NICUは、『NEONATAL Intensive Care UNIT』の頭文字をとった略語で、
”新生児特定集中治療室”を意味します。
近年、出産の高齢化、不妊治療者の増加、そして、医療の高度化により救命できる命が増えている状況から、NICUに入院する赤ちゃんは増加傾向にあります。
今回は、厳しいといわれる看護師の仕事の中でも、特に厳しい世界のひとつであるNICUについて詳しく紹介しますよ。
NICU看護師 実際の求人について
まずは、実際にどんな求人がでているのか見てみましょう。
NICUの最先端治療を行っている大学病院(神奈川県)
こちらは、神奈川県にある聖マリアンナ医科大学 中途採用情報ページからの求人情報です。(2016年2月)
ここには記載されていませんが、既卒者看護師研修などをはじめ、中途で入職された看護師にも早く仕事に慣れるための研修を行っているようです。
聖マリアンナ医科大学のように周産期医療にも力を入れている医療機関でNICUの最先端治療を学ぶことが出来るという点がはNICUで働きたい看護師には魅力的ですね。
ここからは、看護師専門の求人サイトからの情報をみていきましょう。
大学病院の求人(東京都)
次は、看護roo!に掲載されている東京都にある大学病院の求人情報です。(2016年2月)
都心にある大学病院という立地条件がよい所と、NICUが12床という規模がちょうどいいですね。また開始時間が8時と少し早いですが、16:30に勤務が終了するのでプライベートの時間を大切にしたい人に向いている求人です。
小児専門の医療機関の求人(東京都)
こちらは、レバウェル看護に掲載されている東京都にある小児専門の病院の求人情報です。(2017年10月)
地域周産期母子医療センターに指定されています。NICU、GCU、MFICU、PICUを備えており全国でもトップレベルの医療を提供している有数の病院です。
年間休日120日以上で、ここには載ってませんが現場OJTやプリセプター制度など教育体制も充実しているところが魅力ですね。
NICUの求人は希少と言われていますが、今回転職サイトを探してみると、いくつかの求人を見つけることができました。教育体制が充実し、認定看護師資格取得支援をしている病院での求人が多かったです。
次に、そもそもNICUとはどのようなところなのか見ていきましょう。
そもそもNICUってどんなところ?
NICUの入院対象は、早産で生まれた2500g以下の低出生体重児、先天性の病気を抱えたり、緊急の治療を要する新生児です。
現在、日本での生育限界は22週とされています。そのため22週前後の週数で産まれた超未熟児から入院し治療を受けています。
NICUは、赤ちゃんへの感染予防の対策から、自由に出入りができないように隔離されています。モニターが絶えず鳴り響く中、保育器が並び、人工呼吸器や無数の点滴やモニターの管を装着した未熟児が治療を受けている…
NICUには ”その現場を目にした誰もが思わず息をのんでしまう”ような、独特の雰囲気があります。
では、NICUで働く看護師はどんな仕事をするのでしょう。
NICU看護師の仕事とは
NICUの医療は、赤ちゃんを救命するだけでなく、いかに障害を残さず赤ちゃんを救命できるかということを目指しています。
そのためNICUでは、一人一人のスタッフの能力も大切ですが、チーム医療が重要とされます。
時に障害を残す赤ちゃんもいますが、その場合は赤ちゃんが退院の時に、保健所と連絡を取ったり、今後の発達を促すリハビリの調整をしたり、総合的な視点で赤ちゃんとその両親をサポートすることが求められます。
つまり、NICUの看護師の仕事は、赤ちゃんのケアだけではなく、その両親のサポートを行うことも大切な仕事となるんですね。
次に、NICUで働く看護師の特徴を見ていきましょう。
NICUで働く看護師の特徴
NICUは、他の病棟と比べると以下のような特徴がある看護師が多いように思います。
- 自分の仕事に使命感を持つ看護師が多い
- オンコールに不満を言う看護師は少ない
自分の仕事に使命感を持つ看護師が多い
NICUの現場には、自分の仕事にやりがいを感じ、使命感を持って働く人が多くいます。
患児の中には、22週500g程度で生まれる赤ちゃんもいます。自発呼吸はまだできず、皮膚もゼラチン状、まだ目も開かないということもあります。
入院時の処置が長引くほど赤ちゃんに負担はかかります。赤ちゃんの負担を軽減するために、まだ体温調整ができない赤ちゃんのために空調はすべて遮断、外から処置が見えないようにカーテンを引き、ウォーマーを使用することもあります。
”すべては赤ちゃんのため”と過酷な環境ではありますが、”スタッフ一人一人が自分の役割を理解し、チームワークのとれた働きをする”、救命救急の基本の姿を見ることができます。
オンコールに不満を言う看護師は少ない
超未熟児や多胎児が生まれるような可能性がある時には、もし急にお産が進み出産!という事態に備え、普段の勤務以外に待機を命じられることがあります。つまりオンコールですね。
オンコールの日は、無事に夜を乗り越えられ呼び出しがないこともありますし、急に呼び出されることもあります。
しかし、NICUの使命感からなのか、オンコールに対して不満を言う看護師はあまりいないようです。
むしろ、急変・入院になると気合いが入る人が多いような気がします。急変・入院で気合いが入るというと不謹慎ですが、アドレナリンがでることにより、仕事にも気合が入ります。
それでは、NICU看護師に求められるスキルとは何か考えてみましょう。
NICU看護師に求められる4つのスキルとは?
- 未熟児、新生児レベルに合わせた看護技術
- 急変時に対応できる、蘇生に関するスキル
- グリーフケアについての知識
- ベビーケアに関するスキル
未熟児、新生児レベルに合わせた看護技術
まず入職してすぐに、これまで学校で学んできた看護技術がNICUでは通用しないということを思い知らされます。
看護技術の基本や考え方は同じなのですが、成人を基準に学習をしてきた看護技術の基本や考え方を、すべて未熟児、新生児レベルで考えなくてはいけません。
NICUでは使用する物品や量も 成人の基準とは大きく異なるので、その特殊性をまず理解した上で、看護技術を学びなおすことが大切です。
急変時に対応できる、蘇生に関するスキル
NICUは急な入院や、患児の急変などもが起こりやすい現場です。そのために、急変の時にすぐ対応できる蘇生に関するスキルが必要になります。
蘇生に関するスキルとは、蘇生のステップABCDが基本になり、仮死状態の超未熟児や新生児に対しては、吸引・保温・人工呼吸・心臓マッサージ・必要に応じて薬剤投与の処置になりますが、蘇生に関するスキルも赤ちゃんと成人とでは異なります。
グリーフケアについての知識
NICUは急変が起こりやすい現場ということは、同時に亡くなる赤ちゃんもいるということです。赤ちゃんを亡くし悲嘆に暮れる両親や家族に対して看護師としてきちんとした配慮ができるよう、グリーフケアの知識があると役立ちます。
ベビーケアに関する知識やスキル
近年NICUでは、カンガルーケアやタッチケアが注目されるようになりました。これらのベビーケアに関する知識やスキルもあると役立ちますよ。
次に、NICUで働くメリット・デメリットを考えてみましょう。
NICUで働くメリットとは
異常を早期にキャッチできる観察力が身につく
物が言えない赤ちゃんは泣いて訴えることしかできません。NICUの看護師は、赤ちゃんのモニターやバイタルサインなどから異常をキャッチしなくてはいけませんので、少しの異常も見逃さないように注意深く観察をするようになります。このような日々の業務の中、看護師に必要な観察力が身につくでしょう。
アセスメント能力が高まる
また観察したことから、何が考えられるのかを素早く分析、判断できるようになりますね。NICUでは、小さな変化が大きな問題へと発展することもあるので、早めの報告、早めの処置が大切になるのです。
今起こっている変化や問題に対して、すぐにアセスメントをするようになることは、看護師にとって大きなメリットです。
NICUで働くデメリットとは
常に緊迫した状況下で仕事をし、精神的に辛いこともある
NICUの看護師は、精神的につらい仕事が多くなります。
例えば、自分の受け持ちが超未熟児だった場合、重症度によってはその日の受け持ちはその一人の赤ちゃんだけになります。
受け持ちの赤ちゃんの小さな変化や異常を見逃せない緊迫した状況での中、1日中高い集中力と強い緊張感で看護にあたるため、その日の仕事が終了する時には疲労困憊になることもあります。
看護師の燃え尽き症候群が多いことも、NICUの特徴の一つと言えます。
メリット・デメリットは人により感じ方は様々ですが、NICUで働く看護師はどう感じているのでしょうか。実際にNICUの現場でお仕事をされている看護師に伺ってみました。
NICU看護師の体験談
Sさん(女性)30代
新卒のころは、一からNICUの技術を叩き込まれました。厳しくて何度もやめようと思いましたが、今はリーダー層を任されるほどになりました。途中でやめていく同僚を何人も見ていますが、ここで得た技術はどこの病棟に行っても通用する、私もここで技術をしっかり習得したいという気持ちで働いています。
Kさん(女性)20代
新卒の時には、いつ呼び出されるかと不安でしたが、いつも先輩が指導してくださったので、今では不安なく夜勤に取り組めるようになりました。始めは超未熟児に対しては触ることも怖かったのですが、今では知識も技術も身についてきたので、恐怖心が無くなりました。その点では、わたしも成長したなと感じています。
Oさん(女性)30代
自分の出産や育児経験が生かせる職場でうれしいです。出産前からNICUに勤務していましたが、その当時も退院する赤ちゃんに対しての育児指導は行っていました。でも自分が未経験のことですべて教科書上のことばかり。今は自分が出産も育児も経験をしたので、自信を持ってお母さんに育児指導を行うことが出来るようになりました。
ここまでの内容も踏まえながら、NICU看護師にはどのような人が向いているか考えてみましょう。
NICUはどんな人に向いているか
- 身体的、精神的にタフな人
- まじめで理論的な人
- 医療機器に対して苦手意識がない人、また知識欲がある人
- 助産師の資格がある人、出産・育児経験がある人
- 看護師としてステップアップを目指す人
身体的、精神的にタフな人
ここまでにもお話してきましたが、NICUは身体的にも精神的にもとてもハードな職場です。そのため、仕事がハードであっても使命感が強く、自己の体調管理などもでき、身体的にも精神的にもタフな人が向いています。
まじめで理論的な人
NICUは大雑把な人には向いていません。なぜなら、大雑把な仕事が許されない世界だからです。注射薬の量や哺乳量は赤ちゃんの体重によって細かく決まってきますし、点滴の指示量などを守るために微量ポンプを使用することもあります。その点から、まじめで理論的な人に向いているといえます。
医療機器に対して苦手意識がない人
NICUでは、モニター、呼吸器、点滴シリンジ、時にはNICU独得の医療機器を使用します。臨床工学士が携わることがほとんどですが、基本的な管理は看護師が行います。
医療機器に苦手意識がなければ、勉強することにより知識を得ることができますし、経験を積むことにより取り扱いもできるようになりますので、医療機器に苦手意識のない人に向いています。
助産師の資格がある人、出産・育児経験がある人
助産師の資格を持ってNICUに勤務する人も少なくありません。主には低出生体重児のケアになりますが、母親の母乳のケアやカンガルーケア、育児指導などの面では助産師の知識が大いに活躍をします。またその点では、実際に出産や育児を経験した人にも向いているでしょう。
看護師としてステップアップを目指す人
NICUには、新生児集中ケア認定看護師の資格を得る道もあります。これから看護師としてステップアップを目指す人にも良い科だといえます。
では実際に、NICU看護師になるためには、どうしたらよいのでしょう。
NICU看護師になるための転職方法とは
NICU病棟は比較的大きな病院にしかありません。転職したいと希望しても、すべての病院にあるわけではないので、自分が転職したいタイミングで求人がないという場合もあります。
しかし、厳しい職場であることから、退職者も少なくありません。
中途採用者の求人情報が出回るタイミングとしては、4月など、新卒の入職時期に合わせて出てくることが多いようです。
採用する病院側としては、NICUの特殊性を理解し、なるべく看護師への教育がスムーズにできる4月のタイミングで採用したいということですね。
おわりに
NICUで働けば、どんな状況でも働くことのできる看護師になれる
前述した通り、NICUの看護師になりたいと考えても、NICUのある病院が限られているということもあり、それほど看護師の中でも求人数は多くありません。
しかし、これから看護師としてスキルアップをしたい、もっと過酷な現状に身を置いて、どこでも通用する看護師になりたいと希望する人にとっては魅力的な職場といえます。
NICUに興味がある人はぜひ挑戦してみてくださいね。