索できると思います。
この場合は、実際に研修を受けるときはその病院に申し込むことが多いようです。
あるいは、転職支援サイト事業者なども、こういった公の情報は教えてくれますし、病院独自の復職支援プログラムを持っているところを教えてくれることもあります。
この場合は申込みまでやってくれることもありますが、研修場所の病院によっては研修内容が違う可能性もありますので、十分に確認しましょう。
看護師 復職支援プログラムの良い点
昔の勘が取り戻せる
復職を希望している場合、例えばクリニックであればⅡ型(5日間)コースでも良さそうですし、外来実習も含むのでⅢ型(7日間)コースでも良さそうです。
もし病棟での勤務を希望するなら、最低でもⅡ型(5日間)コースを選択しましょう。
ブランクが長いとか、以前がクリニック勤務だったとか、看護技術にちょっと自信がない…という場合は、迷わずⅢ型(7日間)コースを選択してください。
さすがに3日間近く病棟で実習ができれば、昔の勘は取り戻せると思います。
自信をもってアピールできるようになる
また、訪問看護ステーション・クリニック・老人保健施設などへの復職を希望する場合は、Ⅱ型(5日間)コースの後で、追加の研修も受けておくことをオススメします。
実際の様子が分かると分からないとでは、自分の自信も変わりますし、就職希望先での面接の際に「看護職復職支援研修を受けました」と言えるかどうかで、相手側の受け取り方も変わってきます。
とりあえずは全国共通に近い研修内容(のはず)ですし、ブランクがあっても復職に前向きであるアピールにも繋がりますので、ぜひ受けておくことをオススメします。
看護師 復職支援プログラムの悪い点
椿個人的には、2つあると思います。
研修先に就職しなければ…と思い込んでしまう
まず1つは、「研修を受けた病院に就職しないといけないと思い込むこと」です。
病院側だって(受講者にとっては)タダで研修するわけですし、その分の時間・手間・人手・場所を使っているわけです。その病院で看護師を募集しているなら、病院側は「ぜひうちに就職して」と思うでしょう。
しかし、元々が都道府県からの委託で研修を行っているならば、それをあからさまに表すのはどうかと思います。つまり受講者側としては「ここはあくまで研修を受ける場所であって、就職先ではない」と考えていても問題はないと思います。
もちろん、その病院が気に入った場合はそこへ就職しても良いですし、あるいは就職先の候補が研修先として指定されているのであれば、初めからその病院で研修を受けると、スムーズに就職できるかもしれません。
病棟以外の特殊な業務の場合は内容が足りない
もう1つは、「病棟で使える超基本的な技術のみ」の研修であるという点です。
私個人はOPE室勤務が長かったので、この研修内容ではOPE室への復職は難しいと考えます。もちろん看護技術の基礎ではありますが、例えば内視鏡室とかカテーテル室とか、病棟とはちょっと違う業務内容の部署への就職を希望する場合は、内容が足りないかなと思うのです。
また、整形外科とか循環器などの専門病院を希望する場合も、この内容では足りないかなと思います。
おわりに
いかがでしょうか。
看護師の仕事って、数年のブランクがあると「昔の常識は今の非常識」であることも多いですし、どんどん新しいことが出てくることもあります。ブランクが長ければ長いほど、復職への後押しが欲しくなりますよね。
そんな時は、この「看護職復職支援研修」を受けてみることをオススメします。
この研修を受けることで、自分自信の今のレベルを推し量ることもできますし、就職先を探す糸口も見つかるかもしれませんよ。