目的
- 経鼻経管栄養チューブの挿入について理解を深め、適切なケアを行う
必要物品・準備
- 経鼻栄養チューブ(5~12Fr)
- カテーテルチップ(20ml以上)
容量が20ml以下のシリンジを用いて胃内に空気を送り込んだ場合、注入圧が高くなり場合によってチューブが破損することもあるため、20ml以上のシリンジを使用する
- 潤滑剤
- 聴診器
- 油性マーカー
- はさみ、ガーゼ、安全ピン
- チューブ固定用テープ(事前に用途に合わせて切っておく)
- 膿盆・ビニール袋
- マスク、未滅菌手袋、エプロン
方法
- 必要物品の確認を行い、手洗いを十分に行う
- 患者の排尿が済んでいるか、食後、数時間が経過しているか確認をする
- 患者に経鼻経管栄養の目的や方法などについて説明をし、同意を得る
- ベッドをギャッジアップし、坐位またはファウラー位にする
- 固定テープを貼る位置(鼻部や頬部)を事前に清拭する
※チューブ挿入前に、嚥下をしやすいよう事前に口腔ケアをして口腔内をある程度湿らせておくのもよい - チューブが気管内に入るのを防ぐため、頭部を軽く前屈するよう促す
- チューブを袋から取り出し、先端を持って鼻腔から耳介までの長さを測定する
- 耳介に置いた手は動かさず、心窩部までの長さを測定する
※成人の鼻腔から胃の長さは45~60cmであり、挿入する長さは+10cmが目安となる - チューブの先端(4~5cm)に潤滑剤を塗布する
- チューブの先端から10cm前後の部分を持ち、鼻腔からゆっくりと挿入する
- 後頭部に向かって水平にチューブを10~15cm程度押し進め、抵抗が強くなってきたらそのままの状態で挿入をいったん中止する
- チューブが咽頭を通過し、最初に測定した長さまで挿入できたら、さらに10cm奥まで挿入し、テープを鼻翼に貼って仮固定をする
- チューブの先端位置の確認を行う
- カテーテルチップシリンジを用いて胃に空気を送り込んだ際、聴診器にて右下・左下の肺野、心窩部の各部位で気泡音が聞こえることを確認する
※心窩部で最も強く音が聞こえることを確認する - 気泡音が確認できたら、注入した空気を抜く作業を忘れずに行う
- カテーテルチップシリンジをチューブの入り口に接続し、胃内容物が引けるかどうか確認する
- 胃に確実にチューブが挿入されていることが確認できたら、鼻翼にチューブを固定する
- 頬部にもテープを貼り、チューブにたるみをもたせて固定した後、必要に応じ、安全ピンなどで衣服に固定する
- 処置が終了したら、患者に声をかけ、後片付けを行う
胃内にチューブが確実に挿入されているにもかかわらず、胃内容物が引けない場合は、チューブ先端に胃壁が接触している、体位に問題がある、チューブ径が細すぎるなどの原因が考えられる
このような場合は、30分間経過観察、左側臥位に体位を調整したり、チューブ挿入の長さを調整するなど、必要に応じて対応する
対応を行っても胃内容物が引けない場合は、気管内にチューブが誤挿入されている可能性があるため、医師や他の看護師に相談し、チューブの再挿入やレントゲン写真での確認などの対策を講じる
観察項目
- チューブ挿入時の疼痛・鼻出血・強い咳嗽・嘔吐反射の有無
- 胃内容物や気泡音の有無
アセスメント
- 経鼻経管栄養は患者の鼻腔から咽頭、食道を介して胃や十二指腸などに挿入したチューブを用いて栄養剤を注入する方法である
- 安全に経鼻経管栄養を行うためには、胃・十二指腸・小腸内に確実に経管栄養チューブを挿入すること、および栄養剤を投与する直前にチューブが正しい位置にあることを確認することが重要である
1ヶ月以上に渡り経鼻経管栄養が必要な場合は、胃瘻造設の適応となる
経鼻経管栄養の適応
病態により、意識障害や、以下のような嚥下困難が起こっている場合、かつ消化管機能に特別な問題がない場合
- 上部消化管の通過障害がある場合
- 全身衰弱が強い場合
- 拒食症などの精神的疾患がある場合
- 口腔外科の手術後
経鼻経管栄養の禁忌
- 鼻腔・口腔・食道に障害が認められる場合
- 上顎部の損傷がある場合
篩骨篩板骨折を合併している可能性がある場合は、チューブを挿入した際、頭蓋内へと挿入される可能性があるため、基本的には禁忌であるが、どうしても挿入が必要な場合は慎重に行う必要がある
- 消化管の機能が十分ではない場合
- 消化管完全閉塞や消化管穿孔がある場合
- 重篤な腸炎などを併発し、腸の消化吸収機能が著明に低下している場合
食道静脈瘤や食道憩室、消化管の狭窄や麻痺がある場合はチューブを挿入する際に消化管穿孔などのリスクがあるため、禁忌である
合併症
胃・食道逆流・誤嚥性肺炎
- 胃内に注入された栄養剤が、チューブ内を移動して上行する可能性がある
※胃・食道逆流から誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高くなる
チューブの機械的刺激によるチューブ固定部の皮膚損傷
- チューブの長期的留置による皮膚への刺激により、皮膚の発赤や潰瘍が生じる場合がある
消化性潰瘍(胃・食道性潰瘍など)
- 消化管壁にチューブの先端が長時間同一箇所に当たることによって生じる
- 場合によっては嘔吐や下痢、副鼻腔炎、胃管症候群などの合併症が起こる場合もある
- 患者が処置を拒み、頭部が後屈すると挿入が困難となるため、姿勢を正すよう説明を行う
- 患者に唾を飲み込むよう促し、嚥下運動と同時にチューブを静かに咽頭へと送り込む
一回でチューブが咽頭を通過しない場合は数回、嚥下運動を行ってもらう - チューブのたわみで挿入が困難な場合や、嘔吐反射・咳込みが強いなどの症状がみられた場合、チューブを2cmほど引き抜き、落ち着くまで無理に挿入しないようにする
注意点
キシロカインゼリーの使用はアナフィラキシーショックの原因となる場合があるため、基本的に潤滑剤としては使用しないが、麻酔目的などで医師からの指示があった場合はショック症状などの出現に十分注意する
チューブ挿入後、スースーという呼吸音や呼気に伴い、チューブが曇っている場合、あるいは咳嗽が強く、呼吸苦などが見られる場合は、気管に誤挿入されている可能性があるのでチューブを全抜去し、最初から手順をやり直す
- 胃内にチューブが正しく挿入されていない場合にも、心窩部に反響した気泡音が聴取できる場合があるため、十分な注意が必要である。
チューブが誤挿入された状態で栄養剤の注入を行うと、最悪の場合、肺炎を引き起こし、死に至ることがあるので細心の注意を払う
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