吸引の実際 4 開放式気管吸引

吸引の実際 4 開放式気管吸引【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2015年6月22日
最終更新日:2021年11月9日
(変更日:2021年11月9日) ※

目的

  • 開放式気管吸引について理解を深め、適切なケアを行う

閉鎖式吸引との違い

  • 開放式吸引の場合、回路を開放して吸引を施行するため、微生物で汚染されるリスクが高く、無菌操作に注意が必要である

必要物品・準備

  • 個人防護具(マスク、ゴーグル、エプロン、未滅菌手袋)
  • 吸引セット(吸引器、吸引瓶、吸引管)
  • 吸引用カテーテル(成人の場合、10~12Fr)
  • 滅菌手袋
  • 滅菌水または生理食塩液
  • アルコール綿
  • ポート用シリンジ
  • 水道水(ケア終了後の通水用)
  • 聴診器
  • パルスオキシメーター

方法

  1. 患者に吸引を行う必要性を説明する
    • 吸引中、患者は発声困難となる
    • 苦痛を感じた時に吸引を中断する合図を事前に決めておくと良い
  2. 衛生学的手洗い(手指消毒)を行う
  3. 個人防護具を身に着ける(感染予防目的)
  4. 予め、口腔内の分泌物(痰など)を除去しておく
    • 口腔内に分泌物が貯留している場合は、事前に口腔吸引を行う
    • 可能であれば、吸引ポートからポート用シリンジを使用し、カフ上部の分泌物を除去しておく
  5. 吸引器のスイッチを入れ、吸引圧を設定する
    • 一般的に、成人の吸引圧は最大で20kPa(150mmHg)が推奨される(気管吸引ガイドラインより)
    • 吸引管を指で塞ぎ、吸引圧がかかることを確認する
  6. 利き手のみ、滅菌手袋を装着する
  7. 回路を外す(人口鼻の場合は、滅菌手袋の台紙など、滅菌状態のところへ置く)
  8. 吸引圧をかけずに、吸引カテーテルを挿入する
    • 自発呼吸のある患者の場合、吸気時にタイミングを合わせて挿入すると、患者の苦痛が少ない
  9. 吸引圧をかけ、吸引テーテルを回転させながら引き抜き、短時間で吸引する
    • 一回につき圧をかけるのは10秒以内を目安とする
  10. 吸引できたら、人工鼻など、回路を再接続する
    1回の吸引動作の中で複数回吸引をする場合は、1 回吸引毎にカテーテル外側をアルコール綿でふき取り、内腔は滅菌水を吸引させて内腔の分泌物をできる限り除去してから次の吸引を行うことを推奨する
  11. 観察を行う
  12. 吸引カテーテルを通水させて吸引管の汚れを流す
    • 分泌物の粘稠度が高い場合は、数回繰り返して汚れを流す
  13. 吸引カテーテルの先端を手に取り、手の中にまとめた状態で、吸引管から外す
  14. 手袋内に吸引カテーテルが収まるよう、手袋を裏返すようにはずす
  15. 使用した吸引カテーテルは、感染性廃棄物として廃棄する
  16. 吸引器のスイッチを切り、吸引管を所定の位置に戻す
    • 個人防護具を外し、廃棄してから衛生的手洗い(手指消毒)を行う
    • 患者の体位を整え、呼吸状態を再度確認する
  17. 問題なければ終了した旨を伝える
    吸引カテーテルを挿入し過ぎると、苦痛を増強させるだけでなく、粘膜損傷を引き起こす要因となるため、予め挿入長さの目安を決めておく
【グローブは滅菌か、未滅菌かについて】
実は、どちらを使用するべきかについてはCDCガイドラインでも未解決(2017現在)
いずれにしてもVAP(呼吸器関連感染症)防止のために、清潔操作が必要不可欠のため、施設のマニュアルに従い清潔に注意し実施すること

アセスメント

  • 吸引前、吸引後に、適切なアセスメントを行う
  • 痰の性状や量、呼吸状態の変化の有無など、観察したことを記録として残す

吸引前

  • 吸引の適応であるか
    • 患者の状態:自力で痰の喀出ができない、気管内への分泌物(痰など)の貯留が確認される

視診

  • 痰や唾液の貯留、浅速呼吸、呼吸数増加などがあるか

聴診

  • 頚部の副雑音、経皮的酸素飽和度(SpO2)の低下があるか
状況に応じて体位ドレナージなどの排痰援助を適宜行い、咽頭まで痰を誘導し、吸引することも必要である
咽頭反射によって嘔気が誘発されやすいときは、誤嚥を防止するためセミファウラー位や、側臥位で顔を横に向けるなどの工夫が必要

吸引後

  • 呼吸状態、循環動態に異常はないか
    • 痰の性状と量、呼吸パターン、呼吸回数、SpO2、モニターの変化など
  • 自発呼吸がある場合、無呼吸になっていないか
    • 呼吸回数の観察を30秒以上行う

注意点

  • 吸引圧が高すぎる場合、気道粘膜損傷の原因となる
  • 気管吸引は無菌操作で行うため、カテーテルを取り出す際、清潔を維持する
  • 吸引カテーテル挿入時、奥まで挿入後、急に吸引圧をかけると粘膜損傷の危険性があるため、必ず吸引圧をかけた状態で挿入する
  • 吸引ポート付きの場合、カフ圧が低下していると気道壁とカフに隙間が生じ、カフ上部に溜まった分泌物が気管に流入する危険があるため、カフ圧の管理も行う必要がある
  • 自発呼吸が見られる患者の場合、吸気時に合わせてカテーテルを挿入すると、苦痛の緩和につながる
  • 気管内挿管の場合、長めの吸引カテーテル(50cm)を使用する
分泌物が十分に引けない場合、安易に吸引圧を上げることは低酸素血症、無気肺、気道粘膜の損傷を引き起こすので避ける
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