2014年現在、1473名の緩和ケア認知看護師が登録されています。
緩和ケア認定看護師は、医療機関や在宅において緩和ケアを必要とする患者・家族が安楽な状態を維持し、尊厳を持って生活できるように、また、緩和ケアに携わる看護師の指導・相談を通して、緩和ケアの質の向上に貢献する専門職としての役割を担います。
今回はそんな緩和ケア認定看護師の役割と緩和ケア認定看護師の資格取得について詳しく紹介します。
緩和ケアとは?
緩和ケアとは、
生命を脅かす疾患を持つ患者さんとその家族に対して、身体的、心理的、社会的、そして精神的な問題を評価し、苦痛の予防と軽減を図ることによりQOL(生活の質)を改善するためのアプローチ
です。
緩和ケア認定看護師は、そんな緩和ケアの質の向上を図る中心的機動力として活動する日本看護協会の認定を受けたエキスパートです。
緩和ケア認定看護師の役割
緩和ケア認定看護師の定義として、日本看護協会より以下のように示されています。
- 疼痛、呼吸困難、全身倦怠感、浮腫などの苦痛症状の緩和
- 患者・家族への喪失と悲嘆のケア
疼痛、呼吸困難、全身倦怠感、浮腫などの苦痛症状の緩和
「緩和ケア」という言葉を聞くと、どうしてもがん患者さんを思い浮かべがちですが、看護の対象は終末期における苦痛症状を抱えるすべての患者さんです。
疾患から生じる苦痛とは、疼痛をはじめ呼吸困難、食欲不振、全身倦怠感、浮腫など
さまざまで、どれもQOLへ大きく影響しますし、患者さんの人格そのものを脅かすこともあります。
緩和ケア認定看護師はそれらの症状と対処法に熟知し、他職種と連携して患者さんの苦痛を取り除き、QOLを向上・維持できるよう働きかけます。
患者・家族への喪失と悲嘆のケア
また、喪失と悲嘆のケアについては、患者さんや家族の「受容の過程を支えるケア」とも言えるでしょう。
終末期における精神的苦痛(スピリチュアルペイン)とは、「自己の存在と意味の消滅から生じる」苦痛であると言われています。
患者さんとその家族は、死という現実を前にさまざまな喪失と出会わなければなりません。
愛する家族や友人、大好きだった趣味、慣れ親しんだ生活…別れは必ずやってきます。
その別れを怒りや悲しみの感情だけにならないよう、ひとつひとつ整理し受け止める過程を支援します。
その他にも、患者さんを支える看護職へのサポートも大切です
患者さんの死への受容を支えることは簡単ではなく、ケアにあたる看護師が自分への
無力感や患者さんを失う喪失感に悩み、燃え尽きてしまうことも少なくありません。
ケアに悩むスタッフへの相談、指導、教育を行い、チームで連携してケアにあたれるよう
サポートします。
緩和ケア認定看護師になるには
他の認定看護師同様、
- 看護師免許取得後の実務経験が通算5年以上あること
- うち3年以上は緩和ケア分野の実務研修があること
が条件となります。
認定看護師教育機関にて約6カ月の課程を修了し、認定審査(筆記試験)に合格すれば
緩和ケア認定看護師として登録ができます。
登録後は5年ごとに更新となり、その際は看護実践と自己研鑚の実績についてまとめ、提出し書類審査に合格する必要があります。
緩和ケア認定看護師における教育機関は、全国で9か所、受講定員226名(2014年度)であり、まだまだ狭き門といえるでしょう。
緩和ケア認定看護師 育成カリキュラム
カリキュラム例
■共通科目(120時間)
看護管理、リーダーシップ、文献検索・文献購読、情報管理、看護倫理、指導、相談、対人関係、臨床薬理学、医療安全管理
■専門基礎科目(75時間)
緩和ケア総論、がんとがんの集中治療、症状マネジメント総論、喪失・悲観・死別、がんの医療サービスと社会資源
■専門科目(195時間)
- 症状マネジメントと援助技術Ⅰ
- 症状マネジメントと援助技術Ⅱ(消化器症状のマネジメント)
- 症状マネジメントと援助技術Ⅲ(呼吸器症状のマネジメント)
- 症状マネジメントと援助技術Ⅳ(リンパ浮腫のマネジメント)
- 症状マネジメントと援助技術Ⅴ(皮膚・粘膜・口腔トラブルのマネジメント)
- 症状マネジメントと援助技術VI(精神症状(不安・せん妄・抑うつ、睡眠障害)のマネジメント)
- 症状マネジメントと援助技術VII(倦怠感・悪液質のマネジメント)
- 緩和ケアを受ける患者の心理社会的ニーズとケア
- スピリチュアルケア
- 緩和ケアにおけるチームアプローチ
- 緩和ケアを受ける患者の家族・遺族ケア
- 臨死期のケア
- 緩和ケアにおける倫理的課題
■演習(120時間)
■臨地実習(180時間)
などなど、これ以外にケースレポート発表会などもあります!
※詳しくは 緩和ケア 認定看護師教育課程 | 日本看護協会 のページをご覧ください。
おわりに
人生の終焉をどのように迎えるか、その理想とする姿はさまざまです。
その思いに寄り添い支えてくれる看護師の存在は、患者さんにとってどれほど心強いでしょう。
ケアにおいて明確な正解はありません。だからこそ考え続けなければならず、認定看護師への道は考えることを学ぶためのものだと思います。
最後の一瞬まで、その人がその人らしく生きられるように支援する、緩和ケア認定看護師への道。ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか?