目的
- 血管造影の基礎知識について理解を深め、適切な介助ができる
検査の概要
- 造影剤を血管内に注入し、レントゲン撮影を連続的に行うことで、血管の狭窄や閉塞、動脈瘤、動静脈廔、血管損傷による出血などの血管性病変や腫瘍の診断に有用な検査である
- 血管造影の種類には脳血管造影、心臓血管造影、腹部血管造影、冠動脈造影などがある
- 経皮的に動脈を穿刺し、目的とする動脈まで専用のカテーテルを挿入するセルジンガー法が用いられることが多い
- 穿刺する部位は、患者の病状や血管の状態等により異なる
(橈骨動脈、上腕動脈、大腿動脈などから穿刺する) - 小児や高齢者の場合、腹部血管造影を施行する場合、動脈硬化や血管の蛇行が著明な場合は大腿動脈から穿刺を行う
- 血管造影の手技を利用して、血管塞栓術、血栓溶解療法、薬液動注療法、経皮的血管形成術などの治療が行われることもある
看護のポイント
検査前
確認事項
- 血管造影の目的(検査または治療)や患者の症状
- 方法、検査所要時間
- 穿刺する動脈の部位
- 検査や治療に伴う合併症や偶発症の種類
- 薬物アレルギー、特異体質、感染症、炎症症状、出血性素因、心不全や腎不全の有無
- 患者の血管造影に対する理解度
- 同意書(承諾書)の内容
患者への説明
- 検査前の3~6時間は絶飲食とする(検査中の誤嚥や窒息、嘔吐の回避)
- 造影剤注入時に灼熱感が生じることがあるが、一過性であること
- 検査中の体動は危険であるため、動かないようにする
- 大腿動脈穿刺の場合は、手からの穿刺に比べて安静時間が長く必要となる。医師に確認し、安静の必要性を十分に理解させる
- 緊張や慣れない体位の保持により、尿閉となる場合があるため、状況に応じて導尿する
検査前準備
- 排泄後、検査着と検査用の下着等を着用、装着物(義歯など)を外す
- 医師の指示により血管確保後、鎮静目的で前投薬を投与する
脳血管造影を行う場合、前投薬は痙攣を予防する目的でも投与される
検査中
- 検査台に患者を移動する
- 自動血圧計や心電図モニターなどを装着する
- 検査中は体動を行わないよう説明する →状況に応じて患者の了解のもと、四肢固定を行う
- 検査中に疼痛、悪心、掻痒感などの症状がある場合は、すぐに知らせるように説明する
- 患者に意識はあるため、適宜、声掛けや説明を十分に行う
- 検査の手技は感染予防のため、無菌操作で行う
- 看護師はX線防護衣(プロテクター)の着用を行い、患者の様子が観察できる場所で待機する
異常の早期発見のため、患者から目を離さないようにする
- 必要に応じて嘔気や悪心の確認やバイタルサインの観察を行う
- 検査施行時は全身に灼熱感が生じることが多いため、言葉がけを行う
放射線被曝を防止するため、遮蔽板やプロテクターなどで遮蔽を行い、造影中の入室は必要最低限とし、適切な距離をとる
冠動脈の造影検査では胸の痛みや重症(致死的)不整脈を、脳血管の造影検査では頭痛、けいれん、神経症状の変化を起こす場合があるので、撮影ごとに観察と記録を行う
検査後
- 造影終了後、医師が圧迫止血を行う(約15~20分程度)
- 止血確認後、医師が穿刺部を消毒し、減菌ガーゼの上から圧迫用枕(ガーゼなどの素材を堅く丸めてロール状にしたもの)をのせる
- 圧迫用枕の固定は、ベルトあるいは仲縮性の絆創膏を用い、両腸骨稜の皮膚の上からしっかりと固定する
- 穿刺した腕や足などを屈曲すると圧迫がゆるみ、止血が不十分になるため、指示があるまで屈曲はしないよう患者に説明する
上腕動脈を穿刺した場合の固定はシーネを肘関節に当てた状態となり、バイタルサインなどの異常がなければ早期にトイレ歩行が可能である
帰室後
- 検査終了後、1~2時間経過して特に異常がみられなければ、仰臥位の状態のまま食事摂取が可能となる(おにぎりなどの食べやすい食事を用意するのが望ましい)
- 床上排泄にて水分を摂らない患者が多いので、水分摂取をすすめる
- 水分摂取を行うことで造影剤の影響による腎障害の発生を予防できる
- 検査後、約半日~1日は足を伸展させた状態のまま安静臥床となる
- 同一体位は苦痛を伴うことが多い
- 股関節が屈曲しないよう注意しながら背部に薄い枕を挿入して軽度の側臥位にするなど、適宜、体位変換を行う
- 下肢のマッサージを他動的に行うことも有効
- 自動的に穿刺部位と反対の下肢を動かしてもらう
- 医師の指示によって歩行可能となるが、刺入部からの感染予防のため検査翌日の入浴は避けるよう説明する
皮下血腫を発見した場合
- 外縁にマーキングをしながら継続的に観察を行う
- 血腫の増大が認められた場合は医師に報告する .
動脈性出血を発見した場合
- 直接、血液に接触しないよう気を付けながらガーゼの上から用手圧迫止血を施行し、速やかに医師に連絡する
観察項目
- バイタルサイン
- 循環障害の有無(末梢動脈の触知など)
- 自覚症状、神経症状の有無
- 水分出納の状態
- 止血状態
- 固定のずれの有無
- 穿刺部の疼痛の有無
- 水分出納の状態(腎機能)
少なくとも検査後約6時間は十分に観察することが重要である
アセスメント
- 発熱など全身性の炎症や感染が認められるときは検査を中止する場合もある
- 造影剤の投与などによって身体に水分負荷がかかるため、重度の心不全がある場合は要観察とする
血管造影検査中・後の合併症
検査中
- 過敏反応
- 血栓症
- ショック
- 血管の穿孔出血
- 血腫
- 血管内膜剥離
検査後
- 過敏反応
- 血栓症
- ショック
- 感染
- 血管内膜剥離
- 穿刺部末梢動脈の閉塞・循環障害など
注意点
血管造影では、ヨード造影剤を用いるため、ヨード過敏症の患者には禁忌である
- 造影が初めての患者にはヨード過敏症テストが行われる場合もある
- カテーテル操作は血栓のリスクが高く、ヘパリン(血液凝固阻止薬)が使用されるため、止血が困難になる
- 血液凝固阻止薬など内服をしている患者は検査の数日前から内服を中止することがあるため、事前に医師に確認しておく
- 緊急事態を想定し、事前に救急カートの点検を必ず行う
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