不随意運動の鑑別

目的

• 不随意運動とは何か、鑑別の仕方と流れ、アセスメントのポイントについて理解する

症候の概要

不随意運動とは

• 意思とは関係なく生じる運動のことをいう
• 最も頻度が多いのは振戦である

鑑別について

大脳基底核の障害

• • 振戦（安静時）：安静時に出現、動作により減弱または消失する
    • 上肢、手指（ピルローリングトレマー）に好発
    • パーキンソン病にみられる

1. • バリズム：一側上下肢の投げ出すような粗大で激しい運動、パターンは一定
     • 四肢近位部に好発
     • 視床下核の血管障害（対側）にみられる
   • アテトーシス（アテトーゼ）：上下肢のゆっくりしたくねるような運動、手指は奇妙な肢位
     • 手指に好発（イモムシのような動き）
     • 脳性麻痺、ウィルソン病、線条体の障害、薬剤が原因となる
   • 舞踏運動：無目的で不規則な速い運動、急に始まり持続時間が短い
     • 四肢遠位部や顔面に好発
     • ハチントン病、小舞踏病、老人性舞踏病にみられる
   • ジストニア（ジストニー）：体幹筋のゆっくりくねるような運動、手指は奇妙な肢位（ジストニア肢位）
     • 体幹、四肢近位部に好発
     • 捻転ジストニア、ウィルソン病、被殻障害、薬剤が原因となる

大脳基底核以外の障害

• • 振戦
    • 姿勢時：ある一定の姿勢になった時出現、安静時に減弱または消失
      • 上肢に好発
      • 本態性振戦、甲状腺機能亢進症、β刺激薬使用による
    • 動作時：動作時に出現、動作を止めると減弱または消失
      • 上肢に好発
      • 本態性振戦、小脳障害にみられる
  • ミオクローヌス（1～3Hz）
    • 陽性ミオクローヌス：突然に短時間の筋攣縮により体の一部がピクッと動く
      • 骨格筋、軟口蓋、眼球に好発
      • 亜急性硬化性全脳炎、クロイツフェルト-ヤコブ病、ミオクロニー発作、生理的なもの（吃逆など）
    • 陰性ミオクローヌス：不定期に脱力が起き、一定の姿勢に固定しようとすると振戦様の運動が起きる（固定姿勢保持困難）
      • 上肢、手首、羽ばたき振戦はこれに含まれる
      • 肝性脳症、ウィルソン病、尿毒症にみられる
  • チック：突発的・急速・反復性・非律動性・常同的な運動
    • 顔面（まばたき、顔をしかめる、口をゆがめる）、肩（肩を動かす）
    • 緊張状態、心因性、トゥレット症候群にみられる

治療

• 薬物療法が中心となり、不随意運動の種類に応じて選択される
  • 安静時振戦：L－ドーパ、抗コリン薬
  • 姿勢時または動作時振戦：β遮断薬
  • 舞踏運動、バリズム：ドパミン受容体遮断薬

観察項目

• 不随意運動のパターン、動きと部位、持続時間の把握
• 患者の基礎疾患と治療内容（内服薬など）の把握
• 患者の理解度、精神状態の把握
• 検査結果の確認（血液検査、CT検査など）

アセスメント

• 不随意運動のパターンや特徴を理解し、鑑別・原因検索が行えたか
• 不随意運動が出現している場合、律動的か非律動的か把握し、見極めることができたか

注意点

• 律動的（一定のリズムで運動を反復）な運動の場合、振戦かミオクローヌスである