緩和ケアの実際 2 疼痛に対する薬物投与

緩和ケアの実際 2 疼痛に対する薬物投与【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2015年6月26日
最終更新日:2018年05月26日
(変更日:2015年6月23日) ※

目的

  • 疼痛に対する薬物投与について理解を深め、適切なケアを行う

WHOが定義する癌疼痛治療指針

  • WHOがん疼痛治療法(WHO方式)は、がん患者に対する鎮痛薬の投与方法について、5つの重要なコンセプトを示している
  1. 経口的に(By mouth )
  2. 時刻を決めて規則正しく(By the clock)
  3. 除痛ラダーに沿って効力の順に(By the ladder)
  4. 患者ごとの個別な量で(For the individual)
  5. そのうえで細かい配慮を(With attention to detail)
  • WHOがん疼痛治療指針が発表された1986年以降、モルヒネの使用を中心としたWHOがん疼痛治療法(WHO方式)が、がん性疼痛の治療法として日本にも広がり始めた
  • 現在はモルヒネ以外にも、フェンタニル、オキシコドン製剤などの強オピオイドが使用可能となり、オピオイド鎮痛薬を中心としたWHO方式は、がん疼痛治療の標準選択となっている
WHO方式が適切に行われた場合、約90%のがん性疼痛は緩和され、末期の患者でも75%以上の痛みが癒されると言われている

コンセプト1 経口投与

  • 経口製剤は、以下の2つに分類される
    • 速やかに鎮痛効果が発現する速放製剤
    • 効果発現時間は遅いが、効果持続時間の長い徐放製剤
  • オピオイドの使用目的:徐放製剤の使用により、安定した血中濃度を維持することで、持続的ながん性疼痛を取り除くこと
    • 速放製剤を定時に投与することでも、同様の効果が得られる
  • 速放製剤の使用目的:突発的な痛みに対し、可及的かつすみやかに痛みを緩和させる
  • 効果的な除痛を図るため、経口投与、持続皮下投与、持続静脈内投与など、それぞれの投与経路のメリット・デメリットを理解する必要がある
オピオイドは経口投与が基本だが、状況に合わせて最適な投与経路を選択することが重要である

コンセプト2 時間を決めて規則正しく

  • 鎮痛薬は、一定の時間間隔で決まった時刻に規則正しく投与することが望ましい
    • 投与量については、患者の痛みの強度に応じた量とする
  • 鎮痛剤投与後、次の投与に関しては、薬効が切れる前に行うのが基本である
    • 継続的に疼痛緩和が図られた状態を維持するため
  • 徐放製剤の場合、含まれるオピオイド量が固定されている
    • 治療開始時には速放製剤の併用により適正な疼痛のコントロールを行う
    • 効果について適宜評価を行い、患者に適した投与量を見つけていくことが重要である(オピオイドタイトレーション)
患者にとって「痛みが楽になった」と感じるのに十分な量になるまで、鎮痛薬を少しずつ増量していくこと

コンセプト3 除痛ラダー

  • 疼痛の強度に応じた鎮痛薬の選択は、WHO 3 段階除痛ラダーに沿うことを基本とする

第1段階:非オピオイド鎮痛薬

  • 痛みが軽度の場合、非オピオイド鎮痛薬(NSAIDs、アセトアミノフェン)を投与する
  • NSAIDs は頓服として内服することが多いが、有効性を確認するために定期的に時間を決めて投与する

第2段階:弱オピオイド鎮痛薬

  • 軽度から中等度の疼痛がある場合、トラマドールやコデインの使用を検討する
  • トラマドール:定時投与を1日に4回行い(1 回量25~75mg)、疼痛時にレスキューとして1回量を投与することにより、タイトレーションを行う
  • コデインは1日に4~6 回(1 回量20~60mg)投与する

第3段階:強オピオイド鎮痛薬

  • 中等度から強度のがん性疼痛に対しては一般的にモルヒネ、フェンタニル、オキシコドンを使用している
  • 持続する疼痛に対してはモルヒネ製剤などの徐放製剤、付随して起こる突発痛に関しては速放製剤の使用が基本である
  • オピオイド速放製剤に対し、十分な効果が得られにくい疼痛は、神経障害性疼痛の疑いがあるため、鎮痛補助薬の適応について検討の必要性がある
  • WHO ラダーに従ってがん性疼痛を治療する場合、疼痛の強度に応じた鎮痛薬をはじめから適応させることである

コンセプト4 患者ごとの最適な量

  • 最適な量とは疼痛がほぼ消失する量
  • 強オピオイドは、増量による鎮痛効果がある限り、投与量の限界はないと考えてよいが、オピオイド投与による鎮痛効果について常に評価することが重要である
  • オピオイドは、NSAIDsを併用して投与することで除痛効果が得られやすくなるため、できる限り併用することが望ましい
  • 神経障害性疼痛に対しては、オピオイドの薬効が得られにくいため、抗痙攣薬や抗うつ薬など鎮痛補助薬の併用も重要である
複数の鎮痛薬の併用により、それぞれがもつ副作用が増強し合うリスクがあることも考慮する必要がある

コンセプト5 さらに細かい配慮を

  • 鎮痛薬の中でも特にオピオイド鎮痛薬は、副作用対策をしっかりと行うことが重要である
  • 治療効果が最大限に発揮されるよう、使用前に副作用に関する注意点や対処法についての詳細な説明を行う
鎮痛薬や副作用対策薬について、基本的な内服の方法をはじめ、処方内容を記載して渡すことが理想
  • 便秘、悪心、眠気などの重篤な副作用が起こった場合は、貼付製剤への切り替えや、他のオピオイドの検討を行う
強オピオイドを使用している間は、特に排便状態に注意して観察を行い、2~3日排便が見られなければ便処置を行う

アセスメント

  • 投与方法(投与量や投与時間など)は適切か
  • 除痛ラダーに沿った対応がされているか
  • 薬効が切れる前に次の薬剤が適切なタイミングで投与されているか
  • 痛みの種類や程度を把握しているか
  • 使用している鎮痛剤の種類は適切か
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