目次
目的
- 口腔ケアを行うことで、人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発症リスクを減らすことができる
口腔ケアと周術期口腔機能管理(オーラルマネジメント)
- 看護師が普段行っている口腔ケアは、歯磨きなどの清掃と、廃用予防や嚥下訓練などのリハビリテーションであるが、オーラルマネジメントはそれらも包括してさらに、教育・アセスメント・歯科治療・食べるといった意味が含まれている
- オーラルマネジメントを、歯科・栄養サポートチーム(NST)・感染制御チーム(ICT)・呼吸サポートチーム(RST)など他職種と協働で行うことにより、口腔ケアの質が向上する
- オーラルマネジメントを活用して、治療開始前から歯科医の介入やブラッシング指導を行うことで、周術期における口腔ケアが行いやすくなる
歯科と連携した口腔ケア
- 人工呼吸器使用による呼吸管理が長期化すると、人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発症リスクが高まる
- 経口気管挿管中の口腔ケアは技術的に困難であるため、気管挿管前に清浄化しておくことが重要であり、緊急の気管挿管を除いては、気管挿管前に歯科による口腔環境の整備が重要
- 浸襲の非常に大きな癌の切除手術や心臓外科手術(緊急例を除く)などは予定手術であるため、術前の口腔ケアの対象として適している
- 院内に歯科がない場合、院外の連携する歯科医院でも周術期口腔機能管理料を算定できる
プラークフリー法
- 術前プラークフリー法とは、術前に歯科で専門的歯面清掃によって歯垢を完全に除去しておくことである
- これにより、術後はスポンジブラシや綿棒などによる簡単な口腔清掃で歯垢の再付着が生じにくくなり、ナースによるケアを簡略化できる
人工呼吸器患者への口腔ケアの実際
目標
- 歯垢を物理的にこすり落とし、再付着を減らすことができる
- 歯周病菌の増加や口腔細菌叢の悪質化を予防できる
使用物品(例)
- 歯ブラシ・舌ブラシ・歯間ブラシ・一歯ブラシ
- デンタルフロス
- 口腔ケア綿棒・スポンジブラシ
- 抗菌性洗口液
- ワイダー(開口器など)
- ライト付きミラー
- バイトブロック など
誤嚥予防
- 誤嚥性肺炎を予防するため、こすり落とした歯垢や細菌は、確実に回収する
- 洗浄する場合は、排唾管や吸引などを用いて汚染水を確実に回収する
- 洗浄しない場合は、口腔ケア綿棒・スポンジブラシでの清掃で汚染物を回収する
- 口腔ケアや体位変換・気管吸引前に必ずカフ上部吸引を行う
- 保湿を徹底して口腔乾燥の予防・改善を行うことが重要である
トラブル対応
- 舌苔は、こすって無理やり取らないよう注意する(創をつけてしまうため)
- 出血は、歯周病によるものと粘膜損傷によるものがある
- 歯周病の改善と二次感染の予防に努める
- 検査データが不良でも口腔以外の出血傾向がみられない場合は、注意深く歯磨きを継続する