口腔内吸引と鼻腔内吸引の基礎知識

口腔内吸引と鼻腔内吸引の基礎知識【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2015年6月15日
最終更新日:2020年6月29日
(変更日:2020年6月30日) ※

目的

  • 口腔内吸引と鼻腔内吸引の基礎知識について理解を深め、適切なケアを行う

吸引を行う理由

  • 痰の貯留に伴う合併症などの防止
  • 体位ドレナージなどの援助を行っても、自力での喀痰が困難な場合、排痰をサポートする
    必要以上の吸引は患者の苦痛が増強するだけでなく合併症のリスクが増大するため、必要最低限とする
  • 適応
    • 人工気道(気管切開、気管挿管など)を行っている
    • 自力による効果的な排痰ができない

吸引の種類

鼻腔内吸引

  • 鼻腔から咽頭にある痰を吸引する
  • 気管へのカテーテル挿入は、手技が困難であり、喉頭周囲を傷つけるリスクが高い
    吸引カテーテルは、気管内まで挿入しないこと
  • 鼻腔には多くの微生物が存在しているため、感染リスクが高い
    • 鼻腔を通過したカテーテルには鼻腔内の微生物が付着しており、そのまま気管に入ると、鼻腔内の微生物が気管まで侵入するため

口腔内吸引

  • 口腔から咽頭にある痰を吸引する
  • 気管へのカテーテル挿入は、手技が困難であり、喉頭周囲を傷つけるリスクが高い
    吸引カテーテルは、気管まで挿入しないこと
  • 多くの場合、咽頭反射を誘発することに留意する
    • 患者への苦痛が増強するため気管に向けての吸引は避ける

気管内吸引

  • 気管内の痰を吸引する
    気管内挿管、あるいは気管切開が行われている患者に限り、適応となる
  • 開放式気管吸引と閉鎖式気管吸引の2種類がある
気管内吸引は感染予防の為、清潔(無菌)操作を徹底する

吸引器の構造

  • 中央配管とのアダプター、陰圧管、吸引瓶、吸引圧調整ダイアル、吸引管から成り立つ
  • 吸引器を組み立てた後は、アダプターを中央配管に挿入する
  • 十分な吸引圧がかかることを確認する
  • 十分な吸引圧がかからない場合は、以下の点を確認する
    • 中央配管とアダプターにきちんと接続されているか
    • 吸引瓶の蓋がきちんと閉じているか
    • 陰圧管がきちんと接続されているか
感染予防のため、吸引瓶ではなく、ライナータイプ(使い捨ての内袋)やプラスチック製のディスポーザブル容器を使用する施設が増えている
在宅などの場合、中央配管の代わりに、電動のポータブル吸引器を使用する

吸引カテーテルの種類

  • 気管チューブの太さや形状など、様々な種類がある
    • カテーテルのサイズに応じてアダプターの色に違いがある
    • 吸引部位や体格によって、適切なものを選択する
  • 目盛りがついているものは、挿入時の目安になる
  • アダプター(吸引管との接続口)の形状
    • 吸引圧調節口があるもの/ないもの
  • 末端開口部(気道内へ挿入する先端部)の形状
    • 先端は鈍的に処理されている:気道粘膜損傷防止のため
    • あらかじめ、先端に角度のついたもの(アングルタイプ)もある
吸引カテーテルは基本的にディスポーザブルとし、吸引後は感染性廃棄物として処理する

吸引によるリスク

  • 吸引によっては病状の悪化を招くことがある
  • 原則的には禁忌とはならないが、以下の場合は十分に注意する必要がある

低酸素血症

  • PEEP(呼気終末陽圧換気)を行わなければならない状態
  • FiO2(吸入酸素濃度)を100%(1.0)にしないと、呼吸(酸素化)が維持できない状態

低心機能・心不全

  • 抗不整脈薬・昇圧剤などの循環作動薬を多く必要とする状態

出血傾向

  • 血栓溶解薬投与中、重度の肝機能障害、DICなど、小さな刺激でも容易に出血する可能性がある状態

頭蓋内圧亢進症状

  • 脳梗塞、クモ膜下出血、頭蓋内出血など、頭蓋内圧が亢進していると考えられる状態

アセスメント

  • 吸引の適応であるか、吸引可能な状態であるか
    • 吸引の適応となる状態
      • 努力性呼吸が増強している
        • 呼吸数の増加、呼気の延長、浅くて速い呼吸、陥没呼吸など
      • 気管内チューブに分泌物が認められる
      • 聴診で、気管周囲に断続性ラ音が認められる、あるいは呼吸音の弱い部分がある
      • 触診で、肺のガス(空気)の移動に伴う振動がある
      • 誤嚥、または誤嚥の可能性がある場合
      • 喀痰検査のサンプルを採取する場合
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