救急外来や夜間外来などは、さまざまな患者さんが一気に押し寄せてきます。
ふつう、診察は来院順に行いますが、なかには一刻の猶予もない危険な患者さんが潜んでいることがあり、早急に発見し対応しなければ生命の危機に直結します。
今回は、緊急性のある患者さんをいち早く発見し、診療の優先度を判断する院内トリアージナースについてご紹介します!
院内トリアージについて
前回も紹介しましたが『院内トリアージ』とは、救急外来に同時に来院した複数の患者さんに対して緊急性を判断し、診療の優先度を決定するシステムのことを言います。
つまり、今すぐ処置が必要な患者さんが最優先となり、たとえ一番早くに受付しても症状の軽い患者さんは後回しになるということですね。
この院内トリアージを実施するのが、院内トリアージナースです。
ちなみに、緊急度の判断にはJTAS(日本版緊急度判定支援システム)というツールを用いて客観的に判断します。
※詳しくは前回の記事「院内トリアージってなに?」を参照
院内トリアージナースの役割とは
トリアージエリア、もしくはポストと呼ばれる場所で、救急外来および夜間外来に来院したすべての患者さんに問診をとります。このとき、JTASのアプリやワークシートを用いて、症状やバイタルサインから緊急度を判定します。
緊急性が高いと判断した患者への対応
緊急性が高いと判断した患者さんは、すぐに処置室へ搬送し、処置室ナースへ引き継ぎます。このとき院内トリアージナースはトリアージのみに専念し、基本的にトリアージエリアを離れてはいけません。(離れている間に重症な患者さんが来るかもしれませんからね)
緊急性の低い患者さんへの対応
緊急性の低い患者さんに対しては、症状により適切な待機場所へ案内します。
しかし、緊急性が低いと判断した患者さんでも、時間経過とともに症状が変化することがあるので、待機中の患者さんも常に観察する必要があります。
このように、トリアージナースはJTASを熟知していることはもちろん、高い観察力と迅速な判断力を求められます。
院内トリアージナースになるには?
実は、院内トリアージを実施するための必須資格はありません。しかし上記のように求められるスキルが高いので、日本救急看護学会が開催している「トリアージナース育成研修会」への参加をおすすめします。
トリアージナース育成研修会について
研修参加要件
- 救急看護経験 3年以上
- 原則として救急外来で勤務している者またはその予定が確定している者
- BLS、ACLS、ファーストエイドなどの救命講習を受講していることが望ましい
- 事前テスト(フィジカルアセスメントWeb試験)で合格点をとること
コース内容詳細
- コースは二日間で、講義と実技がある。実際にJTASアプリを用いて、患者さんの緊急度判定をシュミレーションする。
- 筆記試験で80%以上の正答率でトリアージナース育成研修会の修了証が発行される。
- 院内トリアージナースとして認定登録を受けるには、日本救急看護学会の会員であることが必要である。育成研修会の参加は非会員でも可能だが、認定を目指すなら事前に日本救急看護学会への入会をしておくこと。
- コース修了後3ヶ月以内にトリアージの実績報告書を提出する必要がある。
これらの条件を満たして、はじめて院内トリアージナースとして登録されます。なかなか大変な道のりですね…
受講費用
受講費用は合計で43,500円くらいかかります。
内訳は以下の通りです。
- フィジカルアセスメントWeb試験: 5,000円
- テキスト代(インターネット等で事前に購入可能): 7,500円
看護師のための院内トリアージテキスト: 4,500円(税別)
緊急度判定システムJTAS2012ガイドブック: 3,000円(税別) - トリアージナース育成研修会参加費(会員の場合): 20,000円
※ 非会員の場合は32,000円 - 日本救急看護学会 : 11,000円
入会費: 10,00円
年会費: 10,000円
院内トリアージナースになる前に
確認しておくべき3つのポイント
- お勤めの病院が院内トリアージシステムを導入もしくは導入予定があるかを確認する
- 病院の救急体制の違いを確認する
院内トリアージナースの役割や業務量はかなり差が出ますので、これから院内トリアージナースを目指したいという方は、まず病院の体制を確認する必要があります。 - 資格手当・技能給について確認する
院内トリアージナースは正直なところ、救急看護認定看護師ほどの手当は見込めません。というより、いわゆる「資格手当」として扱われないケースが多いようです。
技能給としてプラスしてもらえる病院もあるようです。
詳しくは直接お勤めの病院に尋ねるか、これから救急病院へ転職を検討中の方はコンサルタントに相談してみましょう。
院内トリアージを行う上で大切なこと
診療の順番を決定することは、患者さんの生命に直結する可能性がある重大な業務です。
もちろん、トリアージの最終責任者は医師ですが、担当するナースも相当なプレッシャーと戦いながらトリアージに臨むことになるでしょう。時には「なんで順番が抜かされるんだ!」と患者さんからの罵声を浴びることも…
しかし、院内トリアージは決して一人でやるものではありません。
患者さんから順番についてクレームがあったら、受付事務も対応できるようにしておく、トリアージの判断に迷ったら、医師がバックアップする体制を整えておくなど、病院全体が院内トリアージの重要性を理解し、役割を分担して行う事が大切です。
おわりに
院内トリアージを学ぶことは、急変のサインをいち早く察知し具体的行動に移るという、まさに救急看護の肝を学ぶということにつながります。
院内トリアージの実施については、まだまだ病院側も課題が多いのが現状ですが、この学びは決して無駄にはならず、今後さらに院内トリアージナースの需要は高まっていくと思います。
ぜひチャレンジしてみてください!