吸引の実際 3 気管吸引を行う準備

吸引の実際 3 気管吸引を行う準備【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2015年6月19日
最終更新日:2018年11月05日
(変更日:2019年9月17日) ※

目的

  • 気管吸引を行う準備について理解を深め、適切なケアを行う

気管吸引とは

  • 人工気道を含む気道から、吸引カテーテルを用いて、機械的に気管内分泌物(痰など)を除去するための、準備・実施・実施後の観察・アセスメント・感染管理を含む、一連の流れのことをいう
  • 安楽な換気が出来ること(呼吸仕事量や呼吸困難感を軽減すること)への援助
    • 気管内分泌物(痰など)による気道の狭窄・閉塞により、換気が十分に行われていないと考えられる場合を除き、必要以上の気管吸引は行わない
  • 気管吸引は、口腔吸引・鼻腔吸引と比較し、より侵襲的な苦痛を伴う処置である

気管吸引を行う目的

  • 気管吸引の目的は気道の開放性を維持・改善すること
    • 呼吸仕事量(努力呼吸)や呼吸困難感を軽減する
    • 肺胞でのガス交換能を維持・改善する

気管吸引を行う実施者の要件とは

気管吸引の実施者は、以下の要件を満たすことが望ましい

  1. 気道や肺、人工気道などに関する、十分な解剖学的知識がある
  2. 患者の病態について、十分な知識がある
  3. 適切な使用器具の名称を理解し、適切な手技が実施できる
  4. 気管吸引の適応と制限を十分に理解している
  5. 胸部理学的所見などから、適切なアセスメントができる
  6. 合併症と、合併症が生じたときの対処法を理解し、実践できる
  7. 感染予防や器具の消毒・滅菌に関して、正しく理解している
  8. 経皮酸素飽和度モニタを理解している
  9. 侵襲性の少ない排痰法(呼吸理学療法など)を十分理解し、実践できる
  10. 人工呼吸器使用者に対して行う場合は、人工呼吸器のアラーム機能と、トラブル対応に関する操作法を理解している

気管吸引方法の選択

  • 気管吸引には、開放式吸引と、閉鎖式吸引がある
  • それぞれの主な適応と方法について、十分理解する
  • それぞれの吸引カテーテルの特徴を理解する
これらの内容を理解した上で、どちらの方法が適切であるかを検討する

開放式吸引の特徴

  • 人工気道を一度開放することになるため、気道が微生物で汚染される可能性が高い
  • 無菌操作を徹底して行う
  • 滅菌済みカテーテルは、原則的に単回使用とする
    • 在宅などで単回使用が難しい場合は、使用の都度、適切な洗浄と消毒を行う
  • 一時的に人工気道からの酸素供給が途絶えるため、呼吸状態の変化に十分注意する

閉鎖式吸引の特徴

  • 口腔(あるいは鼻腔)の気管チューブ(挿管チューブ)と、閉塞式気管吸引カテーテルを直接連結して吸引を行う
  • 気管チューブ(挿管チューブ)と人工呼吸器回路の接続は外さない
  • 人工呼吸器の回路などを接続したまま、吸引を行うことができる
  • 吸引中も酸素供給を継続できるため、低酸素血症のリスクを軽減できる
  • 気道感染のリスクは、開放式吸引と同等か、より低くなる可能性がある

 

気管感染のリスクについては、閉鎖式の方が開放式より明らかに優れているというエビデンスはないが、人工気道を開放しないため、酸素化と肺容量の維持という点では、明らかに優れていると考えられている
最近では、閉鎖式吸引カテーテルを使用する例が、増加しつつある
開放式吸引は感染のリスクが高い手技であることを理解し、無菌操作を徹底することが重要
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