認知症とせん妄の違い

目的

• せん妄と認知症の判別について理解を深め、適切なケアを行う

せん妄とは

• せん妄とは脳機能の失調によって起こる注意障害を伴った、軽い意識の曇りが基となる症候群をいう
• 一般病院の入院患者でも10～30％程度に発症するため、決して珍しい状態ではない

せん妄の症状

注意力や自分を含めたその場の状況を理解する能力が低下する

• 注意力散漫
• ぼんやりしている
• 相手と目を合わせない
• 徘徊

正しい判断や行動をするための脳の機能が低下する

• 記憶が曖昧になる
• 幻覚
• 錯覚
• 妄想
• 夜間せん妄が見られる

せん妄のタイプ

過活動型

• 興奮、過活動が主体であり、夜間徘徊、転倒、点滴抜去などをすることがある。時に抑制も必要となる

低活動型

• 低活動ではあるが、意識障害、内的不穏は持続している状態。うつ病や不眠症と誤診しやすく、脳血管障害の後遺症で起こりやすい。夕方から起こることがある

混合型

• 過活動型と低活動型を併せたタイプ。最も医療者が把握しづらいタイプ

高齢者のせん妄の原因

• 病気（脳疾患、代謝障害、循環障害、呼吸障害など）
• 薬物
• ストレス（不安や緊張などの心理的ストレス、便秘や不眠などの身体的ストレス）
• 環境の変化（入院、部屋の移動など）
• 身体拘束

アセスメント

• せん妄が一過性の場合、認知症は否定されることが多い
• 過去に一度でもせん妄を引き起こしたことのある高齢者は、認知症のハイリスク群
• 頻回にせん妄を起こす場合は認知症が疑われる
• レビー小体型認知症の場合、意識障害を伴うことが多く、せん妄が好発しやすい

認知症との判別

• 認知症…脳機能の欠損によって起こる
  • 意識レベル：意識混濁、注意力散漫
  • 発症の経過：数時間から数日のうちに急激に発症
  • 日内変動：あり
  • 経過：一過性
• せん妄…脳機能の失調で起こる
  • 意識レベル：正常
  • 発症の経過：数か月から数年かけて徐々に症状が著明となる
  • 日内変動：中核症状の変動なし
  • 経過：慢性的に進行する