ふだん病院で働くナースにしてみれば、病院に来る前の対応なんて未知の世界ですよね…
ヘルメットを脱がせたり、腸管脱出の対応をした経験のあるナースなんて、そういないと思います。
今回は病院に来る前の対応が学べる、JPTECプロバイダーの資格について詳しくお話しますよ!
JPTECとは?
Japan Prehospital Trauma Evaluation and Careの略で、『ジェイピーテック』と読みます。
あまり聞きなれない単語だと思いますが、それもそのはず。
このコースは外傷におけるプレホスピタルケア(病院前救護)、つまり傷病者に最初に接触する救急隊向けのコースなんです。
日本救急医学会の下部組織として発足されたJPTEC協議会によるプログラムで、
「わが国のすべての病院前救護にかかわる人びとが習得すべき知識と体得すべき技能が盛り込まれた活動指針」
と位置付けられています。
JPTECのコンセプトについて
交通事故などで外傷を負った傷病者について、生命予後を左右するのは受傷後1時間以内に適切な処置がされたかどうかということ。
どんなに設備の整った救命センターに搬送されたとしても、受傷直後の処置が適切でなければ傷病者の救命は困難となります。
こうした外傷における「防ぎえた死」を防止するために誕生したのがJPTECです。
Load and Go の理念をベースに、外傷における初療で行うべき観察と処置、そして迅速な搬送を実践するプロバイダーを養成しています。
JPTECプロバイダーになるには
JPTEC協議会が認定する講習会に参加し、認定試験に合格する必要があります。
講習会参加前にJPTECガイドブック(3400円税別)を購入し事前学習しておきましょう。
※インターネットでも購入可能
受講資格
- 消防士
- 救急救命士
- 医師
- 看護師および准看護師
- 災害医療派遣業務に従事する放射線技師および臨床検査技師
- 災害医療、救助業務に従事する警察官および自衛官
経験年数は問われません。ちなみに最終学年に属する看護学生も受講できるそうです。
すべてのコースを修了し、実技試験および筆記試験に合格するとJPTECプロバイダーとして認定されます。
ただ、このコースは一般公開していないことが多く、また消防士や救命士への案内が優先となるため受講自体が狭き門であることが現実です。
受講を希望する際は、お近くのJPTEC事務局や消防署に相談してみましょう。
コースにもよりますが、受講費用は8000円前後のことが多いです。
JPTECプロバイダーコース 講習の流れ
消防士や救命士の参加者が多く、いわゆる「体育会」な雰囲気のコースです。
自分も現場に駆け付けた救急隊になったつもりで隊員に指示したり、指示を受けたり。
そんな男気溢れる雰囲気に圧倒されないよう、笑顔と元気な返事で乗り切りましょう。
講習会は1日で、コースにもよりますが通常8時間程度です。
コース内容
- JPTECの概念
- JPTECの活動
・状況評価(事故の状況、傷病者人数、二次災害の危険性)
・初期評価(蘇生の必要性、Load and Goの適応判断)
・全身観察
・傷病者の固定と収容
・報告と急変時の対応 - 基本手技
・気道確保と呼吸管理
・頸椎保護、ヘルメット離脱
・全脊柱固定とログロール(体位変換)
・車外救出 - 処置
・開放制気胸、フレイルチェスト(多発性肋骨骨折による胸郭動揺)
・腸管脱出
・刺傷、骨折、止血 - 特殊病態
・小児、高齢者、妊婦の外傷 - 重症度と病院選定
講習では、救急隊が使用する機器などの専門用語もたくさん登場しますので、ある程度の事前学習は必要です。
JPTEC開講前には消防署などで事前講習会が行われる場合もあるのでぜひ参加しましょう。
当日は数人のグループに対し、インストラクターがついて講義と演習を行います。
演習は人形のこともありますが、インストラクターが傷病者役になることもあり、演技はもちろん実際に負傷部位にメイクをするなど、かなりリアルに再現しているのでしっかり観察しないと大切なポイントを見落としてしまいます。
でも、そのぶん実践的な知識と技術が習得できますよ!
JPTECプロバイダーの認定試験について
すべてのコースを修了すると、いよいよ認定試験です。試験は実技と筆記があります。
実技試験
これまでに演習で学んだ症例がランダムで出題されるので、自分が救急隊長として対応にあたり、そのスキルを評価します。
筆記試験
さらに、筆記試験(5者択一マークシート式 50問)を受け、74%以上の正解でJPTECプロバイダーとして認定され、認定証がもらえます。
認定後は3年毎の更新があります。
おわりに: JPTECプロバイダーを目指す方へ!
「そもそもナースがJPTECを受ける意味なんてあるの?」という声も聞かれます。確かにこのコースの内容は救急隊の活動がメインとなっており、ナース業務とは一見関係ないようにも思えます。
しかし、病院で救急車の到着を待つナースが、患者さんがどのような初療を受けて運ばれてくるのか、その過程を知ることで到着後の対応がスムーズになったり、その後の看護にも役立ってくるのではないでしょうか。
また、病院外で外傷患者に出会ったとき、そのスキルが患者の生命を救う鍵となるかもしれませんね。
コースは体力勝負で大変ですが、救急隊やさまざまな職種と交流できて楽しいですよ。こちらも、ぜひチャレンジしてみてくださいね!