目次
目的
- 白内障患者に適切な看護を行う
疾患の概要
- 加齢などにより、水晶体の混濁が生じることで光の通り道に濁りが起き、様々な視力障害を生じる疾患であり、基本的に自然回復が見られないのが特徴である
- 明るい場所よりも、暗い場所の方が見えやすくなる場合もある
- 水晶体核が硬くなるために水晶体乱視が起こり、片方の眼において複視の症状がある、あるいは近視が進行する場合もある
- 水晶体混濁の程度や部位によっては自覚症状が全くない場合もあるため、機能障害が自覚的に見られた場合のみ、白内障治療の対象となる
- 白内障の診断の際には矯正視力を測定した後、散瞳を施行し、細隙灯顕微鏡検査にて水晶体混濁の有無を確認する
- 白内障の進行が著明で、眼底観察不可能な場合は、網膜電位図や超音波断層検査などにより、眼内異常の有無を確認する
治療
- 白内障の治療は、手術治療を行い、混濁が起こっている水晶体を除去し、眼内レンズなどの挿入により視力矯正を図る
PEA(超音波水晶体乳化吸引術)
- 水晶体摘出の大半が、この術式で施行される
- 約3mm程の切開創からの破砕装置(超音波など)を使用して水晶体核を破砕後、吸引除去する方法である
- 侵襲が少ないため、手術後の乱視も小さく、視力回復が早い
- 多くの場合、眼内レンズの挿入を行う
ECCE(水晶体嚢外摘出術)
- かなり水晶体核硬化が進行した白内障や、難症の例では水晶体核の破砕除去が不可能な場合がある
- この場合、大きく切開創を作り、核を破砕は行わずに丸ごと切開創から摘出する
- 核を丸ごと摘出後に、皮質除去を行い、眼内レンズを挿入する(ECCE+IOL)
- 乳化吸引術と比較した場合、術後の乱視は大きくなる
ICCE(水晶体嚢内摘出術)
- 水晶体嚢を支えるチン小帯や水晶体嚢自体に異常がある場合、さらに大きな切開創を創り、そこから水晶体を嚢ごと摘出する方法であるが極めて稀な方法である
- PEAやECCEの場合、残存している水晶体嚢内に眼内レンズを入れて固定を行うが、ICCEの場合は眼内レンズの固定する所がないため、状況に応じて毛様体扁平部の眼球壁に眼内レンズを直接縫い付けて固定を行う
眼内レンズ
- 基本的に折り曲げ可能なシリコンやソフトアクリル素材のものが用いられ、これらは術後の早期視力回復に役立っているが近年では、乱視矯正用のトーリック眼内レンズや二重焦点眼内レンズも使用されている
- 白内障手術の場合、基本的に眼内レンズの挿入も施行されるが、挿入が不可能な場合は、コンタクトレンズによる矯正や前述した眼内レンズの縫着が必要になることがある
- 視力に影響する疾患が白内障以外にない場合は矯正視力は1.0程度まで回復が望めるが、眼内レンズそのものには調節機能がないため、基本的に術後には眼鏡の装用が必要になる
合併症
- 比較的安全な手術だが、以下のような合併症をきたすことがある
- 細菌性眼内炎
- 創部から眼内に細菌が侵入し、炎症を起こす
- 抗生物質の投与で反応が見られない場合は手術が必要である
- 術後早期に感染症が起こると、細菌の力が強いため、失明の危険性がある
- 急性脈絡膜出血
- 術中に脈絡膜から大出血が起こった場合、傷口から眼球内の内容物が全て飛び出し、失明することがあり、重症の場合は眼球を摘出する
- その他
- 網膜剥離、眼圧上昇(緑内障)、黄斑浮腫、角膜混濁などの合併症があり、再手術などが必要となる場合もある
- 術後に、かなりの高率で後発白内障が起こる場合があるが、YAGレーザーの使用によって処置が可能であり、良好な視力を回復ができる
- 細菌性眼内炎
観察項目
- 視力低下の有無と程度
- 霧視、羞明の有無
アセスメント
原因による分類
- 老人性白内障:老化によって起こる
- ステロイド白内障: 副腎皮質ステロイド薬の長期投与によって起こる合併症であり、後嚢下白内障として発症することが多い ]
- 糖尿病白内障:糖尿病合併症
- 外傷性白内障: 穿孔性外傷によって水晶体嚢が破裂し、急速に水晶体混濁が進行する
- 放射性白内障:眼部への放射線照射に伴う合併症
- 先天白内障:水晶体の異常発生
- 併発白内障:網膜剥離やぶどう膜炎、アトピー性皮膚炎に併発する
混濁部位による分類
- 皮質白内障:加齢変化では最も多い種類であり、皮質(水晶体嚢と核の間の部分)が混濁している
- 前嚢白内障:水晶体前側の中心が混濁し、線維化を伴うことも多い
- 後嚢下白内障:びまん性に水晶体嚢後面の内側が混濁する
- 核性白内障:核(水晶体の中心部)が硬く濁り、進行するにつれ、核は白~黄色、その後は茶褐色に変わる
注意点
- 白内障は、両眼性に進行する場合が多いので、視力低下に伴う事故を防止するため安全対策を講じる
- 散瞳を行う際、散瞳薬の種類や散瞳側の眼、散瞳後の症状には十分な注意し、散瞳後の症状に関する説明を行うことが必要である
- 散瞳後は、眼底検査などの検査を施行し、水晶体以外光路を妨げる疾患や、視神経や網膜などに視力低下の原因となる疾患の有無を確認する