目次
目的
- 高血圧(本態性高血圧)の治療で使用する薬剤の作用機序、主な薬剤、主な働きとその特徴を理解する
※ここでは、本態性高血圧の治療薬についての基礎知識とする
本態性高血圧治療薬の概念
- 血圧とは、末梢血管抵抗 × 心拍出量 で表す
- 本態性高血圧の治療薬とは、これらの因子の低下により、降圧を図る薬剤である
- 末梢血管抵抗を低下させる薬剤は、Ca拮抗薬、血管拡張薬、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系抑制薬(RAA系抑制薬)などがある
- 心拍出量を低下させる薬剤は、利尿薬、β遮断薬、中枢性・末梢性交感神経抑制薬がある
第一選択薬となる降圧薬
Ca拮抗薬
- 血管平滑筋へのCaイオン流入を抑制し、血管を拡張させる
- 適応:狭心症、左室肥大、脳血管障害慢性期、頻脈、高齢者など
- 副作用:同期、頭痛、浮腫、ほてり、便秘など
- 禁忌:除脈など
※心不全は慎重投与
利尿薬
- 尿細管でのNa再吸収を抑制し、循環血液量の減少を図る
- 適応:心不全、ループ性腎不全、脳血管障害慢性期、高齢者など
- 副作用:低K血症、脂質異常、高尿酸血症、耐糖能低下など
- 禁忌:腎不全、低K血症、腎不全など
※妊娠、耐糖能異常がある場合は慎重投与
アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE)
- ACE(アンジオテンシン変換酵素)を阻害し、AⅡ(アンジオテンシンⅡ)の産生を抑制することで、結果的にAⅡの作用(体液貯留、血管収縮、交感神経系活性亢進)を抑制する
- 適応:左室肥大、心不全、心筋梗塞、心房細胞予防、腎不全、脳血管障害慢性期、タンパク尿、糖尿病、高齢者など
- 副作用:高K血症、血管神経性浮腫、空咳など
- 禁忌:妊娠、高K血症、血管神経性浮腫、両側性腎動脈浮腫など
※重度肝障害、重度のNa欠乏、体液量減少は慎重投与
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
- AⅡの作用(体液貯留、血管収縮、交感神経系活性亢進)を抑制する
- 適応:左室肥大、心不全、心筋梗塞、心房細胞予防、腎不全、脳血管障害慢性期、タンパク尿、糖尿病、高齢者など
- 副作用:高K血症など
- 禁忌:妊娠、高K血症、血管神経性浮腫、両側性腎動脈浮腫など
※重度肝障害、重度のNa欠乏、体液量減少は慎重投与
β遮断薬
- β1受容体を遮断し、心拍出量の低下、中枢での交感神経抑制作用、レニン産生抑制などにより降圧を図る
- 適応:心不全、頻脈、心筋梗塞後、狭心症など
- 副作用:耐糖能低下、脂質異常など
- 禁忌:喘息、高度除脈など
※耐糖能異常、閉塞性肺疾患、抹消動脈疾患、レイノー症状などは慎重投与
第一選択以外の降圧薬
- 第一選択とならない薬剤は、降圧効果自体が限定的であり、特に心血管障害の予後を改善するというエビデンスがない
- 基本的には第一選択薬との併用で使用される
- 血管拡張薬
- α遮断薬
- 末梢性交換神経抑制薬
- 中枢性交換神経抑制薬
- K保持性利尿薬
- レニン阻害薬
- 選択的アルドステロン受容体拮抗薬(SAB)
降圧薬以外の薬剤との相互作用
- 相互作用により使用が禁忌となる組み合わせがある
- 降圧効果が増強する
- Ca拮抗薬・β遮断薬 × H2受容体拮抗薬
- DHP系Ca拮抗薬 × グレープフルーツ
- 降圧効果が減弱する
- 利尿薬・ACE阻害薬・β遮断薬 × NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
- 他の薬剤の作用が増強する
- 非DHP系Ca拮抗薬 × ジゴキシン = ジゴキシンの作用が増強
- 非DHP系Ca拮抗薬 × カルバマゼピン = カルバマゼピンの作用が増強
- ワルファリン × β遮断薬 = ワルファリンの作用が増強
- 降圧効果が増強する