血糖パターンマネジメントの基礎の基礎
血糖パターンマネジメントの基礎の基礎【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2014年1月21日
最終更新日:2020年08月31日
(変更日:2020年9月1日) ※
目的
- 血糖パターンマネジメントを理解し、糖尿病患者への指導に活かすことができる
血糖パターンマネジメントとは
- 血糖パターンマネジメントとは、すべての糖尿病治療を含む、血糖コントロール管理の包括的な方法である
- 患者の血糖自己測定(SMBG)を通じて収集したデータを、論理的・系統的に分析することで、治療プログラムの変更に”注意深く”反映させることである
- 糖尿病患者と医療者双方による、日単位・週単位・長期間の血糖値管理における分析の活用や、数日間の血糖変動の傾向に基づき治療の調整を行う
- 日本では看護師がインスリン量の調整を行うことは認められていないが、医師へ適切な情報を伝え、より患者の生活に合わせた薬物療法を進めていけるよう働きかける
血糖パターンマネージメントの要素
- 治療に対する患者の積極的な参加
- 血糖コントロールの第一歩は、患者自身が治療に向き合うこと
- 患者が積極的に治療に参加できるような支援を実践する
- 患者と医療者との目標血糖値の確認
- 医療者からの一方的に伝える目標血糖値では、達成が難しい
- 患者自身が達成したいと思い、かつ達成可能な目標血糖値を、患者とともに明確にすることで達成感が生まれる
- 調整のために必要となる、血糖自己測定値内変動を捉える
- 血糖自己測定は苦痛を伴うため、可能な限り測定回数を減らし、効率よく血糖コントロールに反映できるようにする
- そのためには、治療内容や生活パターンを考慮しながら日内変動を捉えることが重要
- 血糖自己測定は、インスリンを使用している場合のみ保険適応になる
- 食事療法の継続
- 食事療法、とりわけ炭水化物の摂取量を一定にすることが大切である
- 炭水化物・・・食後血糖の変動とインスリン必要量に与える影響が強い
- タンパク質・・・体重を増加させる可能性がある
※大量摂取の場合は食後3.5~5時間の血糖を上昇させる - 脂質・・・食物の胃排出時間を遅らせたり、体重増加を招く
- 食物繊維・・・大部分は、消化吸収されない
- 薬物療法
- 各経口薬の作用機序や各インスリンの作用動態・作用特性を理解し、患者の病態と生活に合わせた治療方法を検討、選択する
- 血糖モニタリングに基づいた食事・運動(身体活動)・薬物療法の自己調節
- 日常の血糖自己測定のデータをもとにした治療プログラムの検討・継続
- 場合によっては患者自身が生活や薬物の自己調節を行う
- 患者と医療者との密な連絡
- 1回/月などの受診時だけでなく患者と医療者が密な連絡をとれる環境を整備することは重要である
- 電子メールにて食事内容を写真で送り栄養士に相談する
- 血糖値が予想以上に高値・低値の場合は、インスリン量の調整を電話で行う など
- 自己管理教育
- 血糖コントロールには食事や運動・薬物といった自己管理が重要であるが、それを継続していくことは容易ではない
- 教育入院や外来での個人・集団教育、相談窓口の設置を行い、患者の自己管理能力を向上できるようかかわることが大切である
- 精神的・管理的サポートシステム
- 糖尿病は一生、食事や運動・薬物といった自己管理が必要であり、精神的な負担が少なくない
- 医療機関や家族だけでなく、患者会や小児糖尿病サマーキャンプなど、精神的・管理的サポートシステムの役割は重要である
血糖自己測定(SMBG)の活用
- 患者がSMBGの意義やメリットを理解し、自分自身のために行うのだと感じられるように関わっていくことが重要である
- 単に血糖値の高低をみるのではなく、どうしてその値になったのかを患者と一緒に考え生活の振り返りを行う
- 血糖値だけでなく、インスリン量や外食など、いつもと違う食事や運動、月経期間、低血糖時の捕食といった血糖値の変動要因を把握し、血糖パターンを捉えていく
患者と一緒に生活の振り返りを行うために、SMBGノートに血糖値の変動要因も記録するよう指導する
低血糖時の捕食内容や外食内容など記入し、あたかも生活日記のようにすることで、血糖パターンを把握しやすくなる
血糖値の変動要因
- 食事
- 食事量・間食・摂取時間・栄養素による影響・アルコール・低血糖時の捕食内容と量
- 活動
- 生活習慣・運動習慣・睡眠状態・通勤スタイル・仕事の労作度・家事などの日常生活での労働・入浴時間
- 薬物
- インスリン・経口血糖降下薬・ステロイドなど
- 糖尿病治療以外の薬物についても十分把握しておく
- 身体
- 糖尿病の合併症を含む病態・その他の合併症・妊娠・月経・体調変化(感冒・発熱・下痢・外傷)
- その他
- 精神的ストレス・ソモジー効果・暁現象・旅行や試験などのイベント
アルゴリズムとスライディングスケール
- アルゴリズム
- 責任インスリン(ある時点の血糖値に最も影響を持つインスリン)を中心にして日常の血糖コントロールを考える方法
- 測定時の血糖値に影響を及ぼしたインスリンを次回から変更する
- スライディングスケール
- その時の血糖値に応じてインスリン量を増減する方法
- シックデイ・糖尿病ケトアシドーシス・外科的手術の時などに使用する
- 血糖値に対して後追いの調整となるため、血糖値のピークとインスリンの最大作用時間にずれが生じ、日常の血糖コントロールに使うと血糖値を不安定にしやすい
血糖パターンを把握する
- 血糖パターンは1日の血糖値の変動だけでなく、1週間・1ヶ月といった期間の変動も捉えていく
- 1週間の血糖パターンを考えるときは、平日と休日の過ごし方、仕事内容や習い事、学生なら体育や部活・塾による食事時間のずれがどのように影響するかを考える
- 1ヶ月の血糖パターンを考えるときは、月経周期(高温期である月経前に血糖上昇傾向)や仕事の繁忙期(月末は多忙で食事時間がずれるなど)を考慮する
- 小児の場合は、天候や季節によって外遊びに要する時間が異なり、血糖値に影響することがある
血糖パターンを把握し、速やかにインスリン治療にフィードバックしていくことが重要である
なぜこの血糖値になったのかを考えるとともに、今後血糖値がどうなっていくかを予測し、対応策を見出していく
SMBGの虚偽申請
- 血糖値とHbA1cの値がかけ離れていたり、あまりにも数値が揃いすぎている場合、SMBGの虚偽申請が疑われる
- 安定しない血糖値に罪悪感を抱いていたり、自分をよく評価してもらいたいとの思いから生じる患者の行動である
- 患者を責めるのではなく、その心情を思いやり、そのような行動に至った理由や思いを把握し、今後の治療に生かす
患者がありのままの状態でいられるような信頼関係を築き、SMBGの意義を受け止めて継続できるよう援助する
活用の実際
朝食前血糖が高い時
- 考えられる要因
- 前日の夕食や捕食が多過ぎてないか
- 摂取エネルギーに比べてインスリン量が不足していないか
- 夜間の低血糖によるソモジー効果はないか
- 朝寝坊して暁現象を反映していないか
- 患者とともに振り返り、その原因によって対応策を考える
- インスリン量の調整が必要な場合、主治医と相談しながら、インスリン量の調整を行う(アルゴリズムの考え方)
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