看護師の資格や臨床経験を活かせる仕事って、いろいろとありますよね。
その中のひとつ、看護実習助手という仕事を知っていますか。
将来看護師を目指す学生達を、実習先となる医療機関へ引率し、学校の教員や現場の臨床指導員と連携を取りながら、円滑に実習が進むようにサポートをおこなう仕事です。
今回は、そんな看護実習助手の仕事について詳しくお話ししていきます。
看護実習助手の仕事とは?
看護実習助手の主な勤務場所は、看護学校、看護大学の実習先となる病院です。(訪問看護ステーションなどの場合もあります。)
では、看護実習助手とは具体的にどのような仕事をするのでしょうか。
看護実習助手の具体的な仕事内容
- 朝の実習開始時間から学生とともに現場に入る
- 学生一人一人の当日の行動予定を確認する
- 看護計画を含めた学生の提出物などを確認する
- 実習中、学生と受け持ち患者さんとの関わりを見ながら必要なアドバイスをする
- 実習終了後、現場の実習指導員を交えて毎日の振り返りをする
- 指導員とともに学生に対して評価・助言をする
- 実習期間中の学内演習で、他の教員や学生達と受け持ち患者さんの症例を検討する
- 教員とともに、担当する学生一人一人と面接をする
- 学生が完成させた看護計画を実践できるように指導する など
看護実習助手には、実習先での学生への臨床指導だけではなく、場合によっては、学生の記録物や看護計画などの内容についても、適切なアドバイスや指導をおこなうことが求められます。
それでは、看護実習助手に求められるスキルとは何か考えてみましょう。
看護実習助手に必要なスキルとは
- やっぱり指導力!
- 豊富な臨床経験
- 配慮と気配り
1. やっぱり指導力!
看護実習助手は看護技術だけではなく、看護過程の展開をよく理解した上で、学生に対し教育や指導する必要があります。指導するためには、学生に対して適切なアドバイスや率直な意見ができなくてはいけません。
2. 豊富な臨床経験
実際、実習で指導を行う際に、例えば、基礎看護実習は”基礎”となるので、分野に関係なく臨床経験があれば指導できますが
- 成人看護実習 → 急性期、慢性期病棟経験者
- 精神看護実習 → 精神科病棟経験者
など、その分野での臨床経験があるとより詳しい指導ができるでしょう。
自分の経験が乏しい分野で実習を担当する場合には、事前に勉強し実習に臨む努力も必要です。
3. 配慮と気配り
個人差もありますが、学生の中には、実習中は提出物に追われ、忙しさに体調を崩してしまう人や、受持ちの患者さんとの関り方に悩んでしまう人もいます。
担当する学生達の実習状況だけでなく、体調面、精神面などを把握するよう努めながら、円滑に実習がおこなわれような配慮も必要です。
また、あくまでも学生のサポートであるため、学生の自発性を尊重しながら、状況を見極めつつ介入していく必要があります。
次に、看護実習助手で働くメリット・デメリットを考えてみましょう。
看護実習助手で働くメリットとは
- 臨床現場を客観的に振り返えることができる
- 勤務時間が規則的である
1. 臨床現場を客観的に振り返ることができる
学生は1対1で患者さんと向き合い、看護について集中的に考え実践できる時間があり、日々の業務に追われる看護師ではなかなか行き届かない面まで患者さんと深く関わりを持てることができます。その結果、リハビリに対し前向きになったり、笑顔が多くなったり…患者さんによっては、良い変化が見られることがあります。
そのような、学生と患者さんとの関わりを通して、自分自身の臨床経験を客観的に振り返ることができ、新たな発見や気づきを得る機会が多くあります。
2. 勤務時間が規則的である
病院勤務とは違い、夜勤がなく、勤務地によっては残業もありません。学生が相手のため、土日祝日が休みの職場が多く、生活リズムは安定し、比較的体への負担は少ないでしょう。
看護実習助手で働くデメリットとは
- 看護師の仕事として物足りなさを感じる人がいる
- 学生との関係を構築するのが難しい
1. 看護師の仕事として物足りなさを感じる人がいる
看護実習助手の仕事は医療行為に携わることが一切ありません。そのため、看護師の仕事として物足りなさを感じてしまう人もいるようです。
2. 学生との関係を構築するのが難しい
学生一人一人と向き合い、理解していくことが大切になりますが、実習期間が短期間のため、学生との関係を構築するのが難しいと感じる場合があります。短期間でも、学生一人一人に声をかけるなど、積極的にコミュニケーションを取る熱心さが必要です。
メリット・デメリットは人により感じ方は様々ですが、看護実習助手で働く看護師はどう感じているのでしょうか。実際に看護実習助手の現場でお仕事をされている看護師に伺ってみました。
看護実習助手の体験談
Hさん(女性)30代
たまたま登録していた派遣会社から勧められ、看護実習助手のお仕事をすることになりました。初めてなので、最初は戸惑うことも多かったのですが、一生懸命な学生達と関わる中で、多くの刺激を受けました。はじめて教える立場に立ち、そこからやりがいを見出すことができました。自分の新たな可能性を発見できた気がします。
Eさん(女性)30代
新しいことをはじめてみたいと思い、経験不問の看護実習助手に挑戦してみました。実習が自分にとって馴染みのない分野だったので、本を買ってたくさん勉強もしました。学生達に「先生」と呼ばれる事に最後まで照れくささを感じつつも、教育の大切さや学ぶ楽しさを身をもって体験できました。教育について学ぶために、新たに進学を決心する大きなきっかけになりました。
それでは、ここまでの内容を踏まえ、看護実習助手にはどのような人が向いているのでしょうか。
看護実習助手はどんな人に向いているのか
- 教員に興味のある人、教えることが好きな人
- 臨床で症例研究に携わってきた人
1. 教員に興味のある人、教えることが好きな人
看護教員に興味がある人は、試しに看護実習助手の仕事をしてみることで、自分の適性を見極める良い機会になります。また、学生に対する指導や教育をおこなう仕事なので、人に教えることが好きな人にとっては、大変やりがいのある仕事です。
2. 臨床で症例研究に携わってきた人
学生の間は、症例発表や卒業論文も含めて、学生が関わった患者さんとの1対1の症例研究がメインとなりますので、臨床で症例研究に携わってきた人は指導がしやすいでしょう。
では実際に、看護実習助手になるためには、どうしたらよいのでしょう。
看護実習助手への転職方法
看護実習助手になるには、看護師資格以外は特に必要な資格はなく、
臨床経験が3〜5年ある看護師であれば、看護実習助手にチャレンジできます。
看護実習助手は、非常勤、短期間、時給制という求人が殆どです。時給は2,000円程度が多く、金額が高めなので人気があります。
また、学生相手の仕事なので、土日祝日休みの日勤の求人が多いです。
看護実習助手の求人は、看護師専門の求人サイトで見つけたり、派遣会社を通じて紹介してもらうことができますが、看護学校や看護大学のサイト内の採用情報で見つけることもできるようです。
継続して看護実習助手の仕事をしたい人は、担当した実習が終了後、学内に別の実習で看護実習助手の求人があれば、続けて勤務させてもらえる場合があります。
実習時期は学校が決めますので、次の実習まで間が空いてしまうこともありますが、間を空けず翌週から別の学年の実習担当を任されるなんてこともあるようです。続けて看護実習助手の仕事をしたい人は、継続の意思をあらかじめ学校に伝えておくと良いでしょう。
最後に、看護実習助手の実際の求人例を見ていきましょう。
看護実習助手の実際の求人について
まずは、看護実習助手の実際の求人を見てみましょう。
1. 大学関連の医療機関での看護実習助手の求人(千葉県)
こちらは、国際医療福祉大学サイト内の教職員採用情報です。勤務地は関連する病院です(2016年2月)。常勤、あるいは非常勤で勤務可能です。常勤の場合、実習期間以外は病棟勤務のようです。常勤で働きたい人、病棟勤務も看護実習助手もやりたい人には魅力的な求人ですね。
2. 大学での非常勤実習指導者の求人(千葉県)
了徳寺大学サイト内の非常勤教員採用案内です(2016年2月)。時給が2,500円と看護実習助手求人の中では時給が高めです。また、臨床経験も5年以上の規定が多い中、3年以上となっていますので臨床経験の年数が浅めの人も応募しやすいですね。
3. 看護学生の病院実習助手の求人(埼玉県)
こちらは、MCナースネットに掲載されている看護学生の病院実習助手の求人情報です(2016年2月)。土曜日も毎週お休みですので、自分のライフワークに合わせた働き方ができそうですね。時給2,500円と、こちらの求人も時給が高めなのが嬉しいですね。
おわりに
看護実習助手の仕事内容は学生への指導が主となり、医療行為はありませんが、今までの看護師としての知識、臨床経験がないと務まらない仕事です。今までの看護師としてのキャリアを活かせるという点では、とてもやりがいのある仕事だと思いますよ。
看護実習助手の現場では、子育て中の方やブランクがある方も活躍しています。新たな分野に興味のある方、今までの看護師としての経験を教育の分野で活かしたい方、ぜひ看護実習助手に挑戦してみてはいかがでしょうか。
今までの臨床の現場を、違う視点から見つめる良い機会にもなるはずですよ。
将来、看護教員を目指したい方は、こちらの『看護教員の就職方法と資格取得方法は目指す教育機関によって違います』も、ぜひ参考にご覧ください。