目的
- ガス交換の異常について理解を深め、適切なケアを行う
ガス交換の異常
- 血液ガスデータは、ガス交換異常の理由を、以下の2つに分けて考える
- 酸素化不全(酸素化の異常)
- 換気不全(換気の異常)
酸素化不全 = 呼吸不全の状態
- 酸素分圧(PaO2)が低下したを、低酸素血症という
- 呼吸不全とは、室内空気下で PaO2≦60 の状態
- 呼吸不全はさらに、PaCO2の値により、Ⅰ型・Ⅱ型に分けられる
低酸素症と低酸素血症
- 低酸素症:組織が低酸素になった状態(組織の酸素分圧が低下)
- 低酸素血症:動脈血液が低酸素になった状態(動脈血液の酸素分圧が低下)
- 低酸素血症は低酸素症を引き起こすことがある
- 一方、低酸素血症があれば直ちに低酸素症となるわけではない
修正しました(2016/11/29)
- 動脈血液の酸素下の指標はPaO2、組織の酸素分圧の指標はPvO2(混合静脈血酸素分圧)である
低酸素性の分類
低酸素血症性低酸素症
- ガス交換障害によって起こる低酸素血症
- 肺胞低換気、シャント、拡散障害、換気血流比不均等分布などが原因である
貧血性低酸素症
- 組織に酸素を移送するヘモグロビンの低下により、血液中の酸素含有量が減少することでおこる
- PaO2は正常である
貧血以外に一酸化炭素中毒やメトクロビン血症など異常ヘモグロビンが増加する場合も、酸素含有量は減少する
低心拍出性低酸素症
- 循環不全やショックなどで心拍出量が低下し、十分な酸素が末梢の組織まで運ばれないことでおこる
- PaO2は正常、あるいは低下
酸素利用障害
- 硫化水素中毒、青酸中毒などが原因
- ミトコンドリアの内部にある電子伝達系が障害されることで、酸素が利用できなくなっておこる
- PaO2は正常あるいは上昇する
酸素消費性低酸素症
- 発熱、けいれん、敗血症など組織の代謝が亢進などにより酸素消費量が増加することでおこる
- PaO2は正常、あるいは低下
- 混合静脈血酸素分圧が著明に低下するのが特徴である
低酸素血症のメカニズム
- 低酸素血症は、肺実質における酸素化不全(ガス交換障害)、換気不全(換気の障害)のいずれによっても起こる
- 肺実質におけるガス交換障害は、拡散障害、シャント、換気血流比(VA/Q)不均等分布でおこる
肺実質におけるガス交換障害の原因である、拡散障害、シャント、換気血流比(VA/Q)不均等分布では、高二酸化炭素血症は引き起こさない
- 肺胞低換気により、換気不全がおこり、高二酸化炭素血症を引き起こす
- 血液ガスデータで高二酸化炭素血症が認められたら、肺胞低換気が関与していると考える
- 低酸素血症の要因は、拡散障害、シャント、換気血流比不均等分布、肺胞低換気など
低酸素血症の要因である拡散障害、シャント、換気血流比不均等分布、肺胞低換気が、単独もしくは混在している場合がある
呼吸不全の分類
- Ⅰ型呼吸不全:PaCO2≦45Torr (肺胞低換気なし)の呼吸不全
- Ⅱ型呼吸不全:PaCO2>45Torr(肺胞で換気あり)の呼吸不全
肺実質におけるガス交換障害の成因
拡散障害
- 拡散障害とは、肺毛細血管への酸素の受け渡しに障害がおきた状態
- 正常な場合、(毛細血管を流れる)静脈血液が肺胞と接触する際にガス交換が行われる
- 酸素が取り込まれるのと同時に二酸化炭素が拡散(排出)される
- 毛細血管と肺胞の間は、血液空気関門と呼ばれるⅠ型肺胞上皮細胞、基底膜、毛細血管内皮などがあり、ガス交換はこれらを通して行われる
- 血液空気関門が何らかの原因で肥厚している状態の場合、肺胞から毛細血管への酸素の移動に時間を要するため、十分な酸素が供給されず、低酸素性をきたす
- 拡散障害の場合、二酸化炭素の排出も障害される
- しかし、二酸化炭素の拡散は酸素と比較しても、酸素の数十倍と非常に早いため、生理学的に問題になるような高二酸化炭素血症をきたすことはない
シャント
- シャントとは換気のない肺胞へ血液が流れること
- シャント部の血液は動脈血化されず、静脈血液がそのままの状態で動脈に戻る
- 結果的に、低酸素血症の原因となる
- この部分では換気が全く行われていない状態である
- FIO2を上昇させても、酸素化が改善されることはない
- 酸素吸入でも改善が見られない低酸素血症は、シャントの存在を考える
- シャントがある肺胞:大気と断絶され、全く換気が不可能になる
- その部分を通る血液は酸素化を受けることができない
- 静脈血の状態のまま、もう一方側からの血流と合流する
- 体循環動脈血液の酸素化の程度:酸素化不良の部分の影響を強く受ける
- この場合にFIO2 1.0の酸素吸入を行うとどうなるか
- シャントがある肺胞は、酸素吸入の効果は得られない
- 正常な肺胞のPaO2は酸素吸入のため、高い値を示す
- 合流後、体循環動脈血液の酸素化には大きく関係しない
- シャントにより低酸素血症の改善を試みる場合
- 人工呼吸などで虚脱した肺胞を開く必要がある
- ポイントはPEEP (呼気終末陽圧)である
換気血流比不均等分布
- 肺胞の場所によって、血流の状態と換気の状態は異なる
- これにより、肺の各区域から肺静脈に流入する動脈血液の酸素化の程度が異なる
- 換気血流比不均等分布とよぶ
- 例えば、仰臥位の場合、血流は重力の影響で腹側よりも背側に多くなる
- 自発呼吸による換気
- 下方の背側部の横隔膜の動きが大きくなる
- 血流の多い背側部での換気が良好となる
- 人工呼吸管理による換気
- 上方の腹側横隔膜の動きが大きくなる
- 血流の多い背側よりも腹側の肺の換気が良好となる
- 酸素の程度が異なる毛細血管終末血が混合した場合
- 最終的な動脈血液の酸素化の程度は酸素化不良の部分の影響を強く受ける
- これは酸素解離曲線でのSaO2とPaO2の関係に起因している
- 換気血流比不均等分布によるPaO2の低下は、酸素吸入を行うことにより改善する
シャントの時と比較し、酸素吸入の効果が違うことに注意
換気の異常
高二酸化炭素血症
- 高二酸化炭素血症は、肺胞低換気が原因でおこり、低換気不全ともいわれる
低酸素血症とはメカニズムが違うことに注意
肺胞低換気
- 肺胞低換気は、ポンプ機能の障害である
- 二酸化炭素の産生量に見合った肺胞換気量が得られないことでおこる
- 室内空気下でPaCO2が上昇すると、PaO2は低下する
- 血液ガスデータでみると
- 換気が正常に行われている場合:PaCO2は正常
- 肺胞低換気状態がある場合:PaCO2は上昇
- 換気が過剰に行われている場合:PaCO2は低下し、過換気とよばれる状態になる
- もう1つの換気の指標に、分時換気量がある
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