看護師の資格や経験をベースにチャレンジが出来る保健師の資格は、看護師資格と同様に国家資格です。
生活習慣・食生活が大きく関わる生活習慣病や内臓脂肪型肥満などの疾患が社会問題となる中、保健師の活動は一層需要が高まりつつあるようです。
今回はそんな保健師の仕事や実際の求人について詳しく紹介しますよ。
目次
保健師の資格を取得するには
まず、保健師として就業するためには、国家資格である保健師国家資格が必要になります。
これは看護師国家資格と同様に、保健師の専門のカリキュラムが組まれた機関で所定の科目の履修と修了が必須であり、尚且つ国家試験に合格しなければなりません。
各機関により、入学の条件や期間は異なります。これまでは保健師・看護師双方のカリキュラムを取り入れている期間は看護大学だけでしたが、最近では、看護専門学校でも対応できる機関が増えてきました。
保健師の種類
保健師は大きく分けると、学校保健師、産業保健師、地域の保健師の3つの分野があります。
それぞれの仕事に違いはありますが、人々の健康増進という目標に向かうプロセスが重要になる点や、根本的な役割は”心身の健康のサポート”という点では共通しています。
では、それぞれの保健師の実際の仕事を見てみましょう。
1. 学校保健師の仕事
学校保健師の主な仕事は、学校の保健室の先生です。
生徒や教職員の健康管理を行い、病気や怪我の際にもとても頼られる仕事です。いわば、学校での医療のスペシャリスト!
健康診断を通しての健康教育をはじめ、校内の環境衛生検査(照度検査・水質検査・空気検査など)を行います。学校によっては保健教育や性教育の担当も任されているようです。
最近では、学校現場でも精神衛生の重要性が問われているため、生徒だけでなく教職員のメンタルケアまでこなす保健室の先生が増え、保健室が大きな役割を果たすようになってきました。
「保健室は居場所が良さそう」、「いつでも優しい保健室の先生」、「保健室の先生はとてもよく話を聞いてくれる」というイメージが強いかと思いますが、実は生徒や教職員の健康と安全のために、多くの責任を持って働いているのです。
2. 産業保健師の仕事
産業保健師は、企業にて従業員の健康増進・危険や健康障害の予防をはじめとして、主に従業員の健康管理を行う役割があります。
従業員の健康診断の際には、スケジュール調整やデータの管理を行います。
さらに、健康診断で得られたデータから、従業員の健康状態を把握し、健康指導・労働環境の安全性などを管理します。
最近では、従業員のメンタルヘルス対策を重要視する企業も増えてきており、保健師には身近な相談役として、従業員のメンタルヘルスを支援するという役割も求められています。
そのため各企業での産業保健師の役割は以前よりも大きくなっている傾向にあるようです。
3. 行政保健師(地域の保健師)の仕事
行政保健師は、地域住民の健康のために問題となっている健康障害への解決やサポート、生活環境の把握から様々な取り組みを各地域で行っています。
乳幼児から高齢者まで健康状態に関わらず、全ての地域住民が対象となります。
地域によって、環境や生活スタイルは異なりますので、その地域のニーズに合わせて保健師の活動内容も異なるようです。
業務の中でも、高齢化に伴う独居高齢者の健康状態の把握や、母子保健としての検診をはじめとした取り組みなどは、重要な保健師の役割となっています。
保健師のメリットとデメリット
保健師は看護師と比較されやすい仕事です。その点も踏まえながら、保健師のメリットとデメリットをみてみましょう。
保健師のメリット
- 平日勤務であり、週末休みとなるので規則正しい生活が期待できる
- ”健康”についての幅広い分野で知識の拡大が期待できる
- 行政の政策や社会資源に強くなる
- 対象が病人だけではない為、様々な視点からの対応が経験できる
- 産前産後休暇や育児休暇が取りやすく、夜勤もないことから女性は働きやすい
- 自分が中心となり健康活動の企画や実施が出来、その成果を目にすることができる
保健師のデメリット
- 病院で行われているような医療機器、医療ケアはほぼ無いといえる
- 看護師として学んだ知識や技術を発揮できる機会は激減する
- 医療行為が少ない為、物足りないと感じることが考えられる
- 夜勤(夜勤手当)が無いため、給料が看護師より下がることがある
- 幅広い年齢に対する、幅広い知識が必要である
- 指導的立場になるため、経験や教育不足を補うための向上心が常に必要である
- 対象者は多くの問題が複雑に絡んでいるため、家族や背後にある問題にも目を向ける必要がある(重い内容の相談を受ける場合もある)
保健師に向いている人
保健師の対象は病気を持った患者だけではなく、健康な人も対象となります。
幅広い分野での病気や健康増進についての知識も必要となります。
その中でも、最近は高齢化社会、核家族化に伴い、様々な場面で保健師のニーズは高まりつつあります。時に、精神的なサポート・相談役として大きな役割を求められることもあります。
そんな中で、保健師に向いているタイプは、幅広い分野の知識をもって対象者のニーズを正確に把握しサポートできる人と言えるでしょう。
また、保健師として健康活動の企画・実施などもあるので、
- 健康指導や健康管理に興味・関心がある人
- 資料の作成などが好きな人
- 人に教えることが好きな人
にも向いていると言えます。
保健師の求人について
ここまでお話してきたとおり、近年、保健師の需要が高まり以前より保健師の求人が増えています。
最近では医療機関、介護施設、地域包括支援センターなどで、健康診断・相談業務・介護予防ケアプラン作成などの業務を行う保健師の求人もあります。
保健師の求人を探す際には、直接問合わせするという方法もありますが、求人によっては地域や条件を絞って簡単に検索ができる転職サイトの利用が便利です。
サイト内では、地域、交通手段、給料、休日、有資格などの細かい検索条件の設定もできて、希望にあった求人を短時間で探すことが可能です。
とはいえ、実際に保健師として働ける求人は病院勤務などの看護師求人に比べて少ないように感じます。
求人サイトで”保健師”の求人を検索して何件かヒットしたとしても、よくよく業務内容をみると「これは保健師としての仕事ができる求人なのか?」と疑問に感じる求人も出てきます。
気になる求人があったら、保健師としてどんな業務を担当するのか、求人サイトの担当者に問い合わせて仕事内容をよく確認する必要があるかもしれません。
では、さいごに実際の保健師の求人例をみていきましょう!
1. 学校保健師の求人例
大学内の保健管理室での保健師業務
こちらは、MCナースネットの情報です(2015年8月)。学校内で学生・教職員を対象にした保健業務ですが、未経験者も募集しており新たな分野での経験を積めるチャンスです。
2. 産業保健師の求人例
以下の2件は看護師転職サイトナースフルからの情報です(2015年8月)。詳細検索画面で、資格の”保健師”にチェックを入れて検索が可能です。
茨城県内:企業内・産業保健師
こちらには載っていませんが、企業内において産業医と共に活動が展開されています。医薬品に関する会社であることから実験中のアクシデントなどにも対応する知識や技術が必要とされますが、同時に多くのことを学べ、やりがいは大きいでしょう。
千葉県内:企業内・産業保健師
ここには載っていないのですが、業務内容として、従業員に対する保健師指導と行政や企業が行う健康診断での保健師指導と書いてありました。
従業員に対する保健師指導は、数名の栄養士と共に行っていくようです。今後の業務内容として社員のメンタルヘルスのサポートも検討しているようです。
3. その他の保健師の求人例
以下の2件は看護rooでの求人情報です(2015年8月)。
都内:医療機関付属の検診センターでの保健師業務
健診に来られる方への健康指導をはじめ、健診での医療行為などのサポートが求められています。看護師としての経験が十分に生かせる魅力的な勤務内容です。
多くの医療施設を展開している機関での保健師業務
保健師と看護師の業務を区別し、保健指導を中心に業務が確立されています。
また、各専門スタッフと連携し、チームとして保健師の能力が求められていることから、その役割が大きいことが見受けられます。やりがいがありそうですね。
なお、看護rooでは、条件の職種を”保健師”にして検索することができます。ヒットした求人情報は医療機関で検診業務を担当する保健師の求人が多かったです。医療機関で健康指導などの業務を行う保健師は、勤務体制や福利厚生が充実しているようです。
おわりに
保健師の求人自体はまだ少なく、狭き門ではありますが、看護師の延長線・更なるスキルアップを求めている方にはお勧めできる資格です。看護師としての実務経験がある保健師はとても重宝されます。興味のある方はぜひ挑戦してみてくださいね!
次回は、保健師の更なるスキルアップとしての養護教諭の資格についても触れますので、お楽しみに!