虚血性心疾患患者の治療とケア
虚血性心疾患患者の治療とケア【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年8月18日
最終更新日:2018年11月25日
(変更日:2019年10月28日) ※
目的
疾患の概要
- 冠動脈は心臓の栄養血管であり、大動脈起始部から分岐する右冠動脈(RCA)と左冠動脈(LCA)がある
- 何らかの原因によって冠動脈が狭窄・閉塞した場合、心筋に必要な血液を送ることが困難となり、心筋が虚血状態になり、虚血性心疾患と呼ぶ
- 狭窄・閉塞の原因の大部分は、動脈硬化(粥状硬化)によって起こり、他の原因として 冠動脈塞栓症、冠動脈の攣縮、動脈炎(川崎病など)が挙げられる
虚血性心疾患の分類
- 狭窄・閉塞機序から、労作性狭心症、異型狭心症、不安定狭心症、急性心筋梗塞に分けられる
慢性冠動脈疾患
- 労作性狭心症
- 病態:冠動脈の一過性の閉塞または狭窄から一過性の心筋虚血に至る
- 機序と分類:動脈硬化(アテローム)による器質的狭窄
- 発作発現様式での分類:労作時に起こる(労作性狭心症)
- 臨床経過:発作の発現様式:症状が3週間以上同じ(安定狭心症)
- 緊急度:低い
- 胸痛発作:労作時に前胸部絞扼感・圧迫感が出現する
- 持続時間:3~5分程度持続するが、安静により寛解
- 硝酸薬効果:著明な効果が認められる
- 心筋傷害マーカー:上昇なし
- 心電図時のST変化(発作時):ST下降
- 異型(冠攣縮性)狭心症
- 病態:冠動脈の一過性の閉塞または狭窄から一過性の心筋虚血に至る
- 機序と分類:冠動脈の攣縮による一過性の狭窄から完全閉塞に至る
- 発作発現様式での分類:安静時にも起こる(安静時狭心症)
- 臨床経過:発作の発現様式・症状が3週間以上同じ(安定狭心症)
- 緊急度:やや低い
- 胸痛発作:安静時、または夜間~早朝にかけて前胸部痛が出現
- 持続時間:数分~約15分
- 硝酸薬効果:著明な効果が認められる
- 心筋傷害マーカー:上昇なし
- 心電図時のST変化(発作時):ST上昇
急性冠症候群(ACS)
- 不安定狭心症
- 病態:冠動脈の一過性の閉塞または狭窄から一過性の心筋虚血に至る
- 機序と分類:血栓の形成による狭窄
- 発作発現様式での分類:安静時にも起こる(安静時狭心症)
- 臨床経過:症状・発作に変化がある
- 緊急度:やや高い
- 胸痛発作:安静時にも出現、最近3週間以内に新たに出現する、あるいは徐々に増悪
- 持続時間:数分~20分程度
- 硝酸薬効果:基本的には有効(無効の場合はハイリスクを伴う)
- 心筋傷害マーカー:硝酸薬効果が無効の場合、心筋トロボニンTが上昇
- 心電図時のST変化(発作時):ST下降(非ST上昇性ACS)
- 急性心筋梗塞
- 病態:冠動脈の閉塞により心筋壊死が起こる
- 機序と分類:血栓の形成により完全閉塞
- 緊急度:高い
- 胸痛発作:強烈な胸部痛
- 硝酸薬効果:無効
- 心筋傷害マーカー:上昇(心筋トロボニンT、CK、CK-MBなど)
- 心電図時のST変化(発作時):ST上昇(ST上昇性ACS)
検査
冠動脈造影
- 大動脈のバルサルバ洞に冠動脈造影用のカテーテルを進め、右冠動脈(RCA)と左冠動脈(LCA)の各入口部にカテーテルを挿入し、造影剤を注入して血管内腔を描出する検査である
- 血栓像、冠動脈の狭窄・閉塞の他、解離潰瘍形成や動脈瘤などの観察も可能
心臓核医学検査
- 体内に放射性同位元素を含む製剤を投与し、その分布の様子を撮影し、画像化するものである
- 心筋バイアビリテイや心筋虚血の評価が行えるため、虚血性心疾患の診断に適している
心筋血流シンチグラフィー
- 心筋血流量の可視化が可能な検査であり、運動あるいは薬剤負荷を加えて意図的に虚血状態を引き起こす負荷試験も行われる
- 労作性狭心症の診断には欠かせない検査である
心臓核医学検査
- 放射線同位元素を含む製剤を体内に投与し、その分布する様子(体内動態)を特殊なカメラで撮影する
- 心筋虚血の状態や心筋バイアビリティ(心筋が生きているかどうか)の評価が行える
治療
- 狭心症の場合、主として抗狭心症薬を中心とした薬物療法を行う
- 経過を見ながらCABG(冠動脈バイパス術)やPCI(冠動脈形成術)を考慮するが、特に高リスクの不安定狭心症の場合は積極的に検討する
- 急性心筋梗塞の場合、初期治療(アスピリン、硝酸薬、塩酸モルヒネ、酸素投与)開始から早急に再灌流療法を行うことが必要であり、再灌流後は再発防止のために薬物療法を継続することが多い
血栓溶解療法
- 急性心筋梗塞における再灌流療法の1つであり、形成された血栓を溶解する方法
- 急性心筋梗塞発症後12時間以内に投与することが望ましい
- 基本的に狭心症がある場合には行わない
- 早急にPCIを施行することが困難な場合に行われることが多い
経皮的冠動脈インターベーション(PCI)
- 虚血性心疾患に対し、狭窄部位にカテーテルを通し、ステントなどのデバイスを使用して、血管内腔を拡大し、血管形成術または再灌流させる治療法を総称してPCIという
- 急性心筋梗塞に対しては再灌流療法の中で最も多く行われている治療法であり、第一選択となっている
バルーン血管形成術(POBA)
- PCIの中で一番古く用いられている方法だが、再狭窄率が高いため、現在は単独で施行することはほとんどない
粥腫切除術(アテレクトミー)
- アテロームを削り取ることで、血管内腔を拡大する方法である
ベアメダルステント(BMS)
- DCA単独や、POBAと比較すると再狭窄率は低いが、ステントの周りに増生・新生する内膜組織が原因による再狭窄が約30%の確率で生じる
薬剤溶出性ステント(DES)
- 薬剤が長期的に溶出する金属ステントを使用したものであり、現在のPCIの主流となっている
- ステント留置による血栓形成傾向があるため、ステント留置後は抗血小板薬の投与が行われる
冠動脈バイパス術(CABG)
- 大動脈と冠動脈の狭窄部よりも末梢をバイパスでつなぎ、冠動脈の末梢の血流を維持する術式である
- バイパスには、内経動脈・右胃大網動脈・大伏在静脈などが使用されることが多い
- 適応は、左冠動脈主幹病変(50%以上の狭窄)・冠動脈末梢枝の血流が良好・PCI施行困難例・左心機能がある程度維持されている(駆出率20%以上、左室拡張終期圧20mmHg 以下)場合
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