目的
- 術後DVT(深部静脈血栓症)の予防とケアのポイントについて理解し、適切なケアを行う
観察項目
- 下肢の腫脹、表在静脈の怒脹の有無
- 疼痛(圧迫痛) ・発赤の有無と程度
- 爪床・皮膚などのチアノーゼ
- 発熱の有無
- 尿量、尿回数、飲水量
- 下肢運動の実施状況
アセスメント
- DVTは、さまざまな原因により、下肢に血流のうっ滞がに生じ、深部静脈に血栓が形成される
- DVTは予防対策を講じていても起こってしまう危険性が高い
- 十分な観察を行い、異常の早期発見につとめる
- 異常時や緊急時に早期対応するための準備が必要である
DVTを起こしやすい要因
血栓を起こしやすい要因と因子
- 血管内膜損傷
- 手術、カテーテル挿入、骨折、外傷などによって静脈壁の損傷が起こることにより、抗血栓機能の破綻、血小板や凝固因子の活性化が生じ、血小板の粘着性が増すことから血栓が形成される
- 因子には骨折、外傷、手術、カテーテル検査・治療、中心静脈カテーテル留置、血管炎、高ホモシステイン血症、抗リン脂質抗体症候群などがある
- 血流の停滞
- 血液の停滞が原因で活性化された凝固因子や血小板が希釈されずに局所で濃縮 され、血管壁との接触時間が長時間に及ぶことで血栓が形成される
- 因子には全身麻酔、ギプス包帯固定、脱水、麻痺、同一姿勢、安静臥床、うっ血性心不全などの心肺疾患、肥満、妊娠がある
- 血液凝固能の亢進
- 凝固機能や抗血栓機能のバランスが崩れることで血栓が形成される
- 因子には手術、骨折、外傷、熱傷、脱水、妊娠、悪性疾患、炎症性腸疾患、ネフローゼ症候群などがある
看護のポイント
血流停滞に対する予防方法
早期離床
- 安静臥床中に患者自身が行えるよう、術前から下肢の運動について説明用紙などを用いて指導を行う
- 術後は、医師の許可が出次第、患者に運動を勧める
- 運動の時間は厳密に決めず、適宜患者のペースに合わせて行い、チェックリストなどに記入する
- 運動療法の例 :
- 自動運動
- 寝たままの状態でつま先を下へ向けて足の甲を伸展させる
- つま先を上げる
- 足の指を開じ、グーの形を作る
- 足の指を開き、パーの形を作る
- 足首を回す
- 膝の屈伸運動を片足ずつ行う
※ 1~6までの運動を1セットとし、1日5セットを行う(各運動を5回ずつ)
- 他動運動
- 踝を支えながら持ち、足関節を片足ずつ背屈させる運動を行う
- 片方の手で膝を、もう片方の手で足関節を支えながら膝の屈伸運動を行う
- 自動運動
圧迫療法
- 弾性ストッキングによる圧迫
- 弾性ストッキングの入り口の部分を両手で持ち、先端部を整えながら爪先の位置を合わせる
- 踵の部分が正しくおさまっていることを確認しながら、しっかりとくぐらせる
- 膝までしわ、たるみ、よじれがないように引き上げる
- 弾性包帯による圧迫
- 包帯を足先側の足趾下から巻きはじめ、外側から内側に向けて巻いていく
- 引っ張り過ぎないように注意しながら、包帯を外側へ引っ張り、その圧力で内側へと巻き圧迫を行う
- 間欠的空気圧迫法
- 本体の圧力ダイヤルを40mmHgに設定する
- ふくらはぎの裏にスリープの中心部分があたるようにし、指1本位の隙間をあけて装着する
脱水予防
- 血栓を誘発しないよう、水分出納管理と共に、こまめに水分摂取を促す