目次
目的
- PaO2とPaCO2の基礎知識について理解を深め、適切なケアを行う
動脈血酸素分圧(PaO2)
PaO2と酸素解離曲線
- 酸素は膜の透過性、溶解性ともに低いため、酸素輸送はヘモグロビンと結合することで可能となる
- 酸素解離曲線は、PaO2とヘモグロビン(Hb)、酸素の結合度(ヘモグロビン酸素飽和度)の関係が表されている
- 標準的曲線はpH7.40、PaCO2 40Torr、温度37度の条件において適用される
酸素解離曲線の平坦部(上方部)
- PaO2が100Torrに達した場合、ヘモグロビンはほぼ完全に飽和された状態となる
- PaO2をさらに上昇させても、酸素の輸送にはほとんど貢献しない
- PaO2が95Torrから70Torrに低下しても、酸素ヘモグロビン量の変化は、非常にわずかである
- このような状態に陥る要因、例えば中程度の肺疾患があっても、酸素ヘモグロビン量は有意に低下しない
酸素解離曲線の急唆部分
- PaO2が60Torrから30Torrまで低下した場合、酸素ヘモグロビンの量は大きく減少する
- 酸素の輸送に重大な支障をきたす
酸素解離曲線の移動
- 酸素解離曲線の基本形はS字型
- ただし、pH、PaCO2、温度、2.3BPG(2.3-ビスホスホグリセリン酸)によって、S字のカーブが左右へ移動する
- 右方移動:ヘモグロビンが酸素を離しやすい状態になるため、酸素はヘモグロビンから放出され、多くの酸素が組織へと供給される
- 理由:アシドーシス、PaCO2・温度の上昇など
- 左方移動:ヘモグロビンの酸素親和性は増大する
- 理由:アルカローシス、PaCO2・温度のが下降など
動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)
PaCO2と二酸化炭素の輸送
- 代謝によって二酸化炭素を産生し、静脈血液に溶解されることで、肺へと運搬される
- 静脈血液が肺胞気の肺胞と接触した時に、二酸化炭素は肺胞気へと移行する
- 大気中に存在しているPaO2は非常に小さい
- 肺毛細血管血のPaCO2 = 肺胞気のPaCO2の量 と考えてよい
- PaCO2は、静脈血液経由で運ばれてくる二酸化炭素の量(産生量)に比例する
- PaCO2は、二酸化炭素を受け取る肺胞気の量(肺胞換気量)に反比例する
PaCO2と死腔
- 実際に呼吸をする場合、呼気の一部を再吸入することは回避できない
- 再吸入されてしまう呼気が存在する部分を、解剖学的死腔とよぶ
- 鼻腔・咽・喉頭、気管、気管支などが該当する
- 呼気の際、吸入量が増えると、死腔の増加によって吸入気のPaCO2が増加する
- 結果的に、静脈血液から肺胞気への二酸化炭素の移行量が減少し、PaCO2が上昇する