排泄は人間が生きていく上でなくてはならないものであり、快適な排泄は人間としての基本的欲求のひとつです。
今回はそんな排泄ケアのエキスパート、皮膚・排泄認定看護師についてご紹介します。
皮膚・排泄認定看護師の仕事内容
皮膚・排泄認定看護師って?
日本看護協会が定める皮膚・排泄におけるケアのエキスパートです。
1997年に認定がスタートしましたが、数ある認定看護師のなかでも救急看護と並んで最も歴史のある認定資格です。
2016年現在、全国で2,155名の皮膚・排泄ケア認定看護師が登録されています。
以前は英語の頭文字「Wound, Ostomy and Continence Nursing」をとって「WOCナース」と呼ばれていましたが、一般の方にもわかりやすくするため2007年に日本語表記へ名称変更されました。
求められる知識と技術
日本看護協会が定める定義は以下のとおりです。
- 褥瘡などの創傷管理およびストーマ、失禁などの排泄管理
- 患者、家族の自己管理およびセルフケア支援
※参照:日本看護協会「認定看護師とは」
皮膚・排泄ケア認定看護師の活躍の場
そもそも、皮膚・排泄ケア認定制度の専門性はストーマ(人工肛門、人工膀胱)ケアを基盤として始まりました。
しかしストーマケアで培われた知識や技術は、褥瘡や創傷への対処や予防にも活用できることが評価されました。その活動範囲は拡大し、現在では
- Wound
- Ostomy
- Continence
この3つの役割が確立されています。
1. Wound=創傷ケア
健常な皮膚を維持するためのスキンケアを通して、皮膚のトラブルの予防や創傷の早期治癒のための介入を行います。
2. Ostomy=ストーマ(人工肛門、人工膀胱)ケア
ストーマを持つ患者さん、これから手術を受ける患者さんに対して理解を助け、ストーマケアの指導や装具選択、日常生活へのアドバイスを行います。
3. Continence=排便、排尿の調節機能の回復(コンチネンス)のためのケア
コンチネンスケアとは便・尿失禁に伴う機能の改善を促すためのケアのことです。
特に病気や手術後に発生する失禁に対する排泄管理、失禁による皮膚のかぶれなどの改善と予防を行います。
排泄にかかわる分野は非常にデリケートで、患者さんが自身の疾患を受け入れるまでには様々な過程があります。
そんな患者さんに寄り添い、患者さんが排泄ケアを自身の生活の一部として確立するための手助けをする、皮膚・排泄認定看護師の存在は大きな意味を持ちます。
また、ケアに関わる看護師への指導的役割など、急性期病院はもちろん、回復期や療養病棟、在宅ケアなど幅広くニーズがあり、これからますますの活躍が期待されています。
皮膚・排泄ケア認定看護師になるには
他の認定看護師同様、認定看護師養成機関における教育課程を修了し、認定看護師試験に合格する必要があります。
皮膚・排泄ケア認定看護師 養成機関入学要件
- 日本国の看護師の免許を有する者。
- 看護師としての実務研修を5年以上(入学時点で可)有する者。
かつ
- 通算3年以上(入学時点で可)、外科系領域またはストーマケアを行う病棟・外来・在宅ケア領域での看護実績を有すること。
- ストーマ造設患者の看護を1例以上、および創傷または失禁ケア領域の看護を4例以上担当した実績を有すること。
- 現在、創傷ケア、ストーマケア、または失禁ケアを行う病棟・外来・在宅ケア領域で
勤務していることが望ましい。
が求められます。
カリキュラム概要
共通科目 | 150時間 | 専門基礎科目 | 60時間 |
看護管理 | 15 | 皮膚のアセスメントとケア | 30 |
リーダーシップ | 15 | 精神面のアセスメントとケア | 15 |
文献検索・文献講読 | 15 | 栄養のアセスメントとケア | 15 |
情報管理 | 15 | ||
看護倫理 | 15 | ||
指導 | 15 | ||
相談 | 15 | ||
対人関係 | 15 | ||
臨床薬理学 | 15 | ||
医療安全管理 | 15 |
専門科目 | 225時間 | 演習 | 150時間 | 実習 | 225時間 |
皮膚・排泄ケア概論 | 15 | 演習 | 150 | 実習 | 225 |
排便機能に破綻をきたす病態の理解と評価 | 30 | ||||
排尿機能に破綻をきたす病態の理解と評価 | 30 | ||||
ストーマケア | 30 | ||||
排泄ケア | 30 | ||||
創傷の病態と治療 | 30 | ||||
創傷アセスメントと管理 | 60 |
総時間数 810時間
詳しいカリキュラム内容は「教育基準カリキュラム新旧対照表(皮膚・排泄ケア) 【目的・期待される能力】」をご覧ください
皮膚・排泄ケア認定看護師 教育機関
認定看護師の資格が取れる学校は数が少なく、さらに全国各地に点在しています。そのため、受講したい分野の学校が全国で1ヶ所しかないケースもあります。
皮膚・排泄ケア認定看護師資格を受講できる学校を調べたところ、以下の学校が見つかりました。
- 北海道医療大学認定看護師研修センター(北海道)
- 日本看護協会看護研修学校(東京都)
- ※長野県看護大学看護実践国際研究センター(長野県)
- 静岡県立静岡がんセンター認定看護師教育課程(静岡県)
- 京都橘大学看護教育研修センター(京都府)
- ※山陽学園大学看護研修センター(岡山県)
- 福岡県看護協会(福岡県)
- 公益社団法人沖縄県看護協会(沖縄県)
「開講月」「開講期間」「 定員数」が 教育機関により違うため、それぞれにチェックが必要です。また、募集を行わない年もあります。
※2016年4月現在の開講状況をみると「長野県看護大学看護実践国際研究センター」「山陽学園大学看護研修センター」の2校が休講になっているようですね。
費用はどれくらい?
入学検定料 5万円、入学金 5万円、授業料 約75万円、その他諸経費を合計するとおよそ100万円は必要です。
それ以外に交通費、参考書やコピー代などの費用も発生しますし、生活費についても考える必要がありますね…。
おわりに
皮膚・排泄ケアは看護師にとっては非常に身近で、毎日欠かさず行うケアのひとつです。
だからこそ根拠と自信を持ってケアしたい!そんな思いを抱いている看護師も多いと思います。
ケアを通して患者さんが快適に、その人らしく生きるのをサポートする、皮膚・排泄ケア認定看護師への道、ぜひ挑戦してみませんか?