目次
目的
- 呼吸状態(視診)からの病状アセスメントについて理解を深め、適切なケアを行う
視診とは
- 視診とは、視覚的に患者の病態を把握する手技のこと
- 呼吸状態、チアノーゼ、浮腫、頸静脈の怒張、胸郭の形状、頸部の呼吸補助筋の活動などを観察する
呼吸状態
観察項目
- 呼吸数、深さ、リズム、喘鳴や咳嗽の有無
アセスメント
- 口すぼめ呼吸:COPD(慢性閉塞性肺疾患)の可能性あり
- 呼吸補助筋の活動性が亢進している場合:呼吸障害の可能性あり
姿勢・体位
観察項目
- 起坐位になっているかどうか
アセスメント
- 肺水腫、気管支喘息の発作、慢性呼吸不全の急性増悪などのとき、起坐位の体位をとる場合が多い
頸部
観察項目
- 頸静脈の怒張
- 呼吸補助筋の活動性
アセスメント
頸静脈の怒張
- 中心静脈圧の上昇 → 右心負荷により、肺性心へ移行する可能性あり
- 45度のベッドアップを施行し、頸静脈の怒張が見られる場合は”異常”
呼吸補助筋の活動性
- 斜角筋や胸鎖乳突筋の活動性の亢進 → 呼吸障害の可能性あり
胸部
観察項目
- 胸郭の左右対称性があるか
- 胸郭の前後径の増大があるか
- 奇異呼吸があるか
アセスメント
胸郭の左右非対称
- 肺炎、気胸、肺水腫など、片側の疾患あるいは胸郭・脊柱の変形によりおこる
胸郭の前後径の増大
- 肺の過膨張が原因で、FRC(機能的残気量)の増大が見られる(樽上胸郭)
奇異呼吸
- Hoover(フーヴァー)徴候:横隔膜の平坦化が認められる
胸郭の形状と原因
- 患側の扁平化・陥没:滲出性胸膜炎や陳旧性肺結核による片側胸膜の無気肺や高度の癒着
- 患側の拡大:気胸、大量の胸水貯留
- 胸骨下部の陥没:先天的な漏斗胸
- 胸骨下部の突出:ハト胸(原因がくる病の場合もある)
- 前後径の拡大:樽状胸郭(COPD)
- 前後径の低下:扁平胸(胸膜癒着、広範、両側の肺萎縮)
- 脊柱の弯曲:脊柱骨関節炎、脊椎カリエスが原因であり、後側弯が多い
その他
観察項目
- チアノーゼ
- 下肢の浮腫
- ばち指
アセスメント
チアノーゼ
- 低酸素血症によって起こる
- 中心性:動脈血酸素含有量の低下が起こっており、口唇にみられる(心疾患、呼吸器疾患)
- 末梢性:毛細血管の収縮に伴って、末梢の組織が酸素不足に陥った状態のことをさし、爪、指、耳にみられる
- 毛細血管内血液の中にある還元ヘモグロビンが5g/dl以上となったときに、毛細血管が豊富な口腔内粘膜、口唇、耳介、爪床、四肢末端などの表皮が、青紫から暗赤色に変化する
下肢の浮腫
- 心原性の浮腫、静脈還流の低下
ばち状指
- 手指、足趾の軟部組織が末梢循環障害によって増殖し、手掌側に爪の弯曲が増強した状態
- チアノーゼをきたす心疾患、肝硬変、気管支拡張症、間質性肺炎、化膿性肺疾患などの疾患によって起こる