術後創部疼痛への鎮痛剤の使用

術後創部疼痛への鎮痛剤の使用【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2014年10月27日
最終更新日:2020年08月31日
(変更日:2020年9月1日) ※

目的

  • 術後創部疼痛への鎮痛剤の使用について理解を深める

概要

  • 創痛をコントロールするために鎮痛剤を効果的に使用することは、術後の回復を促すためにも重要である

観察項目

  • 疼痛の部位、強さ、程度、持続時間、出現頻度
  • 創部の状態
  • 各種ルート類やドレーンの留置状況
  • 感染徴候(発熱、炎症所見、創部の腫脹・発赤・疼痛・熱感、創からの浸出液、ドレーンからの排液の性状や量の変化など)
  • 鎮痛薬の使用頻度・効果の有無と持続時間
  • 痛みの出現状況(空腹時、食後、夜間など)
  • 疼痛が軽減する体位の有無
  • 表情・言動
  • 不眠の有無・睡眠状況

主に使用される鎮痛薬

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

  • プロスタグランジン産生抑制作用による抗炎症・鎮痛作用がある
    • ボルタレン®(ジクロフェナクナトリウム)
    • ロキソニン®、ロキソプロフェン®(ロキソプロフェンナトリウム水和物)
    • ロピオン®(フルルビプロフェンアキセチル) など
  • 中でもロピオン®はNSAIDsにおいて唯一の注射薬である
  • 副作用として肝障害、腎障害、胃腸障害や血小板減少作用などがある
  • アスピリン喘息が誘発されやすいため喘息患者には禁忌
    • カロナール(アセトアミノフェン)で代用する
      ※小児、妊産婦、授乳中の母親なども、カロナールが第一選択となる

非麻薬性鎮痛薬

  • 中枢神経の刺激伝導系を抑えることによって鎮痛効果が得らる
    • レペタン®(ブプレノルフィン塩酸塩)
    • ソセゴン®(ベンタゾシン) など
依存性があるため、頻回な使用は控える必要がある
麻薬と拮抗するため併用はしないのが原則である

オピオイド

  • 術後の疼痛時使用する薬剤は、主にオビスタン®、フェンタニル®(フェンタニルクエン酸塩)がある
  • 意識レベルの変化、呼吸抑制、嘔気・嘔吐、眠気、便秘などの副作用がある
  • フェンタニルは麻薬だが、モルヒネと比較して眠気・嘔気・嘔吐などの副作用は少ない
  • 便秘になる率が低く、特に消化器外科手術後の疼痛コントロールに適している
  • 術後の鎮痛方法として皮下持続投与や硬膜外麻酔が用いられる
    • 痛みが強い場合は静脈注射が択されることもある

局所麻酔薬

  • 消化器外科領域の手術の場合、虫垂炎・鼠径ヘルニア・痔核など下腹部の手術で使用されることが多く、意識は保たれた状態のまま除痛を部分的に行う方法である
  • 鎮痛目的で全身麻酔との併用、あるいは腰椎麻酔(脊椎麻酔)で脊椎クモ膜下腔に使用される
    • キシロカイン®(リドカイン塩酸塩)
    • マーカイン®(ブビバカイン塩酸塩水和物)
    • カルポカイン®(メビマカイン塩酸塩) など
  • 虫垂炎や鼠径ヘルニアの手術の場合、マーカイン®(ブピバカイン塩酸塩水和物)の使用頻度が高い

主な投与方法

  • 薬剤の形状が多岐に渡るため、その時の状況に合った投与方法を検討し、除痛を行う

硬膜外麻酔

  • 専用の細いカテーテルを使い、腰背部の硬膜外腔へ麻酔薬を投与する方法
  • 全身麻酔の補助として併用し、術後の創痛コントロールのために使われることが多い
    • モルヒネ®
    • アナベイン®やフェンタニル®
    • キシロカイン®
    • マーカイン® など
  • 単独使用あるいはアナベイン®とフェンタニル®を混合して使用することもある
  • オピオイド(モルヒネ®、フェンタニル®)の副作用には嘔気・嘔吐、血圧低下、呼吸障害、排尿抑制などがある
  • 局所麻酔薬(アナベイン®、キシロカイン®、マーカイン®)には意識障害やショック、振戦などがある

PCAポンプ

  • 患者が投与量を管理する方法
  • 疼痛時に患者自身が自分でボタンを押すことで、鎮痛薬の1ショット投与が可能である
  • 速やかな除痛が可能であるが、投与後は一定時間はボタンを押しても次の投与ができない仕組みであり、過剰投与を防ぐことができる
  • 離床前や処置などに合わせて使用することで、効果的に除痛を図ることができる

皮下持続投与

  • 硬膜外麻酔だけでは除痛が図れない、あるいは硬膜外麻酔自体が行えない、硬膜外麻酔投与終了後に再び持続投与が必要な場合に用いられることが多い
  • 主にフェンタニル®が使用される
  • 薬液の投与には、シリンジボンプやシリンジェクター、インフューザーボトルを使用する
  • 使用の際は確実に針の固定を行い、薬剤の漏出がないように管理する

静脈内投与

  • 創痛が強い時は、フェンタニル®をはじめ、レペタン®やソセゴン®、ロピオン®の持続静注が行われることがある

筋肉内投与

  • 末梢静脈カテーテルや中心静脈カテーテルが留置されておらず、経口からの内服や直腸内の投与では効果が不十分な場合、速効性を得たい時に行う
    • 非麻薬性鎮痛薬(レペタン®、ソセゴン®)などが使用される
  • レペタン®やペンタジン®の副作用には、嘔気・嘔吐などがある

経直腸投与

  • 胃腸障害を予防したい場合や経口摂取が困難な場合には坐薬を使用することがある
    • ボルタレン®やレペタン® などが
  • ストーマ使用中や下痢、下血の患者に投与することは困難である
  • 非ステロイド性抗炎症薬(ボルタレン®)の副作用として肝障害、消化性潰瘍、血液異常がある
  • 非麻薬性鎮痛薬(レペタン®)の副作用には呼吸抑制がある

経口投与

  • 経口摂取ができる場合は第1選択となり、主にNSAIDsが用いられる
  • 十分な効果が得られにくい場合やアスピリン喘息などでNSAIDsが禁忌の場合、アセトアミノフェンやソセゴン®などが用いられる
  • 非ステロイド性抗炎症薬(ボルタレン®、ロキソニン®)の副作用には、肝障害、消化性潰瘍、血液異常などがある

静脈内投与

  • オピオイド(フェンタニルやモルヒネ塩酸塩)の副作用には、血圧低下、呼吸抑制、嘔気・嘔吐、排尿障害、掻痒感がある
  • 非麻薬性鎮痛薬(ペンタジン®)の副作用には、嘔気・嘔吐などある
  • 非ステロイド性抗炎症薬(ロピオン®)の副作用には、肝障害、消化性潰瘍、血液異常などがある

看護のポイント

  • 疼痛のコントロールを図るためのケアは、患者との信頼関係に影響する
  • 患者の回復過程をも左右するため、重要なケアの1つである
  • 疼痛のアセスメントや、疼痛緩和のためのケアを行いながら、患者が感じる痛みに対しての理解と受容をすることが大切である
  • 患者の痛みの程度や出現頻度に応じ、効果的に鎮痛薬の使用を行うことで、可能な限り苦痛の緩和を図る
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