時計描画テストの実際

目的

• 時計描画テストについて理解を深める

概要

• 時計の絵を紙に書いてもらうだけの簡単な知能検査である
• 患者の動作性機能を調べることが可能である
• 患者の教養には左右されず、時間もかからず拒否されにくいという利点がある
• 時計描画検査、時計描画法、CD（clock drawing）テストなどと呼ばれる場合もある

検査の進め方

1. B5サイズの紙を3枚（A、B、C）準備する
2. Aは白紙、Bは直径8cmの円を描いておき、Cには直径8cmの円と文字盤（数字）のみ描いておく
3. 患者にAの用紙を渡し、「時計の絵を描いて下さい」と伝える
   「1～12までの数字」など、ヒントを与えないように注意する
4. Bの用紙を渡し、「この円の中に、数字だけを書き込んで下さい」と伝える
5. Cの用紙を渡し、「10時10分の針を描いて下さい」と伝える

評価のポイント

• 時計を正確に描くことができているかで、認知症であるかどうか、認知症の進行度などを判断する

初期の認知症の場合

• 数字の11と12が描けない、描き忘れる
• 数字を1から順に書く場合、1～12までの数字が円の中にうまく納まらない
• 円が小さすぎて文字を描ききれない場合があり、再度挑戦しても、大きな円を描けない

中期の認知症の場合

• Cのテストで、「10時10分」が描記できず、「10時50分」になっている

アルツハイマー型認知症に特徴的な描き方

• 数字が逆時計回りに描かれたり、12以降の数字まで過剰に描いている
• 「トケイ」などと、文字で時計をあらわす
• 針を描かない
• 配列の乱れ（数字が2列に並んでいるなど）や、数字の欠損・完全消失

レビー小体型認知症で嗜眠（意識障害）がある場合

• 筆圧が弱く、円の数字やラインが乱れる
• 数字が円の外にはみ出す

採点基準

Aのテスト

• 文字盤の輪郭：キレイな円が描ければ1点、円が全く描けなかったら0点
• 円が描けない、円のサイズが不適切（小さすぎ、大きすぎ）、ゆがんでいる、2重になっているなどの場合、0.5点を減点する

Bのテスト

• 数字が2個連続で描かれたら1点、最高6点
• 以下の異常があたっら、0.5点の減点
  • 数字が消える：数字以外が描かれる、何も描かれないなど
  • 数字が違う：数字が多すぎ・少なすぎ、同じものがある、違う数字を描くなど
  • 位置が違う：偏りがある、数字の向きが違う、逆回転するなど
  • 表示方法が違う：余分なものを描く、鏡像になる、時間と分を混合するなど

Cのテスト

• 針が1本描けたら1点、2本で2点
• 以下の異常があたっら、0.5点の減点
  • 針が描けない：デジタル表示、針がない、針先をマーキングするなど
  • 分が上手く描けない：10時50分と描く、12時になっているなど
  • 本数が違う：3本以上描くなど
  • 位置が違う：曲線になっている、10時10分ではない、中心を通らないなど
  • 針の形・方向が違う：短い、あいまい、向きが違うなど

アセスメント

• 結果は患者の生活能力の低下を反映している
• 時計が描けない＝家事の遂行能力や車の運転能力の低下をあらわす
• 日常生活を送るためには、周囲のフォローが必要である