目的
- 二次性認知症についての理解を深め、適切なケアを行う
概要
二次性認知症の原因疾患には以下のものがある
脳内病変が原因のもの
脳を圧迫する疾患
- 脳腫瘍、脳膿瘍、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫
- 頭部外傷後遺症
- 慢性硬膜下血腫の特徴
- 飲酒歴があり、やせ形の男性の左大脳半球に起こりやすい
- 飲酒の影響だけではなく、転倒により頭部を打撲し、硬膜とくも膜の間に血腫=硬膜下血腫 ができることがある
- 硬膜下血腫を起こしていても、頭痛などの症状をを訴えない場合が多い
- 転倒してから1ヶ月を経過した辺りから徐々に、認知機能の低下、歩行障害、流涎、姿勢の傾きや箸を落とすなど、運動機能障害の症状が出現して、初めて分かることも多い
- 血腫が軽度の場合、自然吸収される場合もあるが、片麻痺などの症状が出現した場合は、手術が必要である
自己免疫疾患
- 神経ベーチェット病、多発性硬化症
感染症
- AIDS脳症、クロイツフェルトヤコブ病、進行麻痺、単純ヘルペス脳炎(後遺症)
全身性疾患に伴うもの
甲状腺機能低下症
- 甲状腺機能低下症のような内分泌・代謝異常などが生じると、思考力の低下が起こり、認知症に似た症状となる
- 甲状腺機能低下症はしばしばアルツハイマー型認知症を合併することがある
- 顔がむくんで表情に乏しく、総コレステロール値が270mg/dl以上の女性で疑われる
- 血液検査にて確定診断が可能である
アルコール依存症
- 長期的に不健康な生活を送っていることが多いため、動脈硬化症、脳血管障害、糖尿病、肝機能障害などを合併している場合がある
- 比較的肝臓や膵臓の障害は少ないことが多いが、易怒性や暴力などの行動・心理症状が認められる
- 痩せた初老期や老年期の男性に多い傾向があり、転倒による急性硬膜下水腫や慢性硬膜下血腫にも注意が必要
- 血液検査にてビタミンB1の不足が見られることがある
脳内病変によるもの
ヘルペス脳炎
- 記憶障害、失語、幻覚、異常行動が見られることもある
- 単純ヘルペス脳炎は重症化することが多く、けいれんの頻発や昏睡に近い意識障害の状態に陥ると、予後は非常に不良である
- 病理学的視点でみると、脳炎が生じる部位は大脳辺縁系や側頭葉が多い
- それらの部分に壊死がみられ、ウィルス攻撃の残骸が神経組織にみられる
- 治療法は:抗ウィルス薬の投与
- すでに側頭葉が激しい攻撃にさらされている場合、たとえ命が助かっても、記憶障害などの認知症状が、後遺症として残る場合もある
クロイツフェルト・ヤコブ病
- BSE(狂牛病)と同じ亜急性海綿状脳症を起こすことで知られている
- 平均的な発症年齢は60代後半
- 発症後2~3ヶ月経過すると、急激な発語の減少、認知機能低下、歩行困難などの症状がみられるようになる
- 発病直後は頭痛・倦怠感・不安感などの不定愁訴から始まることが多い
- 初期の段階での確定診断は難しい
アセスメント
- 看護師の日常業務上でMCIが疑わしい患者がいた場合、チェックリストなどを用いて認知機能の状態を把握することも必要である
- ただし、いきなり認知症や認知機能検査などの言葉は使わず、十分な配慮を行う
- 必要に応じて、家族からのヒアリングなども行い、総合的に判断することが必要