ここ数年、”企業で働く看護師“である企業看護師の求人数も増えており、応募する側からの人気も非常に高いといわれています。
理由はいろいろですが、
- 給与が比較的高くなること
- 夜勤が非常に少ないこと
- 仕事の幅も広がりつつあること
などが主な理由として挙げられます。
今回はそんな“企業看護師”について、どんな職種があり、それぞれどんな仕事なのか、必要なスキルとは何なのか、ご紹介します!
企業看護師にはどんな職種があるのか?
企業看護師には、さまざまな職種があります。
今回はこの6つの企業看護師の仕事について紹介します。
これらの企業看護師の仕事に共通しているのは、病棟勤務とは異なり、
- 患者さんと接する機会が少ない
- 夜勤がなく、休日をしっかりとれる
- 病院以外の人間関係が築け、人生観がひろがる
という点です。
このような理由から、企業看護師はここ数年、看護師の間でとても人気がある職種となっています。
※ 参照: 看護師求人の中で人気の企業看護師、実際の求人情報とその魅力
それでは、ここからは企業看護師のそれぞれの職種について詳しく見ていきましょう。
1. 企業内の健康管理室の看護師
企業看護師の中でもよく知られているのは、企業内の保健室や医務室のような場所に勤務する看護師です。
“産業保健師”という呼び方も聞いたことがあるかと思いますが、基本的な仕事の内容はほぼ似ています。
主な仕事内容 その1: 従業員への対応
企業内の健康管理室の看護師の具体的な仕事の内容としては、勤務中に気分が悪くなってしまったり、怪我をしてしまったりした従業員への対応があります。
主な仕事内容 その2: 健康診断の補助や保健指導
また、企業であれば年に1回の健康診断がありますので、これらの結果を元に従業員に対する保健指導を行ったり、企業全体での健康維持なども業務内容に入ります。
主な仕事内容 その3: メンタルケア
厚生労働省など国の方針もあり、最近では特に“企業内でのメンタルケア”に力を入れているところも増えています。
こういった知識があるかどうかで、採用されるかどうか、あるいは採用後に任される仕事の内容にも違いが出てきますので、参考にしてみてください。
※参考:厚生労働省 こころの耳(http://kokoro.mhlw.go.jp/)
企業内の健康管理室の看護師に必要なスキルは?
ここ数年の企業内の健康管理室の看護師の求人情報をみると、エクセル、ワード、パワーポイントといった、パソコンソフトを使用できることが当たり前の条件になってきています。
数百人から数千人の従業員のデータを管理するには、これらのPCスキルが必須ということです。
その他には、地方都市にある大きな工場などの場合、日本人以外の従業員も数多く在籍していることもありますので、外国語の会話スキル(基本は英会話)があれば、尚良しですね。
2. 治験コーディネーター(CRC)
もう1つ、企業看護師として人気が高い職業が、治験コーディネーター(Clinical Research Coordinater:CRC)です。
CRCの仕事を一言でいえば「治験に参加される患者(被験者)の人権を守り、治験を円滑にすすめるための治験協力者として、治験をサポートする」ことです。
主な仕事内容 その1: 診察や検査の内容を患者に説明
通常、医師は一般診療の中で治験をすすめますので、被験者への説明などにあまり時間をとれません。そのため、診察の後でじっくりと被験者との時間をとりながら、薬・治療・検査の説明をし、被験者の話に耳を傾け、納得されるまで話をすることが必要です。
CRCは、医師の診察に立ち会い、被験者である患者に伝わりやすい言葉でその内容を説明します。
主な仕事内容 その2: 治験のデータ管理
1回の治験の間に、1人の被験者(患者)から収集するデータは膨大です。それらのデータを症例報告書へ転記するという作業も、CRCの仕事の1つになります。
主な仕事内容 その3: 患者のスケジュール管理
被験者(患者)は、予め決められたおおよそのスケジュールに従って、診察・検査・投薬治療などを受けて頂く必要があります。これらのスケジュール管理も治験コーディネーター(CRC)が行います。
治験コーディネーター(CRC)に必要なスキルは?
もっとも重要なスキルは、コミュニケーション能力といえます。
医師やCRAだけではなく、被験者(患者)とも十分なコミュニケーションを取る必要がありますし、被験者(患者)さんからみて”相談しやすい人”であることがポイントになります。
あとは、やはりPCスキルです。膨大なデータはパソコンで管理していますので、ある程度のスキルは必要です。
3. 臨床開発モニター(CRA)
臨床開発モニター(Clinivcal Research Associate:CRA)も、治験に関するお仕事です。分かりやすくいえば1つの治験を円滑に行うことが仕事です。実際に就職する先は、製薬会社などになります。
被験者である患者さんと直接関わることは、CRCよりは少なくなり、医師とのコミュニケーションがメインとなります。
主な仕事内容 その1: 治験の進行状況の監視・調査(モニタリング)
CRCとの大きな違いは、“治験全体を管理すること”です。
1つの治験には、複数の医療機関が参加することもありますので、必要があればそれらを全体的に管理することもあります。
主な仕事内容 その2: 医師から症例報告書(CRF)の回収・チェック
CRCは複数の被験者を受け持ち、検査データ・カルテ・医師の記録などから、症例報告書(CRF)への必要事項の転記を行いますが、CRAは症例報告書(CRF)をまとめて回収し、データに不備はないか、正しく記載されているかなどをチェックします。
主な仕事内容 その3: 治験が適切に行われているかを評価
CRAは、治験全体を管理・評価しますので、より中立的・第三者的な立場になります。必要な数の症例報告書が集まり、データの不備がなければ、治験は終了となります。
臨床開発モニター(CRA)に必要なスキルは?
CRC同様、高いコミュニケーション能力、PCスキルは必須です。
さらにあげるならば、リーダーシップがとれるかどうか、仕事に対して責任感を持って臨めるか、というあたりも必要になるでしょう。
4. 品質管理者(QC)
CRAとCRCの他に、もう1つ、治験にも関連する仕事として、品質管理者(QC)があります。
QCは治験とは何かを経験してから、さらにその品質を高めるにはどうすれば良いか?といった考え方が必要な職業といえるでしょう。
(ここでは”新薬を開発する”という分野を例にして、主な仕事内容を紹介します)
主な仕事内容 その1:薬の品質維持と向上
その薬の効果を確認するには、どのようなデータが必要なのか、どのような被験者が必要なのか、どのような形で治験を行えば正確なデータが集まるのか、こういった”新薬が世に出るまで”の一連の方法を把握している必要があります。
さらに、どのような効果が期待されるのか、本当に今の日本に必要なのか、など薬について常に考え続けている必要があります。
主な仕事内容 その2:CRAとCRCを監督
1つの新薬の治験だけをみても、とても多くの人たちが関わります。その人たちから、どうやってより高品質なデータを集めるか、集めたデータをどう管理すればより安全かを考えて行動します。
そのため、治験に関わっているCRA、CRCが決められた仕事をしっかり行っているか、治験の進行に問題はないか、などQCが監督します。
主な仕事内容 その3:治験全体を評価・検証
治験はそもそも、綿密な計画の元で行われます。必要な被験者が集まるか、この治験に対してこの被験者は条件を満たしているか、なども重要な確認ポイントです。
場合によっては、CRAやCRCに対し、指示や命令をすることもありますので、煙たがられることもあるでしょう。
品質管理者(QC)に必要なスキルは?
CRCやCRAと同様、コミュニケーション能力やPCスキルは必須です。さらに、新薬開発のためには、海外の論文を読むこともありますので、英語力も必須といえます。
また、治験で集めたデータを分析するために、統計学や化学・薬学などの知識も必要です。
QCは、責任感が強く、精神的にも強く、高い志を持った人が適切かもしれません。ただし、CRCもCRAも未経験の人が、QCとして採用されることは、ほとんどありません。こういった背景もあるためか、お給料はCRAよりもさらに高めです。
5. クリニカルコーディネーター
クリニカルコーディネーターはフィールドナース、クリニカルサポートスペシャリストなど様々な呼び方があるようですが、これらに明確な定義(法的なしばり)はありません。
強いて言うならば、
- クリニカルコーディネーター(フィールドナース)…医療現場への啓蒙
医師や看護師などの医療者と、患者さんの間に立って、専門的な情報の提供を行い、治療や診断がより効果的に行えるようにサポートする - クリニカルサポートスペシャリスト…メーカー社内への啓蒙
医療機器メーカーなどの営業担当者に対し、より専門的な情報を提供し、営業戦略を立て、時には営業への教育も行う
という感じでしょうか。
これら2つは分野も違いますし、業務の内容も違いますが、最終的な目標としては、患者にとってより良い医療を提供することには変わりはありません。
それでは、クリニカルコーディネーターの具体的な仕事の内容を考えてみましょう。
主な仕事内容 その1:治療や医療機器に関する最新情報を収集
クリニカルコーディネーターは、治療法なり医療機器なりが、どうして開発されたのか、なぜ患者さんに効果があるといえるのか、日本だけではなく、広く海外からも情報を収集することもあります。このように常に最新知識を収集するのも仕事の1つです。
主な仕事内容 その2:正確な情報伝達
クリニカルコーディネーターは、”患者さんや医師へ伝える”ことと、”社内の人に伝える”ことの、2つの側面があります。
伝える相手によって”伝え方”も変わってきますが、どのような資料があれば良いか、どのような形で説明すれば良いか、これを考えるのも仕事の1つです。
主な仕事内容 その3:資料作成
読む相手に合わせ、必要な資料を作成します。
ただし、同じ内容を伝えるにしても、相手が医師なのか、患者さんなのか、MRさんなのか、読み手の理解度などによってもその難易度が変わります。その立場の人に合った資料を作成するのも、仕事の1つです。
クリニカルコーディネーターに必要なスキルは?
多くの人と接するので、コミュニケーション能力は必須。
それから、例えば日本で開発されたもの以外は英語のマニュアルからスタートすることもありますし、医学雑誌は基本的に英語、学会でも英語が多用されます(海外の学会に行くなら必須)ので、英語力が強い武器になるでしょう。
さらに、PCスキルや、英語力、さらには”読み手のレベルに合わせた言葉を使う”という日本語力、プレゼンテーション能力も必要です。
その代り、基本的に給与は高め。自分のスキルに自信があるなら、ぜひチャレンジして頂きたい職業です。
6. ツアーナース・イベントナース
ツアーナースは、文字通り旅行=ツアーに関係する仕事です。分かりやすくいえば、団体旅行などに添乗し、旅行者の健康管理を行います。
修学旅行や企業の宿泊研修、地方で開催される自然教室に関連するイベントなどが含まれます。行き先としては、国内だけではなく、国外もあります。
また、最近ではスポーツの大きな試合とか、コンサートやライブ、フェスなどの大きなイベント会場にも、看護師が待機していることがあります。これらもツアーナースの仕事の1つです。この場合は”イベントナース”とも呼ばれることがあります。
主な仕事内容 その1:急病者への対応
仕事の内容としては、体調不良やケガなど急病者への対応があります。
場面にもよりますが、屋外なのか屋内なのか、旅行中なのか大きな会場につくのか、その時々で”急病”や”ケガ”の状況も違いますので、その時にあった適切な対応が求められます。
主な仕事内容 その2:参加者の常備薬や病歴などを把握
たとえば、不特定多数の人を相手にする”イベント会場”などでは難しいのですが、旅行に添乗するような場合は、参加者の常備薬や病歴などを把握して予測的な行動をすることもあります。
主な仕事内容 その3:楽しい思い出作りに協力する
必要に応じて、例えば就学旅行なら、先生たちとの打ち合わせもありますし、子どもたちとのコミュニケーションを取ることもあります。
ツアーナースもイベントナースも、要は楽しい思い出作りに協力する!ことなので、何か起きてから行動するのではなく、何が起きそうかを予測して行動することが必要になってきます。
ツアーナース・イベントナースに必要なスキルは?
緊急時にどう対応するかが求められます。例えば応急処置の知識も必要ですし、薬のことも広く知っておく必要があります。
イベントの内容にもよりますが、幅広い年齢層の人を対象とすることも多いので、高いコミュニケーション能力も必要ですし、高齢者や小児の特性も知っておいた方が良いでしょう。
海外に行くことがあるなら、英語などの語学力は必須。日常会話だけではなく、医療用語も含めた会話ができることが望まれます。
おわりに
企業看護師の仕事はバラエティに富んでいる!
いかがでしたでしょうか。
企業看護師と一言でいっても、その仕事の内容は、より専門性の高いものから、新薬などの開発に関わるものなど、かなりバラエティに富んでいます。
どんな仕事をしたいか、自分にはどんな仕事が向いているか、まずは一度、じっくりと考えてみてはいかがでしょうか。