目的
- 正常圧水頭症患者への対応について理解し、適切なケアができる
疾患の概要
- 正常圧水頭症(NPH)は成人に起こる慢性水頭症であり、認知症など精神活動の低下、歩行障害、尿失禁の三大徴候が認められる
- 正常圧水頭症に特有のものではなく、著明な脳室拡大を伴う長期存続型水頭症(LOVA)などでも認められるため注意が必要
- 脳室拡大が進行。進行は比較的緩徐である
- 特に前頭葉の機能が徐々に障害されることにより、三大徴候に代表されるようなさまざまな神経症状が現れる
- クモ膜下腔において髄液の通過障害が生じ、脳室拡大が見られるが、腰椎穿刺では髄液圧が正常範囲(180mmH20以下)という特徴がある
- NPHは、原因が特定できない突発性NPHと、クモ膜下出血・髄膜炎・頭部外傷など原因疾患が明らかな続発性NPHに分類される
- 二次性正常圧水頭症(sNPH):くも膜下出血や髄膜炎などに続発する
- 特発性正常圧水頭症(iNPH):シャント手術によって非常に高い治療効果が得られる例が多い
- クモ膜下出血、髄膜炎、頭部外傷を発症した場合、数週間~数か月後に好発し、60代~70代に多く見られる
- 正常圧水頭症の場合、適切な治療を行うことで症状の改善が得られる可能性が高く、治療可能な認知症ともいわれる
検査・所見
- 頭部脳MRIあるいは頭部CTにおいて、シルビウス裂の拡大、左右対称性の脳室拡大、頭部脳MRIのT2強調像で,高信号域(PVH)、頭部CTで側脳室周囲の低吸収域(PVL)が認められる
- 実際には、持続頭蓋内圧測定にて持続的あるいは間欠的に頭蓋内圧亢進が認められることが多い
治療
- V-Pシャント、∨-Aシャント、L-Pシャントなどがある
- 突発性NPHは高齢者に多い疾患である
- 画像所見だけでなく臨床症状、髄液排除試験の結果と合わせてシャント手術の適応が決定される
観察項目
- 歩行障害・精神活動の低下、尿失禁の有無、程度、進行度
アセスメント
歩行障害
- 三大徴候の中では最初に歩行障害が現れることが多い
- 歩幅の減少、すり足、すくみ足歩行、足の挙上低下、両足を開いて歩く、緩徐な歩行、方向転換時や起立時などに歩行が不安定になりやすくなるなどの症状がみられる
- さらに症状が進行すると坐位・立位の保持が困難となる
精神活動の低下
- 物忘れ、自発性の低下、日常生活の緩慢化、無関心といった症状が見られ、症状が進行すると無動性無言に近づく
- これらは認知症でも見られる症状であり、鑑別診断が必要
尿失禁
- 遅発性であり、かなりNPHが進行してからみられる
- 前頭葉障害が原因で起こる無関心からの失禁や、膀胱収縮抑制低下に伴う切迫性尿失禁が生じる
※【2017年2月14日】突発性正常圧水頭症(iNPH)の名称について 修正いたしました。