カテーテルなどによる褥瘡の予防

カテーテルなどによる褥瘡の予防【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年8月2日
最終更新日:2018年06月10日
(変更日:2013年10月16日) ※

目的

  • カテーテルなどによる褥瘡(医療機器関連圧迫創)の予防を行う

概要

カテーテルラインなどによる褥瘡

原因

  • 動脈ライン・末梢ラインあるいは中心静脈カテーテルの固定部に加わるある程度の圧力や、体動による摩擦やコネクタなどの接続部に負荷がかかることによって生じる
  • 動脈ラインの場合、固定期間が長期に渡ることも原因の1つとなる
  • 特に中心静脈カテーテルの部分は縫合してあるため、裏の部分の皮膚観察が困難であり、発見が遅れやすい
  • また、発汗によって皮膚が脆弱になりやすいことや部位の変更ができないことなども要因として挙げられる
  • 中心静脈留置ポートの場合、皮膚との間に挟んでいるガーゼや針に付属している固定具が圧迫の原因となることがある

創部の特徴

  • 圧迫されている部分に、コネクタなどの形状の創が生じる
  • 創の形態として、発赤、びらん、紫斑、水疱などが認められる

酸素マスクによる褥瘡

原因

  • 耳・鼻部の持続的な過度の圧迫 特に耳の部分は、装着の際、マスクを密着する必要があるため、ひもやゴムをきつくしてしまう場合があり、薄い皮膚の同一部分にひもやゴムが圧迫されたり、摩擦が起きる場合がある

創部の特徴

  • 好発部位は、鼻根・鼻背部と耳の付け根である
  • 創部は、持続的圧迫に伴い炎症反応も強く、壊死組織が付着することが多い

DVT予防用品(弾性ストッキング、フットポンプ)による褥瘡

原因

  • 閉塞性動脈硬化症や糖尿病の合併、骨盤外傷などにより、神経障害や末梢循環不全などがある場合は、これらの機器や器具による圧迫潰瘍を生じやすくなる

創部の特徴

  • 弾性ストッキングの場合、骨の突出している部分やストッキングの皺ができやすい部分に多くみられる
  • 骨の突出部分(特に腓骨)、スリーブの辺縁部分に好発しやすい
  • 皮膚障害そのものは、水疱や発赤にとどまることが多いものの、発見が遅れるなどの場合、潰瘍、壊死に至る場合もある

NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)による褥瘡

原因

  • 外からの力がかかることにより微小血管の閉塞が起こり、組織が虚血壊死となり、潰瘍が生じ、呼吸性の持続圧迫や解除を幾度も繰り返すことによって、微小循環や組織の障害が大きくなる
  • 外的要因
    • マスクによる局所(皮膚接触面)の圧迫
    • 呼吸性の持続圧迫によるずれや摩擦
疼痛や圧迫に伴う苦痛からマスクをずらすことにより、逆にずれや摩擦を助長させる
    • 発汗・加湿による皮膚の湿潤によって起こる皮膚の浸軟
  • 内的要因
    • 組織酸素飽和度の低下や、呼吸不全・心不全による組織浮腫による組織耐久性の低下
    • 低栄養による皮膚の脆弱化、浮腫、皮膚組織循環の低下

創部の特徴

  • 前額部、頬部、鼻中隔周囲、鼻骨根部に発生しやすく、特に鼻根部の場合、皮下組織が少ないため僅かな圧迫でも虚血状態になりやすい
  • 鼻根部に生じる創の形は、骨突起部と一致してほぼ正円形となり、額部に生じる創の形は、固定具と同じ形状になる
  • 表皮剥離や発赤で発見されることが多く、マスクの装着時に痛みの自覚症状がある
  • 治療を行うに当たっては、圧迫の原因除去が難しい場合が多いため、難渋化しやすくなる

気管カニューレカニューレ固定帯(固定ホルダー)による褥瘡

原因

  • カニューレ固定帯や気管カニューレが常時、皮膚に接触するため、ずれや摩擦が生じる

創部の特徴

  • カニューレの翼の大きさに一致した形で、皮膚びらんや皮膚発赤が生じる
  • 頸部と固定帯の位置、カニューレの形状と材質によリカニューレが傾斜して固定されることがあり、その場合は傾斜した方向に皮膚びらん、皮膚発赤、潰瘍が生じる場合がある
  • カニューレ固定帯部に皮膚びらん、潰瘍皮膚、発赤が生じやすい

看護ケアのポイント

カテーテルラインなどによる褥瘡の予防

  • 針基の接続部を固定する際は、強く皮膚に接続部を押しつけないように注意し、絆創膏で針基の周りを包むように貼用する
  • 皮膚に接続部やコネクタが直接当たらないよう注意し、固定用絆創膏を接続部の下に挟む
  • 圧迫回避が困難な場合、皮膚と接続部の接触面にウレタンフォームや薄いハイドロコロイドなどを事前に貼用する
  • 中心静脈カテーテルでは、固定具やコネクタ上部を強く圧迫固定しないように注意する
  • 中心静脈ポートの場合、針先がセプタムの底に到達した状態で、固定具が皮膚面から少し浮く程度の長さの針を選び、皮膚と固定具との間にはガーゼなどを挟まず固定を行う

酸素マスクによる褥瘡の予防

  • 皮膚の十分な観察を行いながら、圧迫創の予防に努める
  • 酸素マスクのひもやゴムなどを伸縮包帯に変更するなどの工夫を行う
  • ひもやゴム、マスクが接触する部分にガーゼを挟む、創傷被覆材の貼用をするなどの対処を行う

DIV予防用品による褥瘡の予防

  • 弾性ストッキングの場合、下腿の周囲径によってサイズを正しく選択する
  • 外傷後や術後の場合、浮腫が著明であり、日々の状況にも変化が見られる場合があるため、患者のリスクや状態を熟知した上で、機器を正しく使用する必要がある
  • 弾性ストッキングとフットポンプを併用した場合、双方からの圧迫のリスクがあるため、十分な観察を行う
  • 踵、腓骨小頭、踝、大腿、下腿、足背、アキレス腱などの観察を十分に行い、必要時、症状と部位を記録し、スタッフ間で情報の共有を行う
  • 摩擦からの保護目的で、発赤部位にポリウレタンフィルム材を貼用し、皮膚保護のため、ワセリンの塗布も併用する
  • 適宜、医師と連携を取り、フットポンプの中止時間を作る、弾性ストッキングの装着を短時間にするなどの工夫を行う
  • フットポンプの着用では、アキレス腱部や脛骨などを、チューブ包帯 (ストッキネット)あるいはソフトナースなどで保護する
  • 弾性ストッキング装着時は、踵部がずれたり、下腿部分の端が丸まったりしないよう注意し、モニターホールから足指がはみ出していないか、下腿、足の部分に皺ができていないか適宜、観察を行う

NPPVによる褥瘡の予防

  • 圧迫創に接触しないマスクの種類に変更し、局所の圧迫を除去する
  • マスクの圧迫が排除不可能もしくは変更ができない場合は、ハイドロファイバー創傷被覆剤やアクアセルの使用を検討する
  • 皮膚とマスクの接触による圧迫部位の皮膚を保護する
  • 定期的に圧迫部分の皮膚状態を観察する
  • 固定バンドの調整を行う
  • 患者に合ったマスクの種類を検討する
  • 直接皮膚にマスクが当たらないよう皮膚を保護しつつ、マスクを均等に密着させる
  • 特にNPPVマスクの場合、加湿による湿潤した環境下であるため、創周囲の浸軟予防をする必要があるので、適切な創傷被覆材を選択する

気管カニューレや固定帯による褥瘡の予防

  • 幼少児は頸部が短いため、固定ホルダーや気管カニューレの圧迫を受けやすいだけではなく、体動が多く、可動域も広いため、創部の安静が保ちにくいので、十分な観察を行い、早急にケアを行う
  • 事前に切り込みを入れた不織布ガーゼを気管カニューレの下に敷きこみ、カニューレや皮膚の浸軟による圧迫を避ける
  • 固定ホルダーは可能な限り広い面があるもので、皺に食い込むことなく、肌に刺激が少ない素材を選択する
  • 固定ホルダーや不織布ガーゼは毎日交換し、泡立てた石けんや拭き取り用皮膚洗浄剤などを使用してスキンケアを行う
  • 圧迫創は、創の状態(滲出液、深さ、壊死組織、感染、炎症、肉芽組織)に合わせた創傷ケアを行う
  • 圧迫の緩衝目的でポリウレタンフォームドレッシング材を使用する場合があるが、厚みがある分、気管カニューレの位置が変化しやすいため、自己抜管や呼吸状態に注意する
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