目的
- 放射線治療の介助について理解を深め、適切な介助ができる
治療の概要
- 悪性腫瘍の縮小・消滅を目標として、放射線を照射する治療であり、確実・安全に行うためには、各種検査との併用が必要となる
- 悪性腫瘍の主要な治療法には手術療法、化学療法、放射線治療の3種類があるが、これらの有効的な組み合わせにより相乗効果を期待することができる
- 正常組織よりも悪性腫瘍の方が放射線に対する影響を受けやすいという性質を利用する
- 放射線照射後、正常組織は障害を受けてもやがて回復する
放射線治療の対象疾患
- 脳腫瘍、頭頸部腫瘍、肺がん、食道がん、子宮がん、乳がん、前立腺がん、直腸がん、 リンパ腫、各転移性腫瘍など
照射方法
- 放射線治療には、外部照射(患者の体外から 腫瘍に照射する)と小線源治療(体内から照射する)がある
- 小線源治療の場合、密封あるいは非密封小線源治療があり、さらに密封小線源治療は、腔内照射と組織内照射に分類することができる
外部照射
- 放射線治療の中でも一番多く用いられている照射法である
- 悪性腫瘍に対して効果的、かつ正常組織への影響を少なくするために、疾患別、照射量(総線量)、治療期間、治療回数が詳細に計画される
小線源治療
- 数mm~数cm以下の放射性物質を腫瘍の中に入れ、集中的に照射をする方法である
密封小線源治療
- 前立腺、舌などの組織内に線源を直接刺入して照射する組織内照射と、子宮などの体腔内に線源を挿入して腫瘍に照射する腔内照射がある
全身照射
- 骨髄移植の前処置として行われている
- 患者寝台ベッドを移動させながら全身に照射する方法と、全身が入る大きな照射野を使用して照射する方法がある
非密封小線源治療
- 全身的放射線治療の1つで、経口あるいは静注にて放射性物質(ヨードやストロンチウムなど)を投与する
- 甲状腺がん非ホジキンリンパ腫(成人)などに用いられる
定位照射
- 小さい腫瘍に対し、様々な方向から集中させた放射線集中的に照射する方法
- 定位手術的照射(SRS):治療に1回 (1日)の照射で終了
- 定位放射線治療(SRT):数回に分けて照射
強度変調放射線治療
- 放射線治療における先端技術の1つ
- 強度変調放射線治療は放射線強度を不均一にする作用がある
- 腫瘍には高い放射線を当て、正常組織には放射線の影響を低くさせることが可能
併用療法
手術療法との併用
- 術前照射
- 放射線治療を事前に行うことにより、術前にある程度まで腫瘍を小さくしておくことで手術の切除範囲を小さくする
- 術中照射
- 術中に照射部位へ大線量の放射線を照射する方法
- 確実に腫瘍へ照射ができるが、術中(1回)しかできない
- 術後照射
- 手術後に腫瘍部位やその周囲へ照射する
- リンパ節転移や腫瘍の再発を 防ぐ
- 手術で摘出困難だった腫瘍に照射をする場合もある
化学療法との併用
- 放射線治療と化学療法との併用により局所治療効果を高め、転移を抑えることを目的とする
方法(放射線治療の流れ)
診 察
- 放射線治療専門医の診察を受ける
- 過去の検査データ履歴などから総合的に判断し、治療の有無、照射範囲や治療スケジュールなどが決定される
- 患者の予測される副作用や治療効果についての説明があり、場合によっては同意書(承諾書)にサインと捺印をしてもらう場合がある
治療計画
治療計画
- 予め腫瘍の大きさや位置関係を把握するため、X 線撮影、CT、MRなどの画像データを集める
- 正確に照射位置を合わせるため、患者の皮膚へ印を付けたり、シェル(固定具)を作成する
- 治療計画装置へ撮影で取得した画像データを転送し、治療範囲や放射線の種類、照射回数などの治療スケジュールを立てる
治療
- 放射線治療装置と皮膚(シェル)へ付けた印を確実に合わせ、放射線照射を行う
- 治療期間中は可能な限り継続してもらうことが必要であり、定期的に行わないと放射線治療の効果が低下するので注意が必要
- 照射位置を確認するために定期的に治療装置を用いてX線撮影を行う
経過観察
- 定期的に医師による診察を行い、全身状態や放射線有害反応の進展度などを確認する
- 必要に応じて投薬治療や休薬期間を設けるなど調整を行う
治療終了
- 全身状態や放射線有害反応の進展度などの評価を行う
看護のポイント
- 患者が持つ「放射線治療に対する不安」に対する傾聴や共感、アドバイス、治療中や治療後に起こる可能性のある有害反応について説明し、理解を得る
- 放射線治療前後にしっかりとした説明を行うなど、日常生活の指導・教育を含めた家族への支援が重要である
注意点
放射線有害反応
- 有害反応には大別して早期反応と遅発性反応がある
- 早期反応:照射を開始してからおよそ3ヶ月までに起きる
- 栄養状態の低下や放射線宿酔、急性浮腫。放射線粘膜・皮膚炎・肺炎など
- 遅発性反応:放射線治療を開始して数ヵ月後
- イレウス、壊死、難治性潰瘍、穿孔などの症状が出現する
- 一度発症すると回復が困難になるため、遅発性反応が起こらないようにコントロールをする必要がある
- 早期反応:照射を開始してからおよそ3ヶ月までに起きる