目的
- 失語がある患者のケアのポイントについて理解し、個別性に応じた対応ができる
病態の概要
失語とは
- 脳の損傷が原因
- 読む・書く・話す・聞くなどの言語機能が失われた状態
- 構音障害や失声では、大脳の言語の構成は可能なため、失語に含まない
言語中枢について
- 大きく分けて2つに存在し(ブローカ野、ウェルニッケ野)、弓状束により連絡している
- ブローカ野、ウェルニッケ野ともに9割以上の人で左脳にあり、中大脳動脈により支配されている
種類と特徴
- 運動性失語(発話の障害)
ブローカ失語(皮質性運動性失語)
- 障害部位:ブローカ野(運動性言語中枢)
- 言語理解は可能(困難な例もあり)だが、発話・復唱ができない
- 非流暢、電文体発語(助詞・助動詞を抜かす)
- 音韻性錯語(音の一部を誤る)が多い
- 感覚性失語(言語理解の障害)
ウェルニッケ失語(皮質性感覚性失語)
- 障害部位:ウェルニッケ野(感覚性言語中枢)
- 言語理解・復唱は不可能
- 流暢で発話できるが、新造語や錯語がみられる
- 語性錯語(他の単語に言い誤る)が多い
鑑別
- 流暢さ、言語理解、復唱などの項目により行われる
治療
- リハビリが中心となる
- 回復期(受傷後2~3週間)では、言語聴覚士(ST)によるリハビリが行われ、社会復帰を支援する
- 言語回復の治療
- 非言語的コミュニケーションの方法の指導
観察項目
- 患者の基礎疾患、障害の部位の確認(CT画像など)
- 失語の種類や程度、症状の把握(流暢さ、言語理解、復唱が可能か)
- 治療方針とその内容、患者・家族の受け止めの状況
- 精神状態の把握
- 患者・家族の理解度
- コミュニケーション手段の確認
- 治療内容(STの介入状況)の把握
アセスメント
- 失語の種類や特徴を把握し、患者の病態を理解しているか
- 個別に応じた適切な対応により、コミュニケーションを図ることができているか
看護ケアのポイント
- 聴く姿勢をとるため、右半側空間無視や右側半盲がみられる場合があるので、正面か左側に対面し、目線を合わせる
- 言語理解の程度を把握するため、注意が向けられている事を確認しながら、話を区切りゆっくりはっきり話す
- 身振りを交えたり、絵や物を示して話をすることも、失語の種類によっては、言語理解を深めるために必要となる
- 肯定的態度で患者を尊重する態度を示す
- 必要事項を分かり易い言葉で整理し、単語や短い文を用いてコミュニケーションを図る
- 患者にとって話す事が苦痛にならないよう、待つ姿勢をとりながら根気強く関わる
- 運動性失語では最初の言葉が出にくいという特徴があるため、ヒントや最初の文字を言うことで言葉を引き出す
- 患者の関心があることに話の焦点を当て、言葉自体ではなく、患者の言いたいことを理解する
- 表情や身振りを観察、患者の意思を受け止め言葉で伝える
- 誤りを指摘しすぎず、必要なら話を何度も繰り返す
- 可能であれば絵に描いてもらう
注意点
- 症状は患者により千差万別のため、患者の個別性に応じて、STと連携し、統一した対応が取れるよう努める