トリアージとはフランス語の「選別」を語源としています。
災害時のトリアージはよく聞くけど、それを院内でやるってどういうこと?
今回は、主に救急外来で行われる院内トリアージについて詳しく紹介します!
院内トリアージとは?
救急外来や夜間外来には、さまざまな患者さんが一気に押し寄せてきます。
本来、診察は来院順に行いますが、なかには一刻の猶予もない危険な患者さんが潜んでいることがあり、早急に発見し対応しなければ生命の危機に直結します。
では、災害時のトリアージと院内トリアージの違いを見てみましょう。
災害時に行われるトリアージ
少ない医療資源で可能な限り多くの人命を救うために、診療の優先順位だけでなく診療そのものの必要性までを判断します。
院内トリアージ
災害時に行われるトリアージとは少し意味合いが違い、基本的には来院した患者さんはすべて診察することを原則とします。その中で、今すぐ診療が必要な患者さんを早期に発見し、診療の優先順位を決定するために行われます。
もっと簡単に言うと、来院した患者さんに対して
「この患者さんはどのくらいの時間、安全に診察を待てるのだろうか」
という判断をすることです。
院内トリアージは、誰がどうやってやるの?
院内トリアージを実施するのはズバリ、ナースです!
すでに多くの救命センターや大学病院の救急外来などが院内トリアージシステムを導入しています。そこでは救急外来入口にトリアージポストと呼ばれるブースがあり、トリアージナースが来院した患者さんすべてに問診をとり、緊急性や診察の優先度を判断します。
病院によってはトリアージポストの設置がなく、ナースが直接待合室の患者さんに問診に行く場合もあります。
トリアージナースは救急経験3年以上、所定の講習を受けていることが望ましいとされ、日本救急看護学会がトリアージナースの育成研修を行っています(これについては次回詳しくご紹介します)。
院内トリアージのツール JTASについて
JTASとは、日本版緊急度判定支援システム(Japan Triage and Acuity Scale)のこと。「ジェータス」と読みます。
カナダの病院外来のための緊急度判定ツールCTASを日本語に翻訳したもので、日本臨床救急医学会のJTAS検討委員会が作成を担当しています。
救急外来に来た患者さんの症状に応じてカテゴリー分けし、さらにバイタルサインなどから緊急度を判定するシステムです。
現在はアプリ化されており(料金は¥26,800)、該当する項目を選択していくとトリアージレベルが判定できる仕組みになっています。
JTASの緊急度判定(JTASレベル)
JTASアプリをタブレットにダウンロードすれば、救急待合やベッドサイドでのトリアージが可能で非常に便利です。なお、緊急度は時間経過とともに変化することがあります。一度の判定で安心せず、JTASレベルに応じた再評価が必要です。
診療報酬の話と落とし穴
2012年の診療報酬改定により院内トリアージ実施料(100点 初診時のみ)が新たに導入されました。これにより時間外受診や休日に救急外来を受診した場合に上記点数を患者さんが負担することになります。
注意が必要なのは、複数の患者が同時に診察待ちをしている状況でトリアージがされた場合にのみ保険算定可能という点です。患者さんがひとりしか待っていないのに院内トリアージ算定を行い、指摘を受けた医療機関もあります。
また、軽症な患者さんにしてみればせっかく早く病院に来たのに、後から来た人にどんどん順番を抜かされてしまうのはあまり面白くありません。待たされる患者さんに声をかけるとともに、院内トリアージを導入している施設であることをしっかり院内に掲示し、患者さんの理解が得られるよう病院全体で取り組む必要があります。
おわりに
院内トリアージは、今すぐ診療が必要な患者さんにとっては非常に有意義なシステムです。
診療報酬改定を受けて、院内トリアージシステムを導入する病院は今後増えていくと思われます。
そして、院内トリアージを実施するにあたり鍵となるのはナースの存在です。
次回は、実際に現場でトリアージを行うナースの役割についてご紹介しますね!