目次
目的
- 認知症の基礎知識について理解を深め、適切なケアを行う
認知症の概要
- かつて「痴呆症」とよばれていた認知症は、発症したら有効な治療方法はないとされていたが、現在では早期発見・早期治療が必要な疾患であると捉えられている
- 早期から適切な治療を始めることにより、症状の改善や進行を遅らせることが可能な場合もある
- 多くの場合、認知症は突然発症するわけではなく、徐々に進行していくため、本人や家族も気づきにくいのが特徴である
認知症の定義
- 進行性である
- つぎの症状(=中核症状という)のうち、2つ以上が該当する
- 記憶障害
- 見当識障害
- 判断力の障害
- 性格の変化
- 高次脳機能障害
- 実行機能障害 など
- 精神的疾患や、知的障害は含まれない
- 独立した生活、社会的な活動が困難になり、支援や介護が必要になる
- 就業が困難となる
認知症の初期症状
- 記憶障害:ものの置き忘れが増え、探し物をする頻度が高くなる など
- 見当識障害(失見当):時間や状況、自分が今居る場所がわからなくなる など
- 判断力の障害:料理の失敗など、物事を順序立てて行う行動で失敗する など
- 性格の変化:頑固になる、怒りっぽくなる など
- 高次脳機能障害:失語・失行・失認 など
- 実行機能障害:毎日、同じ服ばかりを着ている、季節にあった服装ができない など
老化と認知症の違い
老化
- ”忘れやすい”という自覚がある
- 日常生活には支障をきたさない
- 体験したことの一部を忘れるので、ヒントがあれば思い出せる
- 判断力や思考力は変化していない
- 年月日を間違えることはあるものの、季節に対する感覚は正常である
認知症
- ”忘れた”という自覚がない
- 日常生活に支障をきたしている
- 体験したことそのものを忘れるので、ヒントがあっても思い出せない
- 判断力や思考力に低下がみられる
- 時間や場所、季節などがわからなくなる
老化と認知症のもの忘れの違いの例
老化の場合
- 朝食に何を食べたのかが思い出せない
- 道で会った人の名前が思い出せない
- いずれも、ヒントがあれば思い出せる
認知症の場合
- 朝食を食べたこと自体を忘れる=「食べていない」と主張する
- 道で会った人の顔を忘れている=「知らない人だ」と主張する
- いずれも、本人にとっては「その記憶はない」ことになっているので、ヒントがあっても「知らない」という
認知症のタイプと患者割合
- 認知症にはいくつかのタイプがある
- それぞれの患者割合の推計はあるが、元となるデータによって多少の誤差があることを理解しておく
- アルツハイマー型認知症:推計 50~60%
- レビー小体型認知症:推計 10~20%
- 脳血管性認知症:推計 5~15%
- 1と3の混合型認知症:推計 5~10%
- 2と3の混合型=レビーミックス
- 前頭側頭型認知症(ピック病を含む):推計 2~5%
- その他:推計 およそ5%
- 加齢に伴う脳への変化が原因となる場合、複数の要因を併せ持っていることも多い
- 認知症のタイプによってみられる症状に違いはあるものの、病理学的な診断は難しい
- 例えばアルツハイマー型に特徴的な”病理学的な脳に対する実質的変化”やその度合いは、実際に脳組織を採取しないと正確には把握できない
- 病理学的な脳の変化の度合いと、実際にみられる”臨床的な症状”は比例しない
患者数と今後の予測患者数(厚生労働省推計)
- 平成22年に厚生労働省が行った推計では、患者数は以下のようになっている
- 認知症高齢者(日常生活自立度Ⅱ以上、介護保険利用):約280万人
- 日常生活自立度Ⅰ又は要介 護認定を受けていない人:約160万人
- 軽度認知障害(MCI)で、正常と認知症の中間の人:約380万人
- 全国の65歳以上の高齢者のうち、認知症であると推定される人は約15%
- 同様に、MCIは13%と推計
- 各年齢の認知症有病率が一定で推移した場合
- 2015年の推計値は517万人
- 2025年までに認知症の患者は約730万人 → 高齢者の5人に1人が認知症