突然の事故や災害により、救急看護に特化したナースの必要性は近年ますます高まっています。
今回は、救急看護のエキスパート、救急看護認定看護師についてご紹介します。
救急看護認定看護師の仕事内容
救急看護認定看護師って?
1995年に認定がスタートしましたが、数ある認定看護師のなかでも皮膚・排泄ケアと並んで最も歴史のある認定資格です。
2015年現在、全国で921名の救急看護認定看護師が登録されています。
単に救急外来のみに留まらず、初期・二次救急医療機関をはじめドクターヘリ、市民への啓発活動など、年々その活躍フィールドは拡大しています。
求められる知識と技術
日本看護協会が定める定義は以下のとおりです。
- 救急医療現場における病態に応じた迅速な救命技術、トリアージの実施
- 災害時における急性期の医療ニーズに対するケア
- 危機状況にある患者・家族への早期的介入および支援
※参照:日本看護協会「認定看護師とは」
救急看護師の活躍の場
救急看護師の役割を、一言で説明しようとしても、その活躍の場は広範囲になります。
では、さらに詳しくみてみましょう。
1.救急現場におけるエキスパート
一刻を争う緊急場面で、限られた時間で瞬時に全身状態を観察し、情報を収集し、必要な処置を予測して行動します。
生命に直結する場面が多く、迅速かつ正確な看護技術が求められます。また緊急場面だからこそ、患者の苦痛を最小にするケアや倫理的配慮も必要です。
2.トリアージナース
救急外来に来院する患者さんの重症度はさまざまで、軽症の方もいれば一刻を争う重症の方もいます。
基本的に受付順で順番待ちをしていただくのが現在の日本の医療の主流ですが、なかには診察待ちの間に急変してしまうケースもあります。
そんなリスクを解消するため、患者さんの重症度に応じて診察順番をコーディネートし、今すぐ治療が必要な患者さんを優先するシステムを「院内トリアージ」と呼びます。
この役割を果たすのがトリアージナースで、病態知識だけでなく症状から病態を予測する力や訴えを聞きだすコミュニケーション能力、そして迅速な行動力が求められます。
3.災害時のケア
災害発生時には、すべての機能する医療機関がその支援と復旧に全力を尽くす必要があります。
救急外来にも負傷した患者さんが大勢押し寄せることが予測されます。
こうした際の診療体制の整備をはじめ、トリアージの実施、外来患者の治療や療養環境の整備とケア、他の医療機関との連携も救急看護認定看護師の役割になります。
4.家族への早期介入と支援
緊迫する救急現場では、家族への対応はどうしてもおざなりになりがちです。
しかし、突然家族を失うかもしれない恐怖と絶望感を抱えた家族が、そこで待つ時間は
とてつもなく長いものです。
そうした家族へ早期に介入し、現在の状況や今後の治療の方向性について理解してもらう
働きかけも大切な役割です。
救急看護認定看護師になるには!
救急看護認定看護師の教育課程を修了し、認定試験に合格する必要があります。
救急看護認定看護師 養成機関入学要件
- 日本国の看護師の免許を有する者。
- 看護師としての実務研修を5年以上(入学時点で可)有する者。
かつ
- 通算3年以上、救急部門での看護実績を有すること。少なくとも初療で6ヵ月、およびICU(必ずしもICUでなくてよい)で2年の実績を有することが望ましい。
- 初療において、CPA・重症外傷・意識障害・呼吸不全・循環不全・中毒・熱傷患者の看護のうち5例以上担当した実績を有すること。緊急手術の経験を有することが望ましい。
- 現在、救急部門で勤務していることが望ましい。
が求められます。
カリキュラム概要
共通科目 | 150時間 | 専門基礎科目 | 120時間 |
看護管理 | 15 | 救急看護概論 | 30 |
リーダーシップ | 15 | 救急患者の主要病態と治療 | 30 |
文献検索・文献講読 | 15 | 救急患者と家族の心理・社会的アセスメント | 30 |
情報管理 | 15 | 災害急性期看護 | 30 |
看護倫理 | 15 | ||
指導 | 15 | ||
相談 | 15 | ||
対人関係 | 15 | ||
臨床薬理学 | 15 | ||
医療安全管理 | 15 |
専門科目 | 150時間 | 演習 | 165時間 | 実習 | 225時間 |
皮膚・排泄ケア概論 | 60 | 演習 | 165 | 実習 | 225 |
排便機能に破綻をきたす病態の理解と評価 | 75 | ||||
急性症状とケア | 15 |
総時間数 810時間
詳しいカリキュラム内容は「教育基準カリキュラム新旧対照表(救急看護) 【目的・期待される能力】」をご覧ください
救急看護師認定 教育機関
認定看護師の資格が取れる学校は数が少なく、さらに全国各地に点在しています。そのため、受講したい分野の学校が全国で1ヶ所しかないケースもあります。
救急看護認定看護師資格を受講できる学校を調べてみたところ、以下の学校が見つかりました。
- ※青森県立保健大学 地域連携・国際センター(青森県)
- 日本看護協会 看護研修学校(東京都)
- 東海大学看護師キャリア支援センター(2016年度新規開講)(神奈川県)
- 愛知医科大学 看護実践研究センター(愛知県)
- 大阪府看護協会 認定看護師教育課程(大阪府)
- ※和歌山県看護協会(和歌山県)
- 日本赤十字九州国際看護大学 看護継続教育センター(福岡県)
「開講月」「開講期間」「 定員数」が 教育機関により違うため、それぞれにチェックが必要です。また、募集を行わない年もあります。
※2016年4月現在の開講状況をみると「青森県立保健大学 地域連携・国際センター」「和歌山県看護協会」の2校が休講になっているようでした。
費用はどれくらい?
これらのカリキュラムを修了すると、救急看護認定看護師修了試験の受験資格が得られます。
費用は他の認定看護師同様、授業料60~70万、実習費10~20万、その他諸経費などで100万円程度は必要です。
それ以外に交通費、参考書やコピー代などの費用も発生しますし、生活費についても考える必要がありますね…。
おわりに
救急看護は、さまざまな問題を抱えて病院を訪れた患者さんに最初に関わる仕事です。
その関わりは一瞬でありながら、患者さんの生命や予後に大きく影響するため、常に緊張しっぱなしです。
だからこそやりがいも大きい仕事なんですね。
救急看護のエキスパートへの道、ぜひ挑戦してみませんか?