2014年現在、全国で343名に認知症看護認定看護師に登録されています。
今回はそんな認知症認定看護師について調べてみましたよ!
認知症認定看護師とは?
認知症の経過と予後を理解したうえで、認知症の発症から終末期に至るさまざまな問題に対して、その家族を含めた看護を行う日本看護協会の認定を受けた認知症看護のエキスパートです。
認知症認定看護師の役割
認知症認定看護師の定義として、日本看護協会より以下のように示されています。
- 認知症の各期に応じた療養環境の調整およびケア体制の構築
- 行動心理症状の緩和・予防
認知症の各期に応じた療養環境の調整およびケア体制の構築
療養環境の調整とは、まずは安全な環境を提供することです。
患者さんのADLを考慮し、また認知症状に応じた安全面への配慮も必要です。
そして、患者さんが安心して生活できる環境を提供すること。
規則正しい生活リズムが整えられるよう働きかけたり、季節感を取り入れたり、患者さんが慣れ親しんだ自宅の環境に近付ける工夫をします。
行動心理症状の緩和・予防
行動心理症状の緩和と予防について、まず必要なことは理解する努力をすることです。
いわゆる問題行動として捉えがちな症状も、患者さんにとっては意味があることかもしれない、そう考えることが認知症看護の第一歩で、そこから症状緩和のためのケアを見出していきます。
もうひとつ重要な役割として、患者さんの家族や他の看護師に対して指導や相談にあたることです。
どうしても患者さんの症状だけに目が行ってしまいがちですが、患者さんの家族や他の看護師でも、ケアに自信が持てなかったり疲弊してしまったりすることがあります。
そんな「患者さんを支える人」へのサポートも行います。
認知症認定看護師になるには
他の認定看護師同様、
- 看護師免許取得後の実務経験が通算5年以上あること
- うち3年以上は認知症看護分野の実務研修があること
が条件となります。
認定看護師教育機関にて約6カ月の課程を修了し、認定審査(筆記試験)に合格すれば、認知症看護認定看護師として登録ができます。
登録後は5年ごとに更新となり、その際は看護実践と自己研鑚の実績についてまとめ、提出し書類審査に合格する必要があります。
認知症看護認定看護師における教育機関は、全国で8か所、受講定員200名(2014年度)
であり、まだまだ狭き門と言えるでしょう。
認知症看護認定看護師 育成カリキュラム
教育目的は以下の通りです。
- 認知症患者とその家族の支援に関する最新の知識と技術を習得する。
- 専門的な知識と技術を活かし、看護職に対して指導・相談できる能力を育成する。
- あらゆる場において、認知症患者の生命、生活の質、尊厳を尊重したケアを同僚や他職種と協働して提供できる能力を育成する。
カリキュラム例
■共通科目(150時間)
看護管理、リーダーシップ、文献検索・文献購読、情報管理、看護倫理、指導、相談、対人関係、臨床薬理学、医療安全管理
■専門基礎科目(90時間)
- 認知症看護原論: 認知症看護の専門性と役割の理解
- 認知症病態看護論: 認知症の病因・病態と治療法と医学・看護学以外の治療的介入
- 認知症に関わる保健、医療、福祉制度:認知症に関わる制度・法律の理解
■専門科目(150時間)
- 認知症看護倫理:認知症患者に特有な倫理的問題が発生する原因、背景、要因の理解
- 認知症患者とのコミュニケーション
- 認知症看護援助方法論Ⅰ(アセスメント)
認知症の発症から終末期までの経過に対応し、身体的・心理的・社会的側面を
包含した統合的アセスメントの実施とケアの実際 - 認知症看護援助方法論Ⅱ(生活環境づくり)
認知症患者にとっての環境の意味と、認知症の特性を踏まえた生活・療養環境の
調整方法の理解と安全で快適な生活環境づくりの実践 - 認知症看護援助方法論Ⅲ(ケアマネジメント)
認知症の特性に応じた生活への援助のマネジメント - 認知症の介護家族支援、認知症患者・家族関係調整
家族介護者支援のための教育プログラムの計画と実施方法 - 認知症ケア連携体制の構築
連携を築くための方法の原則と実践
■演習(195時間)
■臨地実習(225時間)
などなど、これ以外にケースレポート発表会などもあります!
※詳しくは 認知症看護学科 | 日本看護協会 のページをご覧ください。
おわりに
ひとくちに認知症といっても、その病態や背景は本当に多種多様です。
認知症初期から終末期に至るまで、また患者さん個人の生活背景や家族背景により求められる対応も異なります。
明確な正解のない認知症看護において、大切なのは「考え続けること」。
そのきっかけをつくるために、認知症看護認定看護師は日々活躍しています。
認知症患者さんへのケアに悩んでいる方は、ぜひチャレンジしてみては?