目的
- 排痰のメカニズムについて理解を深め、適切なケアを行う
重力による痰の移動
- 痰には自動運動の能力がないため、重力の影響を受けやすい
- 一般的には、自力で立位・坐位・歩行などが出来る場合、痰は動作に従って重力の影響を受けるため、様々な方向に移動してる
- 臥床傾向にある患者の場合、身体にかかる重力の方向が変わらない時間が長くなり、痰の移動頻度は減少する
→ 結果的に、末梢気道において痰が貯留しやすくなる
→ 痰の貯留による肺炎などの感染症のリスクが高くなる
排痰のポイント
- 自力排痰に必要な要件は気道クリアランス以外に、それをサポートする「重力」「粘性」「空気の量と速度」が必要である
重力
- 重力の利用により、痰を移動させる
- 具体的な援助:体位ドレナージ、早期離床などを適宜行う
粘性
- 適切な粘性を保つことで、痰をスムーズに移動させる
- 具体的な援助:湿度管理、体液量の維持、去痰剤の使用、呼吸療法時の適切な加湿などを適宜行う
空気の量と速度
- 速度と量を持った空気(咳嗽)により、痰を気道外に排出させる
- 具体的な援助:咳嗽抑制リスク(疼痛など)の除去、呼吸筋・腹筋の強化を適宜行う
粘性を調整する
- 痰の90%以上は水分からできているため、痰の粘性や硬さに、身体内の水分量が大きく影響する
- 気道が乾燥している場合、痰に含まれる水分は減少する
- 水分量が低下すると、痰は粘性を増し、気道に停滞しやすくなる
- さらに繊毛運動が阻害され、痰の移動が困難となる
痰の水分を調整するためのポイント
- 湿度管理:加湿器などを使用し、病棟・病室内の湿度を50%以上に保つ
- 体液管理:痰の水分量は、全身の水分量のバランスに影響を受けるため、水分出納バランスをしっかり管理する
- 去痰剤の使用:必要時は、薬剤を使用して痰の粘度を調整する
- 呼吸療法時の適切な加湿:酸素投与や気管切開などを使用する場合は必須
アセスメント
- 排痰の3つのポイント(重力・粘性・空気の量と速度)を適切に評価したか
- 状況に応じて、適切な看護援助を行っているか
- 気道の温度や湿度管理が適切であるか、または呼吸理学療法の併用についても検討を行う
- 正確に評価をするために、分泌物の性状や量を観察しているか
- 状況により評価が変わるため、記録をしておく