消化管手術を受ける患者の術前看護

消化管手術を受ける患者の術前看護【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2014年10月17日
最終更新日:2018年06月30日
(変更日:2014年10月2日) ※

目的

  • 消化管手術を受ける患者の術前看護について理解を深め、適切なケアを行う

看護のポイント

問診

  • 問診によって患者の身体・精神状態や患者・キーパーソンの理解度を確認し、医師や他のスタッフと情報共有を行うことにより、手術に向けてよりよい看護ケアを提供することができる

問診項目

  • 患者やキーパーソンの病名・ 手術内容についての理解度
  • 手術の対象となる疾患の症状の出現状況
  • 既往歴とそのコントロール状況
  • ADL状況
  • 食事摂取量
  • 喫煙、禁煙の有無 → 過去の喫煙歴も確認する
  • 患者およびキーバーソンの治療方針や入院生活に対する考え方
  • 休薬期間が必要な薬剤の有無と内服状況
  • 食物・薬剤・ラテックスアレルギーの有無
消化器疾患をもっている患者は、疾患の影響によって術前から栄養不良となっていることがある

術前オリエンテーション

  • 患者やキーパーソンに対し、手術までの予定および術後の状況(可能性を含む)を説明し、不安の軽減に努める

術前オリエンテーション説明内容

  • 手術日時 (入室時間、開始予定時間、 終了予定時間、おおよその手術予定時間 )
  • 食事や飲水制限の有無と、制限開始日時
  • 輸液や内服薬の予定(手術前日睡眠薬使用、当日内服の有無)
  • 術前処置 (手術前日あるいは当日の下剤・浣腸使用の有無)
  • 前日の清潔ケア(臍処置、シャワー浴あるいは入浴 )
  • 貴重品取り扱いについて
  • 術前の更衣、装着品の有無の確認
  • 術中の家族待機場所、面会時間
  • 術後の部屋移動の有無と場所
  • 予測される術後の状況、安静度、輸液ラインの確保、ドレーン挿入の可能性
  • 疼痛時の鎮痛薬の使用
  • 術後合併症予防、ベッド上で行うDVT予防のための運動療法、早期離床の必要性
  • 肺合併症予防(排痰・深呼吸の必要性)
  • 経口摂取開始時期と食事形態

術前準備

  • 手術前日までに患者の術前準備、カルテ類など十分な準備を行うことにより、より安全な術前・術後ケアを提供することができる

手術前日までに行う準備

  • 必要物品の準備
    • ネームバンド
    • 手術用寝衣
    • 腹帯、下着(状況に応じ、T字帯あるいは紙オムツ)
    • 洗面道具(フェイスタオル、歯ブラシなど)
    • ティッシュペーパー
    • 水飲み
    • スリッパ
  • 医師への指示確認
    • 術前・術後輸液内容
    • 絶飲食開始時間
    • 内服薬中止・再開指示
    • 下剤内服・浣腸実施指示
  • 物品確認
    • 外来・入院カルテ
    • 手術前説明用紙
    • 同意書
    • lDカード(患者の診察券など)
    • チェックリスト
  • その他
    • 感染症・薬剤アレルギーの有無(アルコール、ラテックス、造影剤、抗生剤など)
    • 状況に応じ、術前呼吸訓練の開始
    • 義歯の有無
    • 人工肛門増設予定の場合は、ストーマサイトマーキング
    • 手術について不明点や不安の有無
    • 術前検査終了の確認
    • 患者とキーパーソンに対し、疑問点・不明点の確認を行い、患者の緊張や不安感の軽減を図る

術前訓練

術前呼吸訓練の目的

  • 腹部手術後は横隔膜の動きが制限されるため、呼吸器合併症のリスクが上がる
  • 必要な酸素を取り込めなくなることによる創部の回復遅延の可能性があるため、術前から呼吸訓練を行うことで、術後の呼吸状態の早期回復を目指す

深呼吸

  1. 安楽な姿勢をとる
  2. 手術創にあたる部分に両手を置く
    創部への刺激が少なくなり、深呼吸をした際の疼痛が軽減する
  3. 両鼻からゆっくりと大きく息を吸い込む
  4. 口をすぼめ、吸った時の2倍の時間をかけてゆっくりと息を吐き出す

腹式呼吸

  1. 腹部を膨らませながら、鼻から息を吸い込む
  2. 腹部をへこませながら、口をすぼめてゆっくりと息を吐きだす

排痰

  1. 2回深呼吸をする
  2. 創部を抑えながら息を吸い込んだ後、「ハッ、ハッ、ハッ」 と声に出しながら勢いよく息を吐き出す
  3. 以上の流れを2~ 3回繰り返す
口腔内乾燥がある場合、先に含漱をしておくと良い

トライボール(主に呼吸機能がよくない患者に行う)

  1. マウスピースをくわえた状態のまま、勢いよく限界まで息を吸い、息を勢いよく吐き出す
  2. そのままの状態で限界まで息を吐きだしたら、再び勢いよく限界まで息を吸う
  3. これを朝・昼・夕、それぞれ10回ずつ行う(吸う・吐くで1回とカウントする)

手術前日の準備

  • シャワー浴
  • 臍処置(必要時は除毛を行う)
  • 下剤の内服
    • 下剤内服後は急激に便意が起き、トイレに行く回数が増えるため、転倒の予防に努める
      腸管内に便が残っていると、術後に縫合部の感染・創部痛を起こし、活動量が低下し腸閉塞(イレウス)を起こすリスクが高くなるため、術前の確実な下剤の投与、便の性状の確認が重要となる
  • 易出血性の病変がある場合、出血状況も含めて観察する
  • 睡眠薬内服(患者が希望した場合)

手術当日

  • 浣腸を行い、腸内の残便を排泄させるが、最終排便によっては下剤の追加も検討する
  • ドレーンやルートが留置されていて更衣が不便である場合、適宜介助する
  • ネームバンド装着確認
  • メガネ、ヘアピン、マニキュア、義歯や補聴器などの除去
  • 前投薬の内服

アセスメント

  • 患者は術中・術後の状態をイメージすることが難しいため、術前の段階から不安を抱くことが多い
  • 術式や術後の状態によっては退院後の社会復帰にも影響する恐れがある
  • 術前準備は身体面・心理面・だけでなく、社会的側面からも行うことが大切である

注意

  • 患者取り違えを防止する目的で、ネームバンド名、カルテ類すべてとの氏名を照合する
    →患者自ら、氏名をフルネームで名乗ってもらう
  • 患部に左右がある場合、必ず左右どちらの部位なのかを患者およびキーパーソンにも確認し、説明用紙をはじめ、カルテなどの記載が合っているか確認する

 

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