手術室の仕事って厳しそう…と思いながらも、スキルアップのために働いてみたいと思う看護師もいるのではないでしょうか。
でも、手術室はそう容易に出入りできる場所ではないので、手術室看護師の仕事について漠然としたイメージしかないという看護師もいますよね。
手術室の雰囲気は独特で、常に緊張感があります。
平穏に手術が経過していれば問題はないのですが、手術中の患者さんに何か変化が起こると、現場では厳しい医師の声がかかり、必要物品を取るために看護師は走り、おびただしい出血のついたガーゼが辺りに散乱…そして新人看護師はただただ呆然としてしまう…
今回はそんなあまり知られていない手術室の仕事について詳しく紹介しますよ。
手術室看護師 実際の求人について
まずは、実際にどんな求人がでているのか見てみましょう。
駅近の病床数400床の総合病院の求人(東京都)
こちらは、レバウェル看護に掲載されている東京都の駅近の病床数が400床の総合病院の求人情報です(2016年3月)。
早出と遅出の二交代制、そしてオンコールがある手術室求人です。ここには載っていませんが、求人は未経験でも応募可で、プリセプター制で教育制度がしっかりしているところが魅力的ですね。
急性期の総合病院の求人(東京都)
次に、看護roo!に掲載されている東京都の急性期総合病院の求人情報です(2016年3月)。
年間7000件以上もの救急を受け入れている急性期の病院なので、スキルアップを目指すならばオススメの求人です。
日本郵政グループ運営の総合病院の求人(東京都)
最後は、マイナビ看護師に掲載されている東京都の日本郵政グループが運営する総合病院の求人情報です(2016年3月)。
中途採用者の教育制度が整っており、子育てなどで離職していた方への再就職支援を行っています。
また、日本郵政グループなので、充実した福利厚生も魅力です。
手術室看護師は経験が優遇され、病院側も即戦力を求める傾向にありますが、実際に転職サイトで探してみると、未経験でも応募可、そして未経験者には教育体制が整った病院が多くありました。
では、そもそも手術室とはどのようなところなのか見ていきましょう。
そもそも手術室ってどんなところ?
手術室は患者さんが入室し、麻酔をかけ無菌操作で手術創を作り、摘出や縫合など手術治療を行う場所です。患者さんが最適な環境で手術が受けられるように、非清潔区域、準清潔区域、清潔区域に分かれ、感染防止に重点を置いた構造になっています。
手術室内には、手洗い設備、無影灯、酸素の中央配管、呼吸器、麻酔装置、モニターなどの電子機器、人工心肺などの医療機器、手術に必要な滅菌物などが置いてあります。
また、複数の手術室がある病院の場合、それぞれ手術室の大きさや置いてある物品が違い、どんな手術をするかによって手術室が細かく設定されている場合があります。
その種類の多さに「これをすべて覚えなくてはいけないのか…」と手術室内を見た看護師は不安に感じるかもしれませんね。
次に、手術室で働く看護師はどんな仕事をするのでしょう。
手術室看護師の仕事とは
手術室看護師にとって大切なことは、医師と協力して安全な手術ができるために業務に取り組むことです。そこでの看護師の主な仕事は、大きく分けて直接介助(器械出し)と間接介助(外回り)の2つになります。
直接介助(器械出し)とは
器械出しの看護師は、医師と同じように手洗いをして滅菌の術衣を着て、手術の最中には医師の横に立ち、医師が行っている手術進行状況を見ながら、医師に器械を渡していく役割をします。
間接介助(外回り)とは
外回りは、手術中に足りない手術機械や材料の準備、患者さんの容体や点滴の管理、また出血量の管理などを行っていく役割があります。
また手術で不安になることが多い患者さんやその家族に対してのメンタルケアや、手術後に患者さんをICUや病棟に引き継ぐ際に患者さんの状況を的確に伝達し、術後どのようなことを注意してほしいかを申し送るといった重要な役割もあります。
それでは、手術室で働く看護師の特徴を見ていきましょう。
手術室で働く看護師の特徴
手術室は、他の病棟と比べると以下のような特徴がある看護師が多いように思います。
- 知識や技術の習得に対して貪欲である
- 個々の能力以上にチームワークが大切と考えている
- 注意深く、念には念を入れた性格の人が多い
- 給料よりも仕事のやりがいに重点を置いている
知識や技術の習得に対して貪欲である
手術室には、外科、脳神経外科、整形外科、循環器科など、いろいろな科の患者さんが入室します。看護師も特に自分の受け持ちの科が決められているわけではありません。
すべての科の知識を習得するのは大変ですが、各科の疾患についてはもちろん、使用される器具や物品など知識を持っている必要があります。そのために、勉強会に参加したり、医師に指導を求めるなど、積極的にスキルアップに努めようという看護師が多くいます。
個々の能力以上にチームワークが大切と考えている
手術室に出入りするのは医師と看護師だけではありません。臨床工学士や臨床検査技師など様々なスタッフが関わります。
限られた時間の中、手術をスムーズに進めていくためにはチームワークを取ることがとても重要です。手術室看護師の多くはチームワークを一番に考えています。
注意深く、念には念を入れた性格の人が多い
手術後に患者さんの体内にガーゼが残っていたなんてニュースを聞いたことがあるかもしれません。このようなことが起こらないように、手術中はガーゼの枚数や針のカウントを必ず行います。
手術室では間違いが許されません。確認不足がないよう、注意深く、念には念を入れた慎重な性格の看護師が多くいます。
給料よりも仕事のやりがいに重点を置いている
手術室看護師は基本的に日勤のため、夜勤手当がない分、病棟で夜勤をこなす看護師に比べると給与支給額が下がることがあります。
しかし、給料に不満を訴える看護師は少ないです。給料よりも仕事内容に重点を置き、病棟では経験できない手術室看護師の仕事にやりがいを感じ、責任感を持って働く看護師が多くいます。
次に、手術室看護師に求められるスキルとは何か考えてみましょう。
手術室看護師に求められるスキルとは?
相手の行動を読む力、先を予測する力
医師は手術中、術野から目を離すことができないので、「ハサミ」や「コッヘル」など細かい指示を出す医師は少なく、特殊な機械を使う時以外は、看護師が先を予測して器械を出していくことを求められる場合も多くなります。
また、手術は安全で慎重かつ、必要最低限の時間で終了することが重要ですので、手術の流れを止めないよう、手術の動きを予測すること、手術担当の医師が好む器具を予め知っておくことも必要となります。
医療機器の知識
手術室に常備してある麻酔の機械や人工呼吸器、大きな病院では人工心肺など使用することもあります。それらの機械に関しては臨床工学士が手術に立ち会うことが基本ですが、看護師も医療機器の取扱や管理の仕方を知っておくことが必要です。
患者さんやその家族を安心させることができる声掛けや配慮
手術で不安になることが多い患者さんやその家族に対して、看護師として適切な声掛けをしたり、不安を解消してあげられる配慮が必要となります。
では、手術室で働くメリット・デメリットを考えてみましょう。
手術室で働くメリット
- 解剖学、清潔操作、挿管や急変の対応などが身に付く
- 看護師としての決断力、判断力が身に付く、精神的に強くなる
- 日勤がほとんどで、勤務時間が安定している
- 転職を考えたときに、手術室は有利になることがある
解剖学、清潔操作、挿管や急変の対応などが身に付く
手術室の基本は、やはり解剖学や看護技術などです。学校で学んだことを実践することで、解剖学や看護技術の実践的なことが習得でき、より理解が深まります。
看護師として精神的に強くなる
手術は一旦始まれば終了まで気を抜くことはできません。強い緊張感の中、常に手術に集中しなくてはならないため、自然と精神力が強くなります
日勤がほとんどで、勤務時間が安定している
手術中に輸血や病理検査、必要な医療機器、医療物品の緊急要請など何があってもすぐに対処ができるように、基本的に手術は昼間に行われます。また、術式を見れば予定手術時間がわかるので、勤務終了も予測しやすく、勤務時間が安定しているといえるでしょう。
手術室で働くデメリット
- 患者さんと直接関わることが少ない
- 夜間待機やオンコールで緊張を強いられ、ゆっくり休めないこともある
- 手荒れなど肌トラブルを起こしやすい
患者さんと直接関わることが少ない
手術室に入室する患者さんは、手術中は麻酔をかけ、麻酔が終了すると病棟に移動するため、患者さんと直接関わる時間は病棟勤務と比べると短くなります。病棟看護師のように、直接患者さんと向き合い、精神的や身体的ケアを行うことが好きな人には難しい職場かもしれません。
夜間待機やオンコールで緊張を強いられ、ゆっくり休めないこともある
夜間でも交通事故や疾患のために緊急の手術を行うこともありますので、病院によっては夜間待機、オンコールがあります。自分が担当の日には、いつ呼ばれるかと緊張で眠れずに朝を迎えてしまうことも…。
手荒れなどの肌トラブルを起こしやすい
手術時手洗い法の手指洗浄液と摩擦、滅菌手袋のパウダーにより手荒れの問題を抱える人も少なくありません。時には手荒れがひどく、器械出しの業務から外されてしまうこともあります。
メリット・デメリットは人により感じ方は様々ですが、手術室で働く看護師はどう感じているのでしょうか。実際に手術室の現場でお仕事をされている看護師さんに伺ってみました。
手術室看護師の体験談
Kさん(女性)30代
手術室は厳しい世界だと聞いていましたが、若いうちに一度は経験しておきたい分野だと思っていました。なぜなら、手術室で磨かれた知識や技術が今後の自分に役に立つと思っていたからです。実際に今は手術室を離れても、その時の経験が十分に活きています。
Tさん(女性)40代
手術室を経験したいと思ったのは、将来海外に行って医療活動とか災害活動など活躍をしたいと思ったからです。そのためには周手術期の知識や感染管理の知識が必要だと思い手術室を希望しました。その結果、青年海外協力隊に参加して途上国の医療に関わることができました。
Hさん(女性)40代
私は新卒で手術室に配属され、7年働きました。出産で一度は退職をしましたが、以前の手術室の経験を買われて、また手術室勤務に戻ってきています。まだ幼児の子育て中なので、時短勤務の優遇を受けており、子育てママでも働ける職場に感謝をしています。
それでは、ここまでの内容を踏まえ、手術室看護師にはどのような人が向いているのでしょうか。
手術室はどんな人に向いているか
- 手術看護認定看護師の資格の取得を目指したい人、または資格を持っている人
- 人体解剖学が好きな人
- 医療機器にも強い人、または抵抗がない人
- 肌トラブルの少ない人
手術看護認定看護師の資格の取得を目指したい人、または資格を持っている人
手術室看護師の中には、もっと技術力を磨き、自分のスキルアップを目指して手術看護認定看護師の資格を取りたいと考える看護師もいます。向上心の高い人、資格取得を目指す人には向いていますね。また、すでに資格を持っている人もその経験を活かして働くことができます。
人体解剖学が好きな人
手術中、医師の動きを見て何をしているか理解するためには、解剖学が非常に大切ですので、人体解剖学が好きな人には向いてると言えます。
医療機器に強い人、または抵抗がない人
手術中は麻酔科医や臨床工学士が手術に携わることが多いのですが、看護師も医療機器を取り扱うことが多くあるので、今までの経験で医療機器に関して知識がある人、医療機器に抵抗がなく学ぶ意欲がある人には向いているでしょう。
肌トラブルの少ない人
手荒れ自体が細菌繁殖の原因になることが多く、器械出しの業務に支障が出てくる場合があります。手洗いのために使用するイソジン、ヒビスクラブ、アルコールなどが肌が合わない人や、滅菌手袋にアレルギーを起こす人もいますので、スキンケアをしても肌荒れしやすい人には向いていないかもしれません。
では実際に、手術室看護師になるためには、どうしたらよいのでしょう。
手術室看護師になるための転職方法とは
手術室の求人は少なくありません。そしてどこの病院も、安全な手術が行えるように手術室看護師を育てようと必死です。
手術室看護師は、教育に時間がかかるため、多少ブランクがあっても即戦力になる手術室経験者を求める病院が多くあります。
しかし、これまで手術室看護師の経験がなくても、意欲とやる気があれば転職が可能です。また、手術室看護師は基本的に日勤なので、子育て中の看護師も復帰できる可能性があります。
またなんとなく不安に感じることも看護roo!やレバウェル看護などのキャリアアドバイザーに無料で相談してみてもいいでしょう。
おわりに
オペ室を経験し、看護技術、精神力を鍛えられれば怖いものなし
手術室看護師を経験すれば、どの科へ行っても働ける看護師になると思いますよ。
もちろん手術室は決して楽な世界ではありません。しかし一旦経験すれば、看護師としての能力が身に付くことはもちろん、奥が深く、将来役に立つ分野なのです。
手術室看護師に興味のある方は、ぜひ挑戦してみてくださいね。