高齢化社会において、今後ますますその役割が期待されている『地域包括支援センター』。
それは、病院以外で看護師の活躍できる場として注目の職場です。
今回は、地域包括支援センターとはどういったものなのか?ここでの看護師の仕事内容とは?そのメリットやデメリットは?どうしたら働けるのかといった求人?など、実際に地域包括支援センターで働いていた保健師さん、看護師さんに具体的に実情を聞いてまとめてみました。
それでは1つひとつ、お話しをしていきますね。
地域包括支援センターとは
地域包括支援センターというのは、介護保険法で定められた機関です。
- 地域住民の保健・福祉・医療の向上
- 虐待防止
- 介護予防マネジメント
などを総合的に行う機関であり、各区市町村に設置することが義務付けられています。
こちらは2005年の介護保険法改正で制定されました。
保健・福祉・医療の向上や、虐待防止はなんとなくわかるけど、介護予防マネジメントって?なかなか想像できないと思います。
地域包括支援センターの役割とは
地域包括支援センターとは、ズバリ……地域の高齢者のよろず屋。これに尽きます。
地域の高齢者のことなら、ほぼすべてと言っても過言ではないくらい、地域包括支援センターが担います。
- 『あそこのおばあちゃん、数日前から見かけないの』
- 『あそこのおじいちゃん、いろんなところにアザがあって…』
- 『何丁目に住んでるあのおばあちゃん、迷子みたいよ』
- 『最近、何だか血圧が高くって…』
- 『そろそろ介護のことを考えてみようかしら…』
などなど、とにかく高齢者のいろいろな情報が舞い込んできます。
本人からだったり、家族だったり、近所の人だったり、情報源はさまざまです。
また、地域包括支援センターは、各自治体の委託の施設であることが多かったり、市役所などの一角にあったりして、自治体との連携が不可欠です。
そのため、自治体から直接センターに情報が舞い込むこともあります。
地域包括支援センターの対応エピソード
最近、急に身なりがだらしなくなった高齢者のAさん。ボサボサの髪に肌着姿で自宅周辺を歩いているのが目撃されています。
「お店から戻れなくなったみたいで…何しに来たかもわからないみたい」と地域包括支援センターに電話がありました。
そこで、地域包括支援センターの職員が駆け付けて、家まで送り届けます。
ここで大切なことは、本人の生活状況の確認。
どんな生活をしているのか。冷蔵庫に食べ物はあるか?掃除はされているか?
Aさんの冷蔵庫には、賞味期限の切れた食べ物が溢れていました。部屋の掃除もされていません。
家族に現状を伝え、援助が受けられるのであれば援助してもらいます。
そして、介護保険の申請を行い、介護保険サービスに繋げます。
結局、Aさんには認知症の診断が出て、要支援の認定が下りました。
訪問介護のヘルパーさんが週に何度か訪れ、家事を一緒に行ったり、買い物同行などをするようになりました。
Aさんは、介護保険サービスを使いながら、1人暮らしを続けられています。
地域包括支援センターに求められること
このエピソードで大切なことは、近所の方からの情報を無駄にしないということと、短絡的に施設を勧めたり、勝手に事を進めないことです。
通常であれば、情報が入り、Aさんを無事に自宅まで送り届ければそれで一件落着となります。
しかし、それは地域包括支援センターとして、きちんと機能したとは言えません。
- 地域で見落とされがちな高齢者を、近所の方や家族の方などの情報によって発見し、援助を行っていく。
- また、その人の今までの生活を維持できるような関わりを、本人と話し合いながら行っていく。
むやみに施設などに入所させず、その人の培ってきた今までの生活が守れるような支援を行うこと。これが地域包括支援センターの求められることになります。
地域包括支援センターに携わる看護師の役割とは?
地域包括支援センターは、地域の高齢者のよろず屋なので、基本的に高齢者のことについてはすべて対応します。
看護師が主に担うのはやはり医療に関することです。
例えば…
- 高齢者が家で倒れていると聞けば血圧計と聴診器など、看護師の商売道具を持ち、自転車や車で吹っ飛んでいきます。
- 病院に付き添うこともあれば、受診調整をすることもあります。
- 退院カンファレンスに出ることだってあります。
- また、救急車を呼び、そのまま病院まで一緒に付き添い、経過を説明したりもします。
- 自宅への退院が難しければ介護施設や地域包括ケア病棟への転院調整、介護保険サービスの調整をすることもあります。
- 介護保険サービスの提供や亡くなった時の葬儀や相続の問題など、それらについての対応も、時には看護師が担ったりもします。
このように、看護師の役割は本当に多岐に渡ります。
医療の知識も大切ですが、介護保険についてや介護保険のサービスについてなども熟知していなければなりません。
このあたりは、地域包括支援センターに携わる看護師特有かもしれません。
そして、地域包括支援センターで働く上で大切なことは、介護が必要な高齢者を減らし、元気なままで長生きしてもらうこと。介護予防という考え方が大事になってきます。
そのために地域で高齢者を見守り、支えていくことが、地域包括支援センターが創設された目的です。
誰か1人に任せるでもなく、本人だけに任せるのでなく、地域の皆で支えていくことが大切なんですね。
介護予防における看護師ができること
介護予防という言葉が出てきたので、さらに突っ込んで、介護予防における看護師ができることについてお話しします。
情報提供による介護予防
介護予防のために尽力することは、地域包括支援センターで働く職員すべてに課せられた役割ですが、看護師は、センターの管轄している地域の介護予防教室などでプチ講義をしたり、介護予防体操を行ったりします。
夏には脱水予防、冬にはインフルエンザ対策など毎回のテーマを考えています。
また、健康教室などを企画して血圧測定、骨密度などを測り、より自分の身体に関心を向けてもらい、疾病の予防や転倒予防に努めます。
気になる高齢者をピックアップして介護予防
認知症が疑われたり、事前に情報が入ってきている高齢者には定期的に自宅訪問をしたりして、安否確認や生活状況の把握などもします。
健康状態はどうか、内服はできているか、食事はどうか…など、看護師のアセスメント能力の発揮どころです。
また、自治体と連携し、独居高齢者をピックアップし、個別に支援を行ったりもしています。
最近では、認知症予防にも力を入れています。
マネジメントによる介護予防
また、介護予防に関わるもう1つの役割として、介護予防ケアマネジメントというものを行います。そして、介護予防ケアプランの作成を行います。
ケアプランは病院でいうところの看護計画といったところでしょうか。医療ニーズが高い利用者を主に担当します。
訪問看護やデイサービス、身体の状態に合わせた福祉用具(杖、歩行器など)の介護保険サービスを調整し、介護を受けることなく、地域の中で暮らし続けていくための支援を行います。
このように、地域包括支援センターにおいての看護師は、医療の知識に加えて介護の領域まで考えて仕事をしていきます。
地域包括支援センターで働くことのメリット・デメリット
それでは、地域包括支援センターで働くと、どんなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
メリット
- 介護を受けることなく『元気で過ごし続ける』ことの支援を間近で行える
- 介護予防ケアマネジメントによってその人の生活に介入し、一緒に考え、生活を共にカスタマイズできる
- 看護師だけでなく、保健師などの他の資格も活かせる
元気な高齢者と関わることは自分も元気をもらえますし、何よりも『元気で過ごし続けること』の支援も立派な看護だと思うようになりました。
どのように健康維持をしているのか、医療に携わる看護師が逆に教わることもあります。
病気の人の支援を行うだけが看護師の仕事ではない、ということを実感できる職場になります。
デメリット
- 最後まで関われない分、やりがいが感じられないかもしれない
病院勤務の看護師は、看護計画を立てて、患者さんが退院するまで関わりを持ち、退院を迎えて見送る。
例えそれが死亡退院であったとしても、最後まで関われたことに嬉しさややりがいを感じたりといったことがあるのではないでしょうか。
でも、地域包括支援センターではそのようなことはありません。
あくまで医療機関や介護施設など、第三者への橋渡し役なのです。
そして、病院よりも、関わりは希薄であり、そもそも呼び方も『患者』ではなく『利用者』となります。
患者さんと関わり、退院まで見届けてきた人にとっては、どこか寂しく、どこか物足りないと感じてしまうことでしょう。
自分が関わった人の今後に関われないことは、どこかモヤモヤとしてしまうかもしれません。
地域包括支援センターで働くにはどうしたらいいのか?
地域包括支援センターに配置されている医療職は、規模にもよりますが看護師合わせて2~4人ほどです。
また、保健師は地域包括支援センターには必ず配置しなければならないため、保健師の資格を持っているととても有利になると思います。
住んでいる地域の役所や広報誌で求人情報を探してみる
地域包括支援センターは、各市町村に設置されているので、きっと求人があるはずです。
しかし、求人についてはポスターなどの表立ったものはセンター内では見かけません。お住いの役所や役場などのホームページや広報誌の求人欄を自分でいろいろと探してみるといいかと思います。
実際に、都内のいくつかの区役所のホームページを見て、地域包括支援センターの求人を見つけました(2019年2月以前の情報)。
地域によって、給与や待遇などの記載がバラバラですので、自力でたくさんの情報を得る場合はちょっと手間が掛かるかなという印象です。
※参照:杉並区公式ホームページより
看護師転職サイトを利用するのも一つの手
より近道をするのであれば、上手に看護師転職サイトを活用するのもありですね。「地域包括支援センター」とキーワード入力を行うだけで、知りたい情報を一括検索できるので、時間短縮できるのがうれしいですね。
都内の地域包括支援センターの看護師求人です(2018年6月)。
日曜日が固定なので、予定を立てやすいですね。
※参照:看護roo!
埼玉県内の地域包括支援センターの看護師求人です(2018年6月)。
遅出でも18:30までなので、プライベートな時間も過ごせますね(2018年6月)。
※:レバウェル看護
まとめ
今回は、地域包括支援センターについてのお話しをしました。
聞き慣れない名称かもしれませんが、高齢化を支える大切な場所です。
地域包括支援センターで働く看護師は、特別な医療行為をしない代わりに、知識や状況判断能力などが求められます。つまり、経験を積んだ看護師が求められます。
もし、ある程度の経験を積み、次のステップに…ということであれば、地域包括支援センターを選択肢の1つに入れるというのも手かもしれません。
当サイトでオススメの転職サイトを紹介していますが、なかでも看護roo!は地域包括支援センターの求人情報に強く、情報量も豊富です。
(地域包括支援センターの求人数 180件(200施設) 2019年4月10日現在)
地域包括支援センターへの転職をお考えの方はぜひ一度利用してみてください。
地域の中心となり、高齢者の今・未来を支える地域包括支援センターは、高齢化が進むなかで、役割は大きくなりつつあります。
病院でもチーム医療がなされるように、地域の中でも、自治体や地域の方々との協働で地域包括ケアは行われています。
この記事を通して、少しでも地域包括支援センターでの看護師の役割や業務の実際について知っていただけたら幸いです。