高度集中医療や救命医療の発展により、集中治療看護に特化したナースの必要性は近年ますます高まっています。
今回は、集中治療のエキスパート、集中ケア認定看護師についてご紹介します。
集中ケア認定看護師の仕事内容
集中ケア認定看護師って?
日本看護協会が認定する、おもにICU、CCUなどの集中治療室で重症かつ集中治療を必要とする患者さんとその家族へのケアについての専門家です。
ちなみに集中ケアについて、本来英語では「Critical care」が相当し、「Intensive Care」は和製英語になりつつあるそうです。
1999年に認定がスタートし、2016年現在、全国で1,018名が登録されています。
求められる知識と技術
日本看護協会が定める定義は以下のとおりです。
- 生命の危機状態にある患者の病態変化を予測した重篤化の予防
- 廃用症候群などの二次的合併症の予防および回復のための早期リハビリテーション
※参照:日本看護協会「認定看護師とは」
集中ケア看護師の活躍の場
集中ケア看護師の役割を一言で説明しようとしても、その活躍の場は広範囲になります。
では、さらに詳しくみてみましょう。
1. クリティカルケアのエキスパート
ICUなどで治療を受けている患者さんは、生命の危機に直面、もしくはそのリスクが高い状況にあります。
わずかな時間で状態が変化するため、24時間体制での観察はもちろん、濃厚な治療とケアを継続しなければなりません。
集中ケア認定看護師は、その専門知識を用いて観察とアセスメントを行い、病態の変化を予測し、重症化を回避するための援助を行います。
養成機関カリキュラムは集中治療に必要な高度医療機器の管理はもちろん、フィジカルアセスメントにも重点を置いた内容になっています。
2. 二次的合併症の予防と早期リハビリテーション
集中治療というと、どうしても疾患や治療そのものに目がいきがちですが、特殊な環境で治療を受けている患者さんの苦痛や侵襲を最小限にとどめ、肺炎や尿路感染、ICU症候群といった合併症を予防することも集中ケア認定看護師の大切な役割です。
またリハビリテーションですが、「集中治療中だからリハビリが出来ない」なんて古い!!
集中治療中だからこそ、状態をよく観察しながら行うリハビリスキルを習得し、早期回復に向けてのさまざまなアプローチを行います。
3. 家族へのケア
患者さんの容態や今後の回復の見込みなど、家族が抱える不安は計り知れません。
集中治療は多くが緊急で、どうしても家族への対応が後回しになりがちです。そんな家族の不安を軽減し、受け入れるためのケアも大切な役割です。
特にICUなどは面会制限などがある場合も多いので、家族への情報提供や現状理解のための働きかけを行います。
4. 集中治療チームのコアメンバー
集中治療はチームワークが非常に大切であり、医師や検査技師など他職種との連携をスムーズに行うための調整役としても大きな役割を持ちます。
チームメンバーへの観察や技術の指導を行うほか、院内の救命講習の開催などによりチームだけでなく組織全体のスキルアップを図ります。
また、呼吸ケアチームの一員としての活躍の場もあり、人工呼吸器装着患者さんに対し、主治医や担当看護師とともにカンファレンスを行いながら安全管理などのお手伝いをすることもあります。
呼吸ケアチーム(RST)について
おもに人工呼吸器を装着している患者さんへの観察や管理、合併症の予防などを目的にドクターやナース、臨床工学技師などの呼吸ケアのスペシャリストたちがチームとなって活動します。
日本でもRST加算が認められ、RSTを導入する病院が増えてきています。
集中ケア認定看護師はRST加算の算定要件となっていますので、RST立ち上げや運営などの中核を担っていることが多いようです。
集中ケア認定看護師になるには
他の認定看護師同様、認定看護師養成機関における教育課程を修了し、認定看護師試験に合格する必要があります。
1. 集中ケア認定看護師 養成機関入学要件
- 日本国の看護師の免許を有する者。
- 看護師としての実務研修を5年以上(入学時点で可)有する者。
かつ、
集中ケア分野の実務研修内容の基準
(特定の看護分野における看護実績及び教育課程入学時に望まれる勤務状況)
- 通算3年以上、集中ケア部門または小児集中ケア部門(手術室、NICUは除く)での看護実績を有すること。
- 疾病、外傷、手術などにより高度に侵襲を受けた患者の看護を5例以上担当した実績を有すること。
- 現在、集中ケア部門で勤務していることが望ましい。
が求められます。
2. カリキュラム概要
共通科目 | 150時間 | 専門基礎科目 | 105時間 |
看護管理 | 15 | 集中ケア看護概論 | 30 |
リーダーシップ | 15 | 集中ケアにおけるアセスメント概論 | 30 |
文献検索・文献講読 | 15 | 集中ケアにおける安全管理 | 15 |
情報管理 | 15 | 集中ケアにおけるコミュニケーションとマネジメント | 15 |
看護倫理 | 15 | 集中ケアにおける臨床薬理 | 15 |
指導 | 15 | ||
相談 | 15 | ||
対人関係 | 15 | ||
臨床薬理学 | 15 | ||
医療安全管理 | 15 |
専門科目 | 165時間 | 演習 | 210時間 | 実習 | 180時間 |
皮膚・排泄ケア概論 | 90 | 演習 | 210 | 実習 | 180 |
排便機能に破綻をきたす病態の理解と評価 | 75 |
総時間数:810時間
詳しいカリキュラム内容は「教育基準カリキュラム新旧対照表(集中ケア) 【目的・期待される能力】」をご覧ください。
3. 集中ケア認定看護師 教育機関
認定看護師の資格が取れる学校は数が少なく、さらに全国各地に点在しています。そのため、受講したい分野の学校が全国で1ヶ所しかないケースもあります。
集中ケア認定看護師資格を受講できる学校を調べてみたところ、以下の4校が見つかりました。
「開講月」「開講期間」「 定員数」が 教育機関により違うため、それぞれにチェックが必要です。また、募集を行わない年もあります。
※2016年4月現在の開講状況をみると「神奈川県立保健福祉大学実践教育センター」「西南女学院大学 認定看護師教育課程」の2校は休講になっていました。
4. 費用はどれくらい?
- 入学検定料… 5万円
- 入学金… 5万円
- 授業料… 約75万円
その他諸経費を合計するとおよそ100万円は必要です。
それ以外に交通費、参考書やコピー代などの費用も発生しますし、生活費についても考える必要がありますね…。
おわりに
認定看護師資格取得後は、集中ケア認定看護師会に任意で登録し(年会費6000円)、定期的な研修やセミナーに参加するなど常に自己研鑽に励む必要があります。
やはり看護は一生勉強ですね。
集中治療における高度な知識と技術を持ち、そして集中治療中から患者さんの回復を手助けするエキスパート、集中ケア認定看護師への道。
ぜひチャレンジしてみませんか?